◆靖国・遊就館 米戦略の記述変更 第二次大戦 「誤解招く表現」 (産経 06/8/25)
靖国神社が運営する戦史博物館「遊就館」が、館内で展示している第二次世界大戦での米国の戦略に関する記述の一部について、「誤解を招く表現があった」として見直し作業を始めたことが24日、わかった。
この記述をめぐっては、遊就館の歴史観に理解を示す言論人からも「一面的な歴史観」との指摘があり、同館としても主観的な表現があることを認め、内容を変更することを決めた。同館展示物の大幅な記述の変更は異例。
内容を変更するのは「ルーズベルトの大戦略」と題して、第二次世界大戦での米国の戦略について触れた部分。
この記述では、まず「大不況下のアメリカ大統領に就任したルーズベルトは、三選されても復興しないアメリカ経済に苦慮していた」と当時の米国経済の窮状を説明。
また、「早くから大戦の勃発(ぼっぱつ)を予期していたルーズベルトは、昭和14年には米英連合の対独参戦を決断していたが、米国民の反戦意志に行き詰まっていた」として、米国内に反戦世論があったことを紹介している。
その上で、「米国の戦争準備『勝利の計画』と英国・中国への軍事援助を粛々と推進していたルーズベルトに残された道は、資源に乏しい日本を、禁輸で追い詰めて開戦を強要することであった。そして、参戦によってアメリカ経済は完全に復興した」と表現し、米国は国内経済の復興を目的に対日開戦を志向したと解釈できる内容だった。
こうした記述について、同館では4月ごろから見直しの検討を始め、7月ごろから本格的に見直し作業に入ったという。
この記述をめぐっては、元駐タイ大使の岡崎久彦氏も24日付本紙「正論」で、「安っぽい歴史観は靖国の尊厳を傷つける」と指摘、同館に問題の個所の削除を求めていた。
岡崎氏は「早急に良心的な対応をしていただき感動している」と話している。
◇
【用語解説】遊就館
日本最初の軍事博物館として明治15年に開館。館名は中国の古典「荀子」の「遊必就士」(高潔な人に就いて交わり学ぶ)から2文字を取った。
戦前は陸軍省管轄の国立施設だったが、現在は靖国神社が運営している。
「戦没者顕彰」と「近代史の真実の明示」を目的に、合祀(ごうし)者の遺品や実際に使われた兵器など約3000点を展示。遺族による遺品提供は今も続き、収蔵品は10万点を突破した。
≪参考≫
◆【正論】元駐タイ大使・岡崎久彦 遊就館から未熟な反米史観を廃せ
http://www.sankei.co.jp/news/060824/morning/seiron.htm