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◆【正論】社会学者・加藤秀俊 経済人と「儒家」の心



 (産経 07/7/1)


 ■「法令遵守」より「道徳遵守」宣言を

 ≪「適法」ならいいのか≫

 このごろの企業社会では「法令遵守(じゅんしゅ)」というのが金科玉条になっているようである。気取って英語で「コンプライアンス」などともいう。

 要するに企業活動にあたって法律をきっちり守りましょう、ということ。なかには「法令遵守」担当の役員を配置した会社もあるという。

 そんなことあたりまえじゃないか、とおもうのだが、現実は違う。建築法規に違反した手抜き工事があちこちで問題になる。表示と中身のちがう加工食品が出回る。架空の人員を申告して公金をダマし取る。

 どの業界をとってみても法律や規則を無視したインチキが横行している。そしてそれが発覚すると社長さんがテレビにでてきて謝罪なさるのが日常の風景になった。

 ところが、この「法令遵守」というのがじつはくせ者で、法律に違反していなければなにをしてもいい、というふうに解釈する連中がいるから困る。

 法律の施行まえなら「適法」だから、といって大急ぎで風致地区に高層マンションを建設する業者がいる。ガス爆発事故が発生しても、それを取り締まる法規がないから「合法」だ、と居直る業者がいる。

 看板が落ちて通行人が怪我をしても小さな看板なら法的責任は問われない。起訴されそうになると、廃業届をだして逃げ出すのがいる。

 廃業してしまえば法人が消滅するのだから処分の対象にはならない。なにごとも「適法」ならいい、というのでかなりあくどい行為が堂々と横行する。


 ≪悪徳行為に対抗する泥縄≫

 こういう不届きなことが連発するから政府や自治体は「法改正」をしてそれに対抗する。法の網の目はいよいよこまかくなって、ただでさえめんどうな法律がさらに複雑怪奇になる。

 日本は「法治国家」だというけれど、「付則」とか「施行細則」とか、ゴジャゴジャとならんで錯綜(さくそう)しているから「法体系」なんかだれにもわかりっこない。

 いくら頑張ってもシロウトにはわからない。わかりたいともおもわない。

 そこでクロウトの法律家が登場する。弁護士という商売が繁盛するゆえんである。その弁護士がすくないから、こんどは法科大学院というのがあちこちにできる。

 テレビ番組でも法律相談のたぐいが流行し、タレント弁護士が「違法」「合法」の論戦を展開する。

 アメリカという国が裁判社会で、なにがあっても弁護士を立てて裁判に持ち込むというのはよく知られているが、ことによると日本もだんだんそれに近づいてきているのではないのか。

 もっとも、そういう法律万能の思想は東洋にもあった。韓非子によって代表されるような「法家」がそれである。秦の始皇帝も諸葛孔明もその法学によって国家統治の原則にした。

 しかし、この「法家」に対して「儒家」とよばれる思想家たちがいたことを忘れてはならない。

 「儒家」の代表はいうまでもなく孔子である。この派のひとびとは人間社会を律する基本は「法律」ではなく「道徳」というものだ、と主張した。

 ウソをついてはいけません、というのは「道徳」いや、それ以前に「常識」の問題である。ウソつきは法律の問題ではなく人倫の問題だ、と「儒家」はいうのである。


 ≪「法の究極」にあるもの≫

 「法家」全盛のいま、必要とされているのは「儒家」の精神であろう、とわたしはおもう。

 「法令違反」をしていないから、といって静かな住宅地のまん中に歓楽施設をつくる。

 「適法」ならカネにものをいわせて企業を乗っ取ってもかまわない。そういう手合いが横行する世の中ではもうすこし「儒家」の思想に学ぶことがあってもいいのではないか。

 とりわけ介護、医療、それに教育といった分野は「ビジネス」なのかもしれないが、その「ビジネス」を運営する企業家は法律よりも道徳・倫理をだいじにする人格者でなければなるまい。

 企業が必要とするのは「法令遵守」担当役員ではなく「道徳・常識」担当役員なのだ。

 もろもろの経済団体は折にふれて「法令遵守」を宣言なさるが、ちっとは「道徳遵守」も問題になさったほうがよい。

 そして「儒家」の心のわかっていない新興「ビジネスマン」を安易に会員にしたり、ましてや役員にしたりというのは醜態を世間にしめす財界の恥さらしである。

 かつて法学者の尾高朝雄先生は「法の究極にあるもの」は道徳以外のなにものでもない、と明言なさった。学生のころにおぼえたそのことばをわたしはこのごろ思いだすのである。
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by sakura4987 | 2007-07-14 10:44

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