◆【主張】自殺者激増 “脱ストレス”を考えよう
警察庁が発表した昨年一年間の自殺者総数は、三万人の大台を大きく上回り、一昨年よりも二千二百八十四人、7・1%増の三万四千四百二十七人にのぼった。これは警察庁が自殺者の統計を取り始めた昭和五十三年以降で最悪の数字である。
より詳細な厚生労働省の人口動態統計によれば、年間自殺者数は昭和六十一年に二万五千人を超えたものの、その後は二万人から二万五千人の水準で推移していた。しかし、平成十年に三万人を超えると、昨年まで六年連続してこの高水準を記録している。
今回発表された数字で、深刻なのは働き盛りの五十代はもとより、とくに三十代が17%、四十代が12・6%も前年より増加していることだ。これはバブル後の不況からくる事業不振や倒産、リストラなどで悩み、自殺に走った結果であろう。負債や生活苦といった「経済・生活問題」が動機とみられる自殺者が過去最悪の約九千人にも達し、大半が男性だった。
自殺にいたる原因で最も多いのは、厳しい経済情勢でストレスがたまり、心の病である鬱病(うつびょう)が高じて、自ら命を絶つケースである。このような状況から、鬱病を予防すれば、自殺者の数は大幅に減らせる。
鬱病は、“心の風邪”といわれるように現代人なら誰でもかかる心の病で、決して特異な疾患ではないことを社会全体が認識する必要がある。
専門家によると、精神疾患は、早期に発見し、正しく治療・支援を行い、ストレスを和らげる環境をつくることが重要だという。
企業は産業医による治療システムを充実させ、自治体は相談コーナー設置など支援態勢の確立が求められる。家族らの温かい支援や理解も自殺予防には欠かせない。
幸い今年に入って景気も回復基調となっている。より安定した雇用の確保が求められる。
平成 16年 (2004) 7月25日[日] 産経新聞