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◆松島 悠佐 軍事の話し(20)北朝鮮の核への備え

 10月3日北朝鮮は、核実験を行うとの声明を発表しました。北朝鮮の核・ミサイルに関するこの種の声明は、政治的な駆け引き、恫喝など色々な意味合いを持って、しばしば行われていますので、またかという感じは否めません。

 昨年2月の核兵器保有宣言、5月には使用済み核燃料棒の取り出し作業終了を明言し、その頃から核実験の可能性が指摘されていました。衛星情報などからそれなりの準備をしている兆候はあるものの、実行に踏み切るかどうかは分からないというのが正直な見方でした。

 わが国のメディアは、何時ものことですが、「実行するのではないか」「しないのではないか」と、あたかも金正日になったつもりのコメンテーターが意見を述べていますが、要するに金正日の判断にはよく分からない点が多く、それを如何に推測してもあまり解決にはなりそうもありません。むしろこのような場合には、最も影響度の大きいな選択肢(ワーストケース)を前提に考えておいた方が良いように思います。

 もし実験が行われた場合には、国連安保理でも議長声明が出され、制裁措置が採られるでしょうし、わが国としてもさらに制裁措置を強化し、北朝鮮船舶の全面的入港禁止の措置などを採るのでしょうが、このことも既に官邸をはじめ所掌のところで検討が行われていると思われます。

 ただ、核爆発に伴う放射能汚染の影響などについては、距離的に500キロ以上も離れており、地下核実験を想定すればあまり影響はないと考えているからでしょうか、メディアもあまり関心を示していません。

 しかしこの種の実験には、予想外の事故や失敗は起きる可能性もあり、特に北朝鮮のことですから何が起きるか分かりません。こういう場合にもワーストケースに備えておくことが必要ではないでしょうか。

 気流に乗って大気汚染されるのか、地下水が日本海に流れ込み、海洋資源が汚染されるのか、さまざまな可能性が考えられます。これをどのように察知し、どのような防護策をとるのか。わが国の放射能汚染対策は、原子力施設での事故などに備えた程度のものはありますが、残念ながら、汚染の監視システムも防護システムも極めて不備なのが実態です。

 わが国が現在活用できる放射能汚染の監視・警報・応急対処措置のシステムには、原子力災害を想定した防災システムがあります。当面はこれを活用して対応することを考えるのが適切でしょう。

 この計画には、概略次のようなことが決められています。

『国(文部科学省)及び日本原子力研究所等の公共機関は、現地に動員すべき緊急モニタリング要員及び機器の動員体制を常時整備維持する。また必要な場合には、防衛庁と海上保安庁も航空機・艦艇・巡視艇等を派遣して航空又は海上からのモニタリングを支援する。

 気象庁は放射能影響の早期把握に必要な気象予測情報を迅速に提供するため、平時からシステムの維持管理を行うとともに、緊急時に適切な活動を実施できる体制をとる。また、地方公共団体は、原子力安全委員会が定める指針に基づき「緊急時モニタリング計画」を策定しその体制の整備に努める。

 もし、放射能の影響が出るおそれが生じた場合には、地方公共団体は計画に基づき環境放射線モニタリングを行い、その観測状況を国の対策本部に連絡する。対策本部は緊急時の連絡を受けた場合には放射能影響予測を行って、関係機関や都道府県に転送する。

 さらに、放射線による被害が予想される場合には、原子力安全委員会が定めた指針を踏まえて、地方公共団体が住民の屋内退避、避難誘導等の防護活動を行う。そのための避難場所を平素から選定し確保しておく。』

 と言うような一連の流れが計画されています。但し、この放射線モニタリングの体制は、要員・器材ともに原子力関係施設を対象にした局地的なものに限られており、北朝鮮での核実験への対応に適用できるような状態ではなさそうです。さらに、地方公共団体のほとんどは、計画通り対応できる状態にはないようです。

 情報・警報の伝達システムとしては、中央防災無線網が整備されており、国及び指定行政機関、ならびに各地方公共団体相互に電話通信およびFAXによるホットラインが確保されており、内閣府から各機関に対して一斉同時通信を行うことができるようになってはいます。しかしこの防災警報システムも、市町村にはまだ未整備のところもあって、警報が十分に伝わる状態になっていません。

 わが国では、大きな災害を被るたびに、「計画は出来ていたが実行されていなかった」との反省が付き物です。北朝鮮の核問題が次第に現実味を帯びてきた現在、これを機会に、実践的な視点から少し関心を持って見直すべきではないでしょうか。

 平成十六年六月に制定された「国民保護法」に基づいて、昨年三月には国の基本指針が示され、それを受けて十七年度中には各省庁及び都道府県が、十八年度には市町村が「国民保護計画」を策定することになっており、警報の伝達、避難誘導、救援活動などの具体的な検討が行われている最中です。

 北朝鮮が核実験に踏み切るかどうかの詮索もさることながら、情報収集・警報・避難措置など、まず自国の安全を第一に考えて適切な体制を整備することが先決ではないでしょうか。

 金正日は、わが国の危機管理体制を見直すために、度々よい機会を与えてくれています。それを生かして自己点検するのが得策です。(06・10・07記)

松島悠佐(まつしま ゆうすけ);
元陸上自衛隊中部方面総監
防衛大学卒業後、自衛隊入隊陸上幕僚監部・防衛部長、第8師団長(熊本)
等の要職を経る。
平成7年阪神大震災時、中部方面総監として活躍。
同年中部方面総監で退官。著書に「阪神大震災・自衛隊かく戦えり」(時事通信社刊)
がある。 現在、危機管理などの講演を精力的に行う。
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by sakura4987 | 2006-10-08 07:45

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