★★★ 日本再生ネットワーク 厳選ニュース ★★★

sakura4987.exblog.jp
ブログトップ

◆京都大学教授・西村和雄 国を滅ぼしかねぬ理数教育の貧困

(産経 06/3/20)

日本の技術水準低下に深刻な影


≪新しい大学像求める動き≫

 昨年の十一月に、アメリカのニューメキシコ州にある、複雑系の研究で世界的に有名なサンタフェ研究所に招待され、複雑系経済学の講演を行った。同じ時期にトルコの物理学者も訪問していて、共に、サンタフェで開催された理数科教育の会議にも出席することができた。

 この会議の趣旨は、アメリカの理数科教育を充実させることであった。その具体策として、中高校生に「超電導」について教えるプログラムを作成する議論をしていた。大学や高校の先生、作家、科学映画の監督、コンピューターエンジニアなど、多彩な人材が集まり、さまざまな知恵を出していた。

 私は日本で検定外の算数の教科書『学ぼう!算数』を作成した経験を話した。子どもが自学自習できる教科書というコンセプトには、参加者には、新鮮な共感をもって受け止められた。

 トルコの大学の物理学者は、イスタンブールに設立された新しい大学の教育について報告した。

 この大学は、トルコの財閥の名をとってサバンジ大学とよばれる。文系と理系の学生から成るが、必修科目がしっかり決まっていて、文系の学生も、数学や物理を学ばなければならない。理科は、物理、化学、生物、地学の内容が有機的に組み合わされて、おおむね、物理、化学、生物の順に二年間かけて、学ぶことになっている。

 生物が最後になるのは、遺伝子工学や脳科学のように、最近の生命科学の発展を学ぶためである。

 このようなカリキュラムは、サバンジ大学の設立準備会が本当に意味のある教育機関にふさわしいものとすべく、議論に議論を重ねた上でまとまったものである。従来の名門大学に劣らない優秀な学生がサバンジ大学に入学してることは、容易に想像できるであろう。


≪学び易いカリキュラムを≫

 これに対して、日本の現状は危機的ですらある。文科系の大学生が高校理科の素養を失っているのはもちろん、理科系の大学生でも、高校で物理や生物を履修してこなかったり、学力不足であったりして、大学が補修をせざるを得なくなったりしている。

 この背景には、一つに、高校での理科の選択必修のあり方に原因がある。

 物理IIの履修者はわずか12%で、理工系に進む学生の比率16%を下回っている(東北大学・荒井克弘氏による)。数IIIの履修者は約20%で、自然科学系に進学する高校生の比率と同じ位しかいない。

 すると当然、数学が得意でない者も、数多く理工系に進学していることになる。数IIIや物理IIの未履修者が多い現状は、履修者の低い学力をも生み出しているといえる。

 これまでも、数学離れや理科離れが問題となってきた。それに対して、行政は、生徒が難しいことを学ばなくて済むように、制度改変を行ってきた。

 日本の技術水準を上げるには、理系科目の授業時間を増やすことに加え、理科を学ぶ高校生の数をもっと増やして、実際に、大学の理系の学部に進学するようにすることも必要である。このためには、制度的に理科をもっと学習しやすくすることである。

 現状は、「理科基礎」「理科総合A」「理科総合B」「生物I」「生物II」「化学I」「化学II」等に、高校理科が細分化され、科目がぶつ切りにされて、学習しにくいことこの上ない。

 もし、高校の理科が生物、化学、物理、地学だけの四科目であったら、どんなに簡単であろう。実際、六〇年代のカリキュラムがそうで、われわれはほとんどすべてを勉強していた。


≪科学技術立国たりうるか≫

 トルコのサバンジ大学では、基本的な物理、化学、生物の流れの中で、相互の科目および地学の内容を組み入れていた。生物学では、物理、化学の知識を必要とする分野が急速に発展している。地球環境問題を理解するためにも、生物と地学の知識は不可欠である。その基礎になるのが、化学と物理である。

 このように考えると、より基礎的で論理的な科目である物理を最初に学ぶ方が、より応用的な科目の理解も容易になり、複数の理科の科目を学ぶ上で、効率的となる。すべての学校とはいわなくとも、少なくとも進学校では、そのような指導をしてはどうであろうか。

 いずれにせよ、過去には80%の高校生が物理Iを学んでいた。今や、履修率は30%を切っている。これで、どうして、科学技術立国たり得るのだろうか。
[PR]
by sakura4987 | 2006-03-21 14:00

毎日の様々なニュースの中から「これは!」というものを保存していきます。


by sakura4987