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◆日本の宇宙開発はインドにも対抗し得ない



     ~JAXA・平岩主任研究員に聞く(1) (日経BP 07/5/22)

http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/matsuura/space/070522_india1/

 日本の宇宙開発は伸張著しいインドに一部分野ではすでに追い越されており、近い将来全面的に抜かれることになる--

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)総合技術研究本部複合推進研究グループ の平岩徹夫主任研究員は、4月4?5日に開催された日本航空宇宙学会総会で発表した「インドの宇宙開発動向と輸送系リソースの動向」という論文でショッキングな結論を出した。

 2004年の「神舟」宇宙船による有人打ち上げの成功以降、日本の宇宙開発が中国に抜かれたという認識は、一般的になってきた。が、それどころではなく、もはやインドにも対抗し得ないというのだ。

 インドの宇宙開発の現状はどのようなものなのか、1966年のペンシルロケット以降半世紀以降にわたって積み上げてきた日本の宇宙開発は、なぜその蓄積を生かせずに沈むに任せているのか、平岩氏に聞いた。

すでにインドは衛星・ロケットビジネスへの進出を完了


■まず、このような論文を執筆した動機をお聞きしたいと思います。


 平岩 私は本来スクラム・ジェットエンジンの研究者です。2004年から2006年にかけて、JAXAの筑波宇宙センターで次世代ロケットの検討をお手伝いしました。

 次のロケットを考えるためには、世界の動向を把握する必要があり、特に最近勢いを増しているインドの現状分析を行ったわけです。

インテリジェンスの分野では、公開資料の分析で8割以上の事実が分かるといいます。

 私はインドの宇宙開発に関する公開資料を集め、特に予算や人員といった数字の部分に関して集中的な分析を試みました。


■現在、インドに気になる動きはありますか。

平岩 2006年3月にブッシュ米大統領がインドを訪問し、原子力分野での協定を結びました。インドの核兵器をアメリカが認めたわけです。この際にアメリカはインドに対してアメリカ製の衛星をインドのロケットで打ち上げることも同時に認めました。これはアメリカがインドの商業打ち上げ進出を認めたということです。

一方ブッシュ訪印直前の2006年2月、欧州の衛星メーカーEADS社とインドのAntrix/ISROが、欧州通信衛星機構(ユーテルサット)向けの衛星を共同で受注したと発表しました。

インドの宇宙開発は、インド宇宙省という専門の官庁が管轄しており、実施機関としてその下にインド宇宙機関(ISRO)があります。

Antrix/ISROは、ISROの商業部門で、国営企業のような組織です。衛星開発はEADSが主体になりますが、Antrix/ISROは衛星の基本構造体である衛星バスを提供することになっています。すでに欧州通信衛星機構(ユーテルサット)向けの衛星を製造することが決まっています。

この2つを考えあわせると、インドは実質的に国際的な商業打ち上げと、衛星事業への参入に成功したことがわかります。事実今年4月23日にインドは「PSLV」ロケットでイタリアの科学衛星「AGILE」の打ち上げを実施しました。この打ち上げは、商業市場からの受注ではありませんが、イタリアからインドに正規の打ち上げ料金が支払われています。インドのロケットが、それなりのサイズのある海外の衛星を主ペイロードとして打ち上げたわけです。

日本は未だH-IIAロケットが海外の衛星を商業的に打ち上げたことはありませんし、日本の衛星メーカーが、国産の衛星バスを海外に提供したこともありません。つまりこの分野で、すでにインドは日本を凌駕したといえるのです。


予算の伸びは年間10%以上
平岩 さらにインドの宇宙関連予算の推移とその配分を調べると、これが部分的なものではなく、数年後には全面的に日本を追い越していくであろうことが見えてきます。


インドの宇宙開発予算の推移。緑が予算総額。赤が対前年比の伸び率。紫が、インドGDPの伸び率

この図はインドの宇宙予算とその伸び率、そしてインドのGDPの推移をまとめたものです。これによると、インドの宇宙予算はGDPの伸びを1年遅れで反映し、しかも21世紀に入ってから平均10%程度の高い伸び率を示してきたことがわかります。

2007年度の伸び率は7%と一見低く見えます。しかしこれは数字の錯覚です。最近、インドはロシアと測位衛星分野で協力する協定を結びました。それまでインドは独自にGPS類似の測位衛星システムを開発しようとしていましたが、ロシアが運用中の測位衛星システム「GLONASS」に参加することにして、自主開発をうち切ったのです。2007年度予算では、前年まで存在した測位衛星開発の予算がゼロとなっています。

そこで、測位分野の予算を除外して予算の伸び率を算出すると、2007年度は前年度比18%の高い伸び率を示していることがわかります。


日本の宇宙開発予算。青細実線が日本全体の宇宙関連予算。緑細破線が、JAXAのみの予算。青太実線が日本全体の耐前年比伸び率。緑太破線がJAXA予算の伸び率

平岩 こちらの図は、日本政府の予算、日本の宇宙開発予算、そしてそれぞれの伸び率をグラフにしたものです。日本の宇宙開発予算は1999年にピークを迎え、以降減少傾向が続いています。2007年度は日本経済の回復を反映して、2%ほど増えています。

こうやって分析していくと、日本の宇宙予算はだいたいのところ政府予算に比例しています。政府予算の0.2%が宇宙予算と考えていいでしょう。


■それは、縦割り予算の壁を崩せていないということですね、。インドはどうなのでしょう。

平岩 インドの宇宙予算はGDPにほぼ比例しています。政府予算ではなく国力が予算規模に反映しているわけですね。


インドと日本の今後10年間の予算予想図。青が日本全体の宇宙関連予算。緑がJAXA予算。赤がインドの宇宙予算

そのことを考慮して、今後の予算規模を推測したのが、この図です。日本の予算規模は今後前年度比±2%で、インドは11%±4%で、それぞれ推移するとしています。インド経済は今後10年以上に渡って年率10%以上の成長を続けると予測されています。それに比例して予算も増えていくだろうとしたわけです。

この図からわかるのは、最短で2011年、中間を取っても2013年にはインドの宇宙開発予算はJAXAの予算をほぼ同額になって追い抜いていくということです。

長期的視点に立って人材を育成
■この図はインドと日本の物価水準の差を考慮していませんよね。

平岩 そうです。インドと日本の間の物価は、だいたい6倍の開きがあります。もちろんインドがすべてを国産化できているわけではないので、インドの予算は即日本の6倍の購買力を持つというわけではありません。

しかし、人件費を考えると、話は変わってきます。物価に6倍の開きがあるということは、インドは同じ人件費で、日本の6倍の人数を宇宙分野で雇用することができるということを意味します。

大きなプロジェクトを遂行するに当たって必要なのは、まず資本、そしてプロジェクトの分野に精通した多数の技術者です。インドは、新たな技術開発に十分な数の人材を投入することができるわけです。

しかもご存知の通り、インドは、独特の教育システムもあって理工系に秀でた人材を多数輩出しています。インドは、宇宙開発に優秀な人材を多数投入するだけの潜在的な能力を持っているわけです。

ですから、実際には現状でも予算の使いでという点で考えれば、日本の宇宙予算は現状でもインドに抜かれている可能性があります。


■インドは、実際に宇宙分野に優秀な人材を投入しようとしているのでしょうか。

平岩 そうです。

インド宇宙省は2007年予算で2つの新規項目を設けました。一つは有人宇宙飛行に向けた技術開発です。インドの有人計画はまだ政府レベルでは承認されていませんが、先行して予算を付けて研究を始めたわけですね。

もう一つが、インド宇宙科学・技術大学(Indian Institute of Space Science and Technology)の創設です。大学院大学のような位置づけの教育機関で、将来の宇宙開発のための優秀な人材を育成することを目的としています。

このことが何を意味するかは明白でしょう。インドの宇宙開発は、今後増え続ける予算を有効に活用するために、計画的に人材を育成し、雇用していこうと考えているのです。

今後のインド政府の判断によっては、増える予算のうちのかなりの部分は有人宇宙計画に使われる可能性があります。

日本では有人宇宙計画というと、予算の話ばかりが議論されますが、予算だけで有人宇宙計画は遂行できません。なによりも宇宙を熟知した優秀な人材が必要です。

インドは、人材レベルから有人宇宙計画を支える基礎を育成しようとしていると言って良いでしょう。

真に恐るべきは、予算の伸びでも人材育成計画でもありません。インドには長期的な宇宙戦略が存在し、その戦略に沿って着々と手を打っているということです。それも、予算と人材という最も根幹の部分からです。

■それは、日本の宇宙計画にもっとも欠けているものですね。確かに日本では、有人宇宙計画というと、それで産業界にいくら金が落ちるかという話になってしまう。実際問題として、日本の宇宙産業は就業人口が減少し続けています。今後、日本が有人月探査のような大型プロジェクトを立ち上げるにしても、人が足りなければ、計画が迷走することになる可能性が高いと考えねばならないわけですね。

平岩 人材は、一朝一夕には育成できません。近い将来に大型計画を立ち上げるつもりならば、今すぐ人材育成を始め、きちんと雇用し、仕事の中で鍛えていかなければ間に合わないのです。インドがまさに行おうとしているように。

■内閣府・総合科学技術会議は2002年6月に「今後10年、独自の有人計画を持たずに、基礎技術開発を進め、実際に有人に進むかは10年後に判断する」という方針を出しました。2012年に、日本独自の有人宇宙活動を行うかどうかを決める、というわけです。しかし、平岩さんの話を聞いていると、そもそも2002年に「今後10年、独自の有人計画を持たない」とした時点で、10年後も有人活動を開始できるわけがないということが確定していたように思えます。

つまり、独自の有人宇宙活動には、予算が必要で、予算をきちんと使うには人材が必要です。人材は一朝一夕に育たないから、10年間かけて育成していかなければならないけれども、日本は「10年間、独自の計画を持たない」と言い切った時点で計画的な人材育成を放棄してしまった。それどころかリストラでJAXAの職員数は減少しています。

平岩 少なくとも、インドが長期計画の第一歩として将来の大型計画を担う人材の育成から踏み出そうとしていることは事実です。

(つづく)

松浦 晋也
ノンフィクション・ライター。 1962年、東京都出身。日経BP社記者として、1988年〜1992年に宇宙開発の取材に従事。主に航空宇宙分野で執筆活動を行っている。著書に『われらの有人宇宙船』(裳華房)、『国産ロケットはなぜ墜ちるのか』(日経BP社)、火星探査機『のぞみ』の開発と運用を追った『恐るべき旅路』(朝日ソノラマ)、スペースシャトルの設計が抱える問題点を指摘した『スペースシャトルの落日』(エクスナレッジ)などがある。
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by sakura4987 | 2007-05-23 15:33

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