◆経済制裁に抜け穴 北、他国籍船で大量輸入 1月以降13隻
(産経 07/7/6)
■自転車など中古品
昨年7月に北朝鮮が弾道ミサイル7発を発射し、大型貨客船「万景峰92」の入港を禁止してから5日で丸1年。
同10月の核実験で、日本政府はすべての北朝鮮船舶の入港を禁止するなど制裁を強化したが、北朝鮮はカンボジアなど他国籍の船を使って日本からの中古製品の輸入ルートを確保していることが5日、明らかになった。
今年1月以降、大量の中古自転車や冷蔵庫、古タイヤなどが相変わらず日本から流出。中古自転車は1回で昨年を大きく上回る量が輸出された。制裁の実効性を骨抜きにする事態に、新たな対策が求めれそうだ。
日朝貿易関係者らによると、北朝鮮向けの貨物を積み込んで国内の港を出港した貨物船は、今年1月から6月までの上半期で延べ13隻。
いずれもロシア、グルジア、カンボジア、ベリーズ、中国の5カ国で船籍登録された貨物船で、乗組員はほとんどがロシア人と中国人だった。
積み荷は主に、中古の小型貨物車や自転車、冷蔵庫、洗濯機などの中古製品から国内で廃棄された古タイヤなどだが、オレンジジュースやミカン、チョコレートなどの食料品、シャンプーや毛布、古着といった衣類・日用品も大量に運び出されている。
昨年10月に北朝鮮船舶の入港全面禁止や高級食材や娯楽品など「贅沢(ぜいたく)品」24品の輸出を禁止した結果、日本からの物流は停止したかに見えた。
だが、今年1月16日、中古自転車約9000台と十数台の中古小型貨物車を積んだカンボジア籍船が、北朝鮮の元山へ向け境港を出港。
翌2月にも、中古小型貨物車など約35台、中古自転車200台などを積んで興南へ出港。「対日輸入は事実上、再開されたといっていい」(日朝貿易関係者)状態という。
税関関係者によると、4月には境港に入港したベリーズ籍船が、中古自転車約1万1000台、中古冷蔵庫約1000台を元山に輸出。同月以降、古タイヤは数百本から1000本単位でコンスタントに輸出されている。
公安当局によると、北朝鮮はタイヤは燃料として、冷蔵庫は冷却パイプの銅を取り外して武器などに転用、自転車は主に中国などに輸出して外貨獲得に使っているといい、「日本の経済制裁が効いていた証拠だが、網を免れる行為が横行しているとすれば、早急に対策が必要だ」(政府関係者)という。
貿易統計によると、昨年の上半期に北朝鮮に輸出された中古自転車は6434台。今年はこれを大きく上回る数量が、1回に輸出されていることになる。