◆[家族の日]「自治体の蓄積も生かしたい」 (読売社説 06/11/22)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061121ig91.htm
少子化対策の一環として、内閣府が来年度から「家族の日」を設ける準備を進めている。
「家族の日」に関連したシンポジウムや表彰式などの事業費に向け、9500万円を来年度予算の概算要求に盛り込んでいる。
どの日にするのか、祝日化を目指すのか否かなどは、未定だ。
政府・与党の少子化社会対策会議が今年6月に発表した「新しい少子化対策」も、「家族・地域の絆(きずな)を再生する国民運動」の柱として、「家族の日」の制定をうたっている。
総合的な少子化対策を進める上で「生命を次代に伝え育(はぐく)んでいくことや家族の大切さが理解されることが重要である」という理由からだ。
家族の絆の希薄化が言われて久しい。親が子を虐待したり、育児を放棄したりする“家族の崩壊”を象徴する事件も相次いでいる。家族の再生は、「少子化対策」を超えた課題でもある。
既に多くの自治体が、毎月第3日曜日などを「家庭の日」と定めている。
1965年、秋田県と鹿児島県が「家庭の日」を制定したのを契機に、青少年の健全育成を目指す国民運動の一環として、全国規模に広がった。
当時は、青少年の非行の急増が社会問題化していた。一方で、日曜日も農作業をする農家が多いため、「家庭の日」を農休日にする農村もあった。だが、最近は運動の形骸(けいがい)化も指摘されている。
一方で、「家庭の日」を改めて見直す自治体の動きもある。
東京都は、毎月第3土曜日・日曜日を「家族ふれあいの日」とし、ファミリーレストランや文化施設などの協力を得ながら、料金やサービスについての家族優待制度を実施している。
「家庭の日」に、親子で参加出来るイベントを集中的に催す自治体もある。
政府が「家族の日」を制定する場合、自治体の「家庭の日」に屋上屋を架すことがないよう配慮することも必要だ。例えば、「家族の日」に、政府と自治体や、自治体間の情報交換の場を設け、相乗効果が上がるよう工夫するのも一つの方法だろう。
かつて大平内閣が、祝日として「家庭の日」の制定を検討したことがある。当時は「働く女性を家庭に引き戻そうとするものだ」と女性団体が反発し、国民的な合意は得られなかった。
今日、男女共同参画が進む中で、政府制定の「家族の日」に、そうした批判が繰り返されるとは考えにくい。
現代にふさわしい「家族の日」のあり方について、議論を深めていきたい。