◆自殺者が過去最悪 「経済苦」急増8897人
警察庁、昨年まとめ
昨年一年間の全国の自殺者は三万四千四百二十七人と、前年に比べて二千二百八十四人(7・1%)増加し、統計を取り始めた昭和五十三年以降で過去最悪となったことが二十二日、警察庁のまとめで分かった。三万人を超えたのは六年連続となった。負債や生活苦といった「経済・生活問題」が動機とみられる自殺者も過去最悪の九千人近くに達しており、不景気やリストラなどの影響を色濃く反映している。
「経済・生活問題」は、平成九年まで千人台から三千人台で推移していたが、十年になって六千人台にまで急増。十一年以降も増えつづけ、昨年は八千八百九十七人に上った。
内訳は、「負債」が五千四十三人と最多で、「生活苦」の千三百二十一人、「事業不振」の千四十一人、「失業」の六百十人、「就職失敗」の百八十三人、「倒産」の九十六人などが続く。経済問題での自殺の九割以上を男性が占め、五十歳代前後の中高年の自殺が目立っている。
「経済・生活問題」以外の動機では、「健康問題」が一万五千四百十六人、「家庭問題」が二千九百二十八人、「勤務問題」が千八百七十八人などとなっている。
自殺者全体のうち、男性が72・5%を占め、年齢別では、六十歳以上が全体の33・5%を占め、五十歳代(25・0%)、四十歳代(15・7%)、三十歳代(13・4%)の順と大半が働き盛りの中高年男性が目立つ。
東京、大阪を中心に全国規模で心の悩みを受け付ける「自殺防止センター」では昭和五十三年の開設以来、若い女性の相談が多かったが、最近は中高年男性ばかりの日もあるという。
東京都世田谷区の精神科医院「成城墨岡クリニック」にも、数年前からリストラなどに悩む中高年男性の患者が増加している。
院長の墨岡孝さんは「終身雇用、年功序列制度が崩れ、この世代に一番しわ寄せがきている」と指摘。「社会的な救済システムの構築が急務だが、一方で仕事優先の意識も変えてほしい。いざという時に家族の協力を得られず、ますます孤独になる」と話している。
平成 16年 (2004) 7月23日[金] 産経新聞