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◆【溶けゆく日本人】人間関係の不全(7)崩れたコミュニティー



 (産経 07/6/5)


 ■ご近所よりネット

 東京のいわゆる「ベッドタウン」として人口増を続ける町田市。市内のとある大規模分譲マンションの管理組合総会で、配水管の定期掃除実施の是非が議題に上がったところ、30代前半の組合員が疑問を呈した。

 「定期的に掃除するのは費用がもったいない。あふれるまで待っていればいいんじゃないですか」

 発言者は排水管があふれても被害の少ない上層階の住人。管理組合の元理事長(54)は嘆く。

 「自分さえよければいいという発想。理事長を5年やりましたが、一体、(コミュニティーは)どうなっていくのだろうと思うことばかりでした」

 あいさつをしても、言葉が返ってこなくなった。子供に注意すると、にらみ返す親が現れだした。管理室にも、首を捻(ひね)るようなクレームを持ち込む人が増えた。

 「子供がチャイムを鳴らしてうるさい」と苦情をいいつつ、自分が見つけても注意しない大人、共有部分での子供のおもらしの後始末を頼む親…。

 「ここをホテルか何かと勘違いしているのでしょうか。それとも、人とのかかわりを持ちたくない人が集まるのがマンションなのでしょうか」。元理事長の自問は尽きない。

                   ◇

 雑多な人間が集まる近隣との付き合いは、できれば避けたい-そんな傾向が強まっている。「向こう三軒両隣」という言葉はすでに死語と化し、元気なときには、隣人の顔を知らなくても普通に生活できる時代になった。

 だが、地域社会とのかかわりが希薄になった結果、確実に増えているものがある。

 孤独死だ。

 平成13年秋、千葉県松戸市の公団の一室で死後3年たった59歳の男性の白骨遺体が見つかった。発見のきっかけは、自動引き落としにしていた家賃。貯金が底をつくまで、気付く人はいなかった。

 翌々年、同じ公団で大音量でテレビをつけていた一人暮らしの男性(57)が餓死寸前で発見された。体調を崩してリストラされ、冷蔵庫はからっぽ。男性は枕元のテレビの音量を上げることでしか、隣人と“つながる”方法を持たなかった。

 “お互いさま”を前提に助け合う地域コミュニティーの崩壊は、さまざまな年代層と人間関係を構築する術を学ぶ機会も奪った。

 13年前から、ニートやひきこもりの相談に応じるNPO法人ニュースタート事務局(千葉)。

 社会性の育成を目指し、若者たちは共同生活を送るが、互いの会話はどこかぎこちない。「人との距離感がつかめない」と漏らす子供もいる。

 二神能基(のうき)代表(64)は、かつての“共助”がなくなったことと、コミュニケーション能力が著しく低下した子供の増加は無関係でないと指摘する。

 「人間というのは、ごちゃごちゃしたややこしいもの。それなのに、親も子供も言葉の裏にあるニュアンスというものがつかめなくなっている。『NO』の裏には、いくつかの『YES』という意味合いもある。大人も子供も社会力がものすごく落ちている」

 極端な事例だが、こんなことも現実に起きている。小学3年時から不登校になり、家にひきこもった19歳の女性が、インターネットで知ったサッカー選手と「結婚する」と言い張った。

 理由は「ネットで調べた相性、性格、趣向がぴったりだから」。選手とは一面識もないため、親が「現実的じゃない」とたしなめたところ、暴れ始めた。

                   ◇

 わずらわしい人間関係を避け、自分にとって心地よい関係だけと付き合う傾向は、インターネットと親和しながら、すべての世代に広がる。

 2人の子供を持つ東京都内の主婦(44)は、家業の電気店の店番の傍ら、インターネットの同窓会ネットで見つけた東北地方に住む旧友とのチャットを楽しむ。CDや本などの買い物もネット上で行い、出かける機会は極端に減った。

 「主人からはひきこもりのようだといわれます。でも、近所の人にはよっぽど口が堅くて信頼できる人でないと悩み事などは話せない。ネット上なら、自分の姿を知られない分、安心して相談できるんです」

 精神科医で、京都医療少年院に勤務する岡田尊司さん(47)は、現代社会を、自己愛の充足に最大限の価値を置く「自己愛型社会」と呼ぶ。

 家や共同体(国)の繁栄を目的とした伝統的価値観が崩壊した結果、唯一の価値が自分になったのだ。


 「先人が道徳や礼儀を奨励したのは、社会に秩序と安定をもたらすための知恵でした。しきたりや礼儀は確かに面倒くさいが、『個人の生きづらさ』が極限までいかないよう歯止めをかける役割も果たしてきた。

 今、自己愛だけで結びつく便利な(自分に都合の良い)人間関係が広がるが、そこからは『確かな絆(きずな)』は築けないのです。そこに、この社会のアキレス腱(けん)がある」。岡田さんはそう指摘した。

                   ◇

 《メモ》

 広告代理店の「創芸」がインターネットを通じて東京23区在住の20~40代の男女618人に日常生活で重視している点(複数回答)を聞いたところ、1位は「自分らしく生きる」(59.2%)、2位は家族との交流(54.2%)、3位は友人・知人との交流(49.8%)で、近所付き合いは14項目中最も低い5.7%だった。

 また、千葉県松戸市が警察の協力を得てまとめた調査によると、同市内で平成16年に95人、17年には102人の孤独死(50歳以上、自宅で1人で死亡)があったという。
by sakura4987 | 2007-06-16 10:07

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