◆「さん付け統一」に疑問-衆院文科委
武山百合子議員 中山文科相
中山成彬文科相は十一日、教育委員会により、公立学校で男子、女子にかかわらず、お互いに「さん付け」で統一して呼び合うよう指導されているケースがあることに対し、「本来、個人の自由の問題だ」と述べた。衆院文部科学委員会で民主党・武山百合子議員の質問に答えたもの。
武山議員は、男女共同参画行政について、大人社会での意義は認めつつも子供の教育には不要なものとの見方を示し、「ジェンダーフリーといった言葉を学校現場で使うべきではない」と訴えた。
その上で、公立学校では、男女共同参画という名の下に、男女混合名簿とセットで男子に対する「君付け」、女子への「さん・ちゃん付け」などの呼称を、行政が指導して「さん付け統一」している実例があると指摘、中山文科相の見解をただした。
中山文科相は、「男女共同参画社会には賛成だ」と語る一方で、子供たちがお互いをどう呼ぶかは「個人の自由の問題」とし、「さん付け統一」は男女共同参画のはき違えだとの認識であることを示唆した。
国会で、ジェンダーフリー教育の弊害が議論されるようになってきたが、「さん付け統一」が問題として挙げられたのは今回が初めて。
●川崎市など少なくない実例
「さん付け統一」は、地方都市で行われているところが増えつつある。とりわけ川崎市では、市の教育委員会が主導し男女混合名簿とワンセットで強く推奨している。
だが、男女混合名簿を直ちに「男らしさ、女らしさ」を否定するジェンダーフリーと断定しにくい。
昨年夏、東京都教育委員会は、ジェンダーフリー思想に基づく男女混合名簿の作成禁止を通達。しかし、校長が「ジェンダーフリーに基づくものではない」とすれば、問題にならないのが実情だ。
これに対して、川崎市は市の男女平等推進行動計画などを根拠に、混合名簿とさん付け統一を同時に公立小学校で指導している。
男女別呼称が望ましくない理由を問い合わせた保護者に対し、市教育委員会は、「『君』『さん』の呼び分けで、本来、『男だから』『女だから』と意識する必要のない場面においても性別を意識せざるを得ない状況を無意識につくっている」と説明。
しかし、男女の区別を意識するか、しないかは個人の価値観に根差した問題であり、それを行政が誘導しようとするのは、明らかに行き過ぎだ。
中山文科相は、「呼称までいちいち文科省が口出しすべきものではない」と、現場での適切な判断を促したが、混合名簿と「さん付け統一」の結合は、ジェンダーフリーそのものと言える。
「個人の自由侵害」の疑いもあり、文科省が実態調査に乗り出すべき問題である。