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◆中国海軍の空母建造計画と日本の空母政策

(全 文) (SAPIO 2000年3月22日号 24-26頁掲載)

川村純彦

http://www.okazaki-inst.jp/kawamura-inst/sapioall.kawamura.html

■サブタイトル:洋上防衛米空母のアジア配備が激減している今、
        シーレーンを守るにはこれしかない

■タイトル:2015年中国空母出現に備え日本も防衛型空母を持つべきだ

川村純彦(元海将補) + 伊藤靖之構成

 2000年の年明け早々、中国が航空母艦の建造に初めて着手するというニュー スが報じられた。香港紙によると、約43億人民元(550億円)を投じ、4万8000 トン級の軽空母を建造する計画とか。

 2003年に進水、2005年前後には正式配備されるという。中国政府は否定しているが、かねてから専門家の間で推測されているように、中国海軍によるの空母配備が実現すると、周辺地域の軍事バランスに大きな衝撃を与えることは必至だ。

 そのときに備え、日本はどのように対処したらいいのか。 それには、日本も空母を持つべきだという意見がある。元海将補で軍事アナリストの川村純彦氏に日本が空母を持つ必要性について聞いた。

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 1980年代以降、中国海軍は海軍力の整備を積極的に推し進めている。戦略の柱は、周辺海域における敵の介入を阻止する能力、つまり、海洋拒否(シー・デナイアル )能力の整備と、広い海洋における自国権益の擁護の2つ。

 その結果として航空母艦(空母)を中核とする機動部隊を保有しようとしている可能性は高い。では、中国海軍は、空母に対してどのような役割を期待しているのか。

 今のところの専門家の意見では、中国が保有を目指す空母は現時点での技術力から考えても、有事において、強大なアメリカの空母機動部隊との直接対決では勝算が全くないと考えられている。

 何故なら、中国の空母は、陸上基地の航空機によるエアカバ ーの下で、他の艦艇と一体となって動くことを主眼としていると考えられるからだ。そのため行動範囲も沿岸海域に限られるだろう。

 一方で、中国はアメリカとの軍事対決を慎重に避けつつ、平時においては機会があるごとに、近隣諸国への圧力を加える道具として空母を使用する。そうしながら、しだいに海軍力を増強していき、米海軍と渡り合えるだけの戦力を造り上げていくだろう。

 この観点から、中国が考えている空母の任務は次の4点だといえる。

1、周辺海域における敵の海洋使用の拒否。

2、海洋資源確保のための海洋権益の擁護。

3、SSBN(弾道ミサイル搭載原子力潜水艦)の防護など、核抑止力の保護。

4、政治大国のシンボルとしての空母。

 空母の持つ能力について、中国海軍の認識を示す一例として、解放軍報の中に次のような一文がある。

 「40機搭載の空母1隻の持つ空中支援能力は、陸上基地の戦闘機200~800機分に匹敵し、また、空母が率いる1個機動部隊がコントロールしうる海域は、駆逐艦だ けで編成した部隊の50倍の広さに該当する」

 中国は空母の能力を極めて高く評価しているということだ。

 中国の空母建造については、1987年4月、中国海軍航空部隊が中国北部の基地で、特設の模擬空母甲板を用いて、初めて発着艦訓練を行ったという情報を初めとしてさまざまに伝えられてきた。

 93年には、在マカオの中国系会社がウクライナから、未完成の空母ワリヤーグをスクラップにすることを前提として購入した。中国南部の会社 も、退役した空母ミンスクを娯楽施設にするという名目で、ロシアから購入している 。この背景には、購入した空母を解体して技術情報を得ようとする中国海軍の動きがあったのではないかとみられている。

 では、中国が計画している軽空母とはどのようなものなのか。

 まず、搭載航空機の面からいうと、中国はV/STOL(垂直、短距離離着陸)機の入手が期待できないため、空母にはCTOL(通常離着陸)機を搭載することになるだろう。

 V/STOL機としては、旧ソ連がキエフ級空母4隻に搭載させたYak38フォ ージャーがあったが、航続距離や搭載重量などに問題があった。その後、後継機YakーI41フリーハンドの開発に着手したものの、深刻な財政難のため打ち切られたままになっている。

 現在、世界中で実用に供しうるV/STOL機は、イギリスのシー・ハリアーFRS・1とアメリカのV22オスプレイの2機種のみだ。これらの技術が中国にわたるとは考えられない。

 一方、中国の空母に搭載されるCTOL機については、米海軍情報部は、現在開発中の単座多目的軽量戦闘機Fー10の海軍型になるだろうと予測している。これは、陸上機のFー10に、着艦のための拘束装置を備えさせ、脚や機体の強度を強化、さらにエンジン出力を増大させて主翼を折りたたみ式にするなどの改造を加えたものだ。

 しかし、一般的にいって陸上機を艦載機に改造することは技術的に難しい。もし 、中国がFー10の改造に失敗した場合は、ロシアの空母アドミラル・クズネツォフに搭 載中のCTOL機と同一のSuー33、もしくはSuー25フロッグフットといった機種をロシアから導入する可能性もある。

 空母艦隊に不可欠な警戒と戦闘指揮を行う早期警戒機については、ハイテク機器が集中するため、かつてのソ連では開発に失敗している。現在実用化されているのはアメリカのEー2Cホークアイのみであるため、それが中国に渡るとは考えられず、中国は早期警戒機についても自国での開発に頼らねばならないだろう。

 空母本体の状況も、実は意外に前途多難である。というのも、CTOL機を安全かつ効率的に発着艦させるためには、発艦促進装置であるカタパルトが極めて重要になるが、中国の空母にこのカタパルトは期待できないのだ。なぜなら、現在、このカタパ ルト技術はアメリカの独占状況にあり、これも他の技術同様、中国に導入されることはあり得ないからだ。

 やはりカタパルトを導入できなかったロシアの空母アドミラル・クズネツォフの場合、300mの全長と、スキーのジャンプ台のような形状の甲板を使用してSuー33などを発艦させている。

 中国が同じような形式をとるとすれば、ロシア同様約300m の離陸滑走距離が最小限必要で、それに見合う船体は排水量5~6万トンで、搭載機数 は40~50機ぐらいになる。

 これらにかかる建造経費は、解放軍報の中では軽空母が約30億元(約3・8億ドル)中型空母で約45億元(約5・6億ドル)と報じられている。しかし、この見積もりはあまりにも安いといわざるを得ない。

 しかも、空母は当然のことながら搭載機が必要となる。1個航空群の機体合計価格と整備用機材を合わせた価格は、およそ空母1隻分の建造費に相当し、さらに、空母 を護衛する艦艇部隊などに要する費用は莫大なものになる。空母の建造は脆弱な中国経済を圧迫することは必定であろう。

 これらの諸問題を含みながらも、中国海軍の空母は出現するだろう。ただし、これまでに6隻の空母建造を実現させたロシアでさえ、アドミラル・クズネツォフの建造に10年以上の歳月がかかっている。中国とって空母建造が初めての試みだということを考えれば、出現は2015年以降になるのではないか。

 しかし、時期はいつであれ中国が空母を所有することが現実となったとき、先述のように周辺地域に与える影響は計り知れないものがある。

 以前もこの誌面で中国の外交政策の基本原則について指摘したが、中国の安全保障には3つの柱がある。

 ① そのひとつは、ゼロサムゲームという考え方だ。相手が得ならば自分たちが損をしている。自分たちが得をしていれば、相手に損害を与えているというものだ。そこには、両方がお互いにハッピーで、協力し合って繁栄していこうという考えはない。

 ② 2番目は、自国のためなら他の国の国益を認めないという考え方。

 ③ そして、3番目は、自国の国益を守るためには武力の行使をためらわない、むしろ、国際間の問題を解決するために、積極的に武力を行使するという政策だ。

 このような独特な安全保障の考え方を持っていることとともに見逃してはならないのは、中国が抱える人口問題だ。12億とも13億ともいわれる国民をどう食べさせてい くかという問題がある。そのための資源についても、国内には限界がある。そこで、資源を国外、それも海上に求めざるを得ないというのが今の中国の現状だろう。

 これらのことを見ても、中国は周辺海域の不安定要因になっていることは間違いない。先述の3原則がある限り、今後も中国と日本を含む周辺諸国との摩擦は続くと考えていい。

 そこで、重要なファクターになるのが、1996年4月に、当時の橋本首相とクリントン大統領との間で交わされた、日米安全保障条約の再定義だ。それまでの日米安保は、日本の国土防衛だけに機能していた。しかし、再定義によってこれからはアジアの平和と安定を守るという大命題が与えられたのだ。

 現状としては、日本国内の日米安保に対する認識は、相変わらず、日本の防衛のためという考え方が根強い。しかし、他国に対して圧力をかけ続ける中国の政策に対しては、1996年の日米安保の再定義の原点にたちかえり、平和と安定を乱すようなら 、なんらかの手段をとるというスタンスを明確に示すべきなのである。

 日本が具体的に何をしなければならないかというと、中国の軍事的脅威からシーレーンを守るということだ。

 シーレーンを守ることで、船舶の運航機能と港湾の機能、そして重要航路の安全を確保でき、ひいては比較的容易に世界各地にいたる大量輸送のネットワークを構築で きる。しかし、このネットワークは外部からの障害も受けやすく、極めて脆弱である。

 しかも、シーレーン全体が壊れるのではなく、部分的に壊れただけでも国民に与える心 理的影響は大きい。イラン・イラク戦争のとき、シーレーンが一部破壊されたことによって、国内の物価が上昇したのが良い例だ。

 このシーレーンを阻害する要因として最悪な事態は、ある国ないしはある勢力が 、他国の海洋利用を拒否しようとして行う意図的な妨害だろう。今や、シーレーンを守 るということが、世界各国の共通の利益だ。

 これまで日本は、シーレーンの防衛ということに関しては、攻勢的任務を担っている米軍に基地を提供したり、アメリカから技術提供されたイージス艦によって、飛んでくるミサイルを祓い落とすなど、もっぱらディフェンシブな役割が主だった。

 しかし 、飛んでくるミサイルを打ち落とすだけではおのずと防衛能力に限界がある。現在、中 国はSuー27、Suー30といった最新鋭機を製造している。それらの戦闘機が次々にミサイルを撃ち込んだ場合、いくらイージス艦があるとはいっても十分に対抗できるわけではない。

 これまでは、アジア周辺の海域には、アメリカの強大な空母群が配備され、海上自衛隊は、アメリカの空母と行動をともにしてきた。

 しかし、冷戦終結でソ連の脅威がなくなるとともに、米空母の主力は中東などに配備され、アジアにおけるアメリカの空母の数が極端に減った。その結果、洋上における防空能力に欠陥が生じてきている。

 それをカバーするためには、攻撃してくる相手を迎え打つ能力を高めねばならない。それには邀撃機が必要になる。また、相手の攻撃機を送り出す母体を叩く必要もでてくる。そのためのプラットフォームとして、空母の導入を日本は視野に入れなければならないだろう。

 一概に空母の導入といっても、中国の場合で説明したように巨額の費用が必要になるうえ、さまざまな技術的問題が生じるはずだ。しかし、必要とあれば費用は捻出できるはずだし、例えばカタパルトのような技術的問題にしても解決する道はある。

 かつて、ソ連がバックファイアーという長距離爆撃機を開発し、極東に配備したことによって、日本の洋上防衛能力が極端に低下したときに、アメリカが日本にだけイージス戦闘システムを提供したことがある。

 このことを見ても、共通の脅威は何かということを ふまえて、日米間で密接な対話をもてばアメリカの技術協力は得られると思う。逆に、アメリカの協力なくしては、空母の導入などはできないと考えていいだろう。

 日本が空母を導入するとしたら、規模などの面を考え、フランスが開発したシャルル・ドゴールという空母がモデルとなるのではないだろうか。

 全長261・5m、基準排水量、3万6600トン、満載時の排水量が4万550トンで、カタパルトを備え 、ラフォールM戦闘攻撃機40機を搭載できる能力をもっている原子力空母だ。とはいっ ても、日本では航続距離などの面からも、原子力空母の必要はない。

 確かに、日本が空母を配備するとなると憲法論議を含めた国内世論はもちろん、周辺諸国にも拒否反応は必ず起こるだろう。しかし、ここで重要なのは、あくまでも、シーレーン防衛という観点から、ディフェンシブな日本独自の防衛システムを構築するということだ。

 アメリカの空母は陸上を攻撃する爆撃機などを搭載するものだが、日本の場合考えられるのは、邀撃機を搭載する空母だ。そのことを明確にしておけば、中国は別として、国内および周辺諸国の理解は得られるのではないか。
by sakura4987 | 2006-04-28 16:43

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