◆男女混合名簿 (産経 06/3/12)
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■実施率高まる中、都は再考
全国に先駆けて混合名簿を見直した自治体は東京都です。
平成十四年から導入を進めてきましたが、十六年に教育委員が「男女が平等であることと、差別でなく区別をすることはまったく違う」と指摘したことなどを受けて再検討を始めました。
都幹部は「騎馬戦や着替えは男女別に行われるべき。つまり差別と区別をきちんと考える必要があった」と当時を振り返ります。
≪16年に見直し≫
十六年四月に文部科学省が都道府県教委に「ジェンダーフリー」という用語をめぐる誤解や混乱を考慮して「用語の使用に関する内閣府の考え方」を通知したことも見直しへの追い風になりました。
都は十六年八月、「『男らしさ』や『女らしさ』をすべて否定するような誤った考え方としての『ジェンダーフリー』に基づく男女混合名簿を作成することがあってはならない」と各都立学校に通知し、最終的な決定は「各学校の校長先生の権限と責任で行う」としました。
ただ、この通知を受けても混合名簿実施率は数ポイント下がった程度でした。教育関係者の中には「抽象的な内容の通知文だったので、都教委の意図が十分に伝わらなかったのでは」という指摘もあります。
≪7割で導入≫
混合名簿が提唱されたのは、平成二年に日教組傘下の東京都公立学校教職員組合(東京教組)女性部の学習会が最初だとされています。一部団体の運動がいつの間にか行政に浸透し、都は十四年、男女平等参画を目指す計画の中に「混合名簿の全校実施を推進」と盛り込みました。
この年に、東京の混合名簿実施率は飛躍的にアップ。一部で導入が始まっていた十二年の調査に比べて小学校では44%から70%に増加。中学校も10%から29%に。全日制高校では58%から71%になったのです。
全国的にも混合名簿を作成する動きが広がり、和歌山市の市立小では十四年度に全五十二校で導入。市立中でも一部で使い始めました。和歌山市教委は「現在も混合名簿作成を進めており、今後も実施に努めていく」としています。
日教組の七年の調査では混合名簿を導入していたのは全国で27%でしたが、十四年には68%と急増。都が通知を出した十六年も増加傾向にあり、昨年も75%となっています。
≪再通知で徹底を≫
日教組は「混合名簿によって子供たちは人権に配慮した視点が持てるようになった」と主張しています。一方で現場では「混合名簿だと整列指導がしにくい」「身体計測、合唱指導、クラス替え作業は別名簿の方がやりやすく、臨時に別名簿をつくっている」といった声も出ています。
十五年には新潟県白根市(当時)の市立小校長が混合名簿を廃止した際、「混合名簿は特定の思想に基づいている」と説明したところ、全国から抗議を受けるという出来事があり、廃止には勇気を伴うようです。
混合名簿の廃止に取り組んできた土屋敬之都議は「都教委は本来の男女平等と異質な主張であると理解したので通知を出したはず。この際、全国に例を示すためにも、都教委は具体的事例を挙げて学校側に通知の意味を再度伝え直すべきだ」と訴えています。