◆【風を読む】 (産経 07/2/5)
論説副委員長・中静敬一郎
核保有国の北朝鮮とそうでない日本との力関係が大きく変化してしまったことを押さえておきたい。
先に訪朝した山崎拓元自民党副総裁が「(6カ国協議で)日本は今、何の役割もない並び大名になってしまっている」(1月18日付毎日新聞夕刊)と述べたことや、北が日本を小人を意味する「倭(わ)国」と悪口をいっていることも変容の本質の一端を物語っている。
北が核実験に成功した昨年10月9日の前は、日朝の国力の差は隔絶したものだった。
国内総生産(GDP)は日本4兆7000億ドルに対し、北朝鮮は220億ドルで214分の1、
1人当たりGDPは日本3万6850ドルで北は969ドルで38分の1。
人口は日本1億2742万人に対し、北は2291万人で6分の1弱だ。
それが核兵器によって一変してしまうことをフランスの核抑止論を確立したピエール・ガロワ将軍はかつてこう予測していた。
「核保有国と、この兵器を持っていない国との間では、空前の不均衡が生じる。核戦力を持っていない国は、核保有国に対してまったくの無防備状態にあるということと、軍事同盟体制に依存していても、昨日まで得られた安全保障をもはや期待することはできないという二重の不利を負うことになる」(核戦略と中級国家)
日本の安全保障が、核保有国を前にして、いかに危ういものになっているかを示していよう。
作家の塩野七生さんは本紙1月22日付朝刊の「話の肖像画」インタビューで、ローマが1000年以上続いた理由について、
「運がよかったからでも、彼らの資質が特別に優れていたからでもありません」と指摘したうえで、
「自分たちの姿を直視し、それを改善してゆく勇気があったからです」と語ったことをかみしめたい。