◆産経抄 (産経」06/05/19)
三十五年前の佐藤栄作政権末期に、「国連は田舎の信用組合のようなもの」と発言してクビになった大臣がいたが、確かに「失言」ではあった。
田舎の信用組合にはなはだ失礼だったことが、来日したアナン国連事務総長の発言でよくわかる。
一足先に訪問した韓国で盧武鉉大統領からよほど吹き込まれたらしく、公明党の神崎武法代表に「アジアで日本がドイツと同じような対応をすれば(中韓と)関係改善はできるのではないか」とお説教をたれた。
「日本が反省とか遺憾の意を表明すればいいんじゃないか」と提案までしてくれたそうだが、笑わせちゃあいけない。
十年近く事務総長をやっても国連改革が遅々として進まなかったのも、むべなるかな。さきの大戦に関する反省とやらは、歴代の首相が数え切れないほど繰り返してきた。
とくに十一年前の八月十五日、当時の村山富市首相は阪神大震災発生直後とは別人のようなリーダーシップを発揮して、日本の「侵略」や「植民地支配」を謝罪する談話を発表した。
だが中国や韓国は納得せず、事あるごとに「歴史認識」カードを持ち出しているのはご承知の通り。
疑問なのは、このような日本に関する基礎的情報がなぜアナン氏に伝わっていないかだ。
「安全保障理事会の常任理事国に日本もなれる」という幻想を振りまいてきた外務省は、いったい何をやってきたのか。むろん、責任は外務省だけではない。
米要人との会談内容を聞かれて「よもやま話」ともったいぶる元高官や、中国から内政干渉まがいのことを言われてもろくに反論できない元首相といった政治の側も問題だ。
外交は国益を守るための戦いの場だ。その武器は、気合と言葉であることを肝に銘じてほしい。