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◆【ビューポイント】日本の宇宙戦略と基本法案 (世界日報 07/7/3)




企業に商業利用を促進/軍民両用の平和利用解釈に


慶応大学教授 青木 節子


≪■宇宙基本法案が今国会に上程≫

 先月二十日、宇宙基本法案が国会に上程された。会期終了を控えているため、次会期以降、継続審議されることをあらかじめ決定した上での法案提出である。

 今後すんなりと可決されることになるのかいまだ予断を許さないが、議員立法としての宇宙基本法案を与党が検討し始めて約二年、上程にこぎつけたことは日本の宇宙法政策の歴史に新たなページを刻んだ快挙といえるであろう。

 もっとも、すでに十三カ国が宇宙活動法を持ち、法律ではないが、中国、アルゼンチン、ブラジルなども九〇年代半ば以降、宇宙物体登録や打ち上げサービス振興のための法令を定めている。

 そのため、宇宙先進国の日本に宇宙活動を規律する法律がこれまでなかったのはなぜか、という疑問も湧いてくる。

 宇宙法制定の目的としては、

 ①条約の国内履行確保

 ②国家宇宙政策の実現

 ③揺籃期の宇宙産業振興と国際競争力の確保

 ――などが挙げられるが、これまで日本はそのどれも必要としなかったというのが単純な回答である。


 第一に、日本ではほとんどの宇宙開発利用事業を独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が独占しており、民間の宇宙活動事業が遅れているからである。

 文部科学省と総務省がJAXAの活動を監督できるため、日本が加盟する宇宙条約(一九六七年)をはじめとする国際約束を履行するための国内法を作る必要がなかったのである。


 第二に、日本の宇宙政策もまた、国内法を特に必要としないタイプのものであったからである。

 総理府のもとに置かれた宇宙開発委員会(二〇〇一年以降文科省に移管)は、宇宙科学の発達と宇宙基盤技術の開発に力を入れ、また、一九六九年の国会決議は、日本の宇宙開発が「平和の目的に限り」行われるよう行政府に指示してきた。


≪■国益になる宇宙利用が可能に≫

 本来、「平和目的」や「平和利用」は幅のある用語で、たとえば公海の平和利用は一定の軍事利用を含んだ概念である。

 一般に、自衛権の枠内の行動であれば、平和的目的にかなった行動であるとするのが、国際標準の解釈といってよい。

 しかし、国会審議の過程でこの国会決議にいう「平和の目的に限り」とは非軍事利用を意味することが強調されたため、宇宙からの偵察により国の防衛能力を高めることは不可能となった。

 ところで、宇宙技術は軍事と非軍事の区別が難しいため、日本が外国企業に輸出した通信衛星の回線が軍隊に提供されたり、日本のロケットエンジンを用いて製造したロケットが軍事衛星を打ち上げたりした場合など、「平和の目的」に反した宇宙利用となってしまう。

 また、一九九〇年の日米衛星調達合意も、政府の実利用衛星について国際公開入札によって調達することを規定するものであったため、実質的には実利用衛星は米国からの購入が義務づけられるといってもよい状況であった。

 国の防衛と宇宙が切り離され、商業利用の発達も制約する法制度に阻まれて、日本は、ひたすら先端宇宙技術を開発する道を選択せざるを得なくなったのである。

 折悪しく、九〇年代は、世界の宇宙の商業利用が拡大し、中国やインドが宇宙先進国の仲間入りを果たそうと猛追をかけてくる時期と重なった。

 このような状況を招いた原因は日本に宇宙戦略がなかったことにあるという事実を直視し、国益にかなった宇宙利用を可能とすべく、今回の宇宙基本法案が作られた。

 これにより、第一に、首相を本部長とする宇宙開発戦略本部を内閣に設置して、総合的、統一的に宇宙開発や利用を日本の国益と国際社会の平和のために用いることができる体制を整備することとした(第二五条以下)。

 また、宇宙条約の平和利用原則など国際法を遵守し、かつ、「日本国憲法の平和主義の理念にのっとり」(第二条)、日本の総合的安全保障に資する宇宙技術を防衛省が保有することが可能な道を開いた。

 「専守防衛」を堅持する日本にとって情報収集能力を高めることは諸外国にも増して重要であり、また、自衛隊の海外での災害援助のためにも必要な措置といえ、この決断は重要である。


≪■ベンチャーにも平等な機会を≫

 第三に、宇宙産業振興のために国が技術移転の促進や射場の整備、税制、金融上必要な措置を講じる義務が規定されている(第一六条等)。

 世界の宇宙活動法制定の最大の理由は自国の宇宙産業促進である。

 日本もようやく軍民両用技術の利用を可能とする宇宙の平和利用解釈が採用され、国の適切な支援を通じて宇宙の商業利用を促進することが可能となる見通しである。

 もっとも民間の宇宙利用促進のための支援は、従来からJAXAと取引のある大企業だけではなく、ベンチャー企業にも平等に与えることが納税者への公平な還元として要請されている点に留意すべきであろう。

 この目的を果たすため、宇宙基本法の成立後、「宇宙活動に関する法制の整備」(第三五条)を速やかに行い、公平で透明性のある技術移転や国と企業の適切な責任配分を規定することが必要である。

 この点の重視は、単に宇宙戦略のみならず、新しい日本の戦略全般の根幹をなす、国家と納税者の関係確立の嚆矢ともなるのである。
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by sakura4987 | 2007-07-14 10:46

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