◆【詳報】産経適塾「春風講座」 日下公人氏
(産経関西 2009/4/20)
http://www.sankei-kansai.com/2009/04/20/20090420-008898.php
国がない人に一度なってみれば
日下公人(くさか・きみんど)日本財団特別顧問
政治学原論では、領土と国民を守り主権を持っているのが国家である。したがって日本国家の任務は主権を使って領土と国民と経済を守ることだが、今はどの新聞も、金をばらまけば景気がよくなると言っている。それでよくなったとしても、酒を飲んで顔色がよくなるだけのこと。
根本的な「働かない」という問題が解決していないのだから、景気低迷は長引く。今、楽をすれば将来が暗くなるのは当たり前。国は「みんな働け」と言わなければならないのに。
防衛に関して日本の国・国民は何かやっているか。田母神俊雄・元航空幕僚長は今、講演でひっぱりだこだが、防衛省の増田好平事務次官は田母神さんを辞めさせようと悪知恵を使った。村山談話に反する論文を書いたといっても内規違反で、せいぜい厳重注意相当でしかない。それを退職にしたのはどうかと思う。
背広組は本来やるべき仕事をしていない。ソマリア沖へ海上自衛隊を出せるような準備を日ごろから考えるために背広組がいるはずで、中国が海軍を出すから日本も、となったのは後手である。おかげで護衛艦のやりくりで日本列島周辺はガラ空きになりかけている。
今回、日本は「中国と共同で海賊に対処する」といっているが「共同」でやることはいいことなのか。そう思うのは日本だけで、世界の常識では仮想敵国と一緒にやろうなどと軽々しく言うものではない。
いざとなれば軍事力が後ろに控えているからこそ商売も旅行もできる。阪急グループをつくった小林一三も随筆の中で「日本に連合艦隊があるから米国で商売ができる」と書いている。ところが神戸市ではかつて社会党の勢力が強かったころ、市議会の決議で世界中の軍艦を神戸港に入れないことにしてしまった。それで外国の会社も領事館もみんな神戸から逃げ出した。
日本は戦後、防衛費をGNPの1%に抑えていた。その間、米国の軍事費はGNPの7%くらい。米国が防衛力を肩代わりしてくれていて、日本はずいぶん得をした。その代わり、日本は自分の国を守るという根性がなくなり、外国につけ込まれている。中国は間もなく尖閣諸島を、さらには沖縄も取りにくるかもしれない。日本はいつ立ち上がるのか、皆さん考えてほしい。
憲法第9条で日本が得をしたのは最初の10~20年で、あとは損をしている。今となっては、これだけむしられるなら再軍備したほうがいい。それには核兵器を持つのが一番安上がりだ。それを言うだけでも効果がある。
米国はいま、日本のそういう議論を注視している。英語を勉強して発信する必要はない。産経新聞の「正論」もそうだが、中身のあるものは向こうが翻訳して読んでくれている。
日本に帰化した人が、日本のパスポートを持って旅行すると世界中どこでも大歓迎なので驚いたと言っていた。その日本を守ろう。