★★★ 日本再生ネットワーク 厳選ニュース ★★★

sakura4987.exblog.jp
ブログトップ

◆【ビューポイント】実利用に向けた月探査競争



日本は計画の再考必要/月制度構築での発言力向上へ

慶応大学教授 青木 節子

資源採掘が主要な目的の中国

 (世界日報 07/12/3)


 昨年以来、各国の月探査競争が注目を集めている。きっかけは、ブッシュ大統領が二〇〇四年に国際宇宙ステーション完成後の米国の「新宇宙探査構想」として、月を足がかりにしての火星探査を挙げたことにある。それ以前も日本や欧州宇宙機関(ESA)は科学研究としての月探査を計画または実施していたが、ブッシュ構想発表以降、急速に月探査についての世界の関心が高まった。



 日本は、本格的な月探査としては各国の中で最も早く、今年九月十四日に月探査機「かぐや」の打ち上げに成功し、十二月下旬には本格的な月観測を開始する予定である。しかし、かぐやの後継機による月着陸までは決定済みであるものの、その後独自の有人探査に乗り出すかどうかは未定である。一方、二二年以降、月に有人宇宙船を送り込む計画を公表した中国は、十月、資源探査等を目的とする嫦娥一号の打ち上げに成功した。来年、月探査機を打ち上げる予定のインドも、二〇年頃に有人探査を実現させる計画に踏み切った。遅れてロシアも今年九月、三〇年前後の月面基地建設を決定した。



 米ソが月の有人着陸一番乗りを目指して熾烈な競争を繰り広げていた時代ではない。今、一体何のために月探査・開発を行うのか。中国、インドの場合は、「アジア初」の有人月探査を成功させて国民の矜持と統合意識を高めるという目的もあるであろう。しかし、それは主たる理由ではない。中国国家航天局の高官自身が、経済発展に役立てるためにヘリウム3、チタンやウランなど月の資源を採掘することが月探査の主要な目的であると述べている。たとえばヘリウム3を採取して地球に持ち帰り核融合の燃料として使用すれば、ほとんど無限のエネルギーを獲得することになるからである。また、月の両極には氷が存在する可能性もあり、存在が証明された場合には、長期滞在のための生活用水やロケット燃料となる。月の水資源を利用する国が、月探査・開発に圧倒的な優位を占めることとなるであろう。日本は従来、月を純粋な科学研究の対象としてきたが、ここにきて、実利用や経済開発に乗り出す国との関係も視野に入れて月計画を練り直す必要に迫られることとなった。宇宙探査は政治的、外交的な意義づけから逃れられないからである。



資源探査ルールない宇宙条約


 ところで、自国の経済発展のために月を自由な経済開発の場として用いることは許されるのであろうか。一九七九年に採択され八四年に発効した月協定は、「月」に「人類の共同財産」(一一条一)という特別の法的地位を付与して自由競争による開発を否定する。「月」の資源は、将来設立される国際制度を通じて開発され、そこからあがる収益は、途上国の特別の必要や、開発に資源を投入した国の利益等を勘案して配分されるのである(一一条五、七)。資本主義に基づく自由な資源開発が否定されているため、月協定に加盟する国は現在も十三カ国に過ぎず、その中に主要な宇宙活動国は一国も含まれない。そのため、現在の月探査・開発の行動指針とはなり得ない。



 一方、月探査計画をもつ宇宙活動国はすべて宇宙条約(一九六七年発効)には加盟する。宇宙条約では、天体の領有が禁止されているので、有人基地を建設した国が月の土地について領有権を主張することは明らかに禁止事項に属し、法解釈から個人が土地の所有権を主張することもまた許されない。しかし、宇宙条約は、すべての国の自由な宇宙活動を保証する(一、九条等)。そして、打ち上げ国が宇宙物体を登録し、その事実に基づいて自国の法律を適用する(八条)ことになっている。つまり、月面基地は機能する限り、それがいかに長期にわたるものであれ、登録国がその場所を占有し排他的に使用することが可能である。そのため、これが事実上の領有とどう異なるのかという疑問は当然湧いてくる。また、宇宙条約は月の資源開発実施の要件や収益配分条件については何ら規定を設けていず、月探査参加国が参照すべき実質的なルールがない状況である。



ガイドラインで法規制検討も


 そのような状況下、去年以来主要な宇宙活動国とESAの計十四の宇宙機関が会合を続け、今年五月に「国際探査戦略」(GES)というガイドラインを採択した。この文書は、効率の良い月探査のために各国の月ミッションが重複することを回避し、可能な限り国際協力で探査・開発を実施することを謳う。もっとも、資源開発についての具体的な法規則は含まれてはいないが、GES文書は、今後、GESの枠内で、月の探査・開発についての制度構築を議論する可能性自体は示唆している。多国間で制度構築を討議するときには、南極制度(南極条約)や核兵器(核不拡散条約)の場合のように、黎明期の実績が制度決定に当たっての発言力に決定的に影響を与える可能性が大きい。月制度の構築が視野に入った今、日本も月探査のありかたと行程表を、国際的な発言力という観点から再考せざるを得ないであろう。宇宙開発委員会が作成中の「宇宙開発に関する長期計画」が月探査をどう位置づけることになるのか、注目される。
[PR]
by sakura4987 | 2007-12-10 16:57

毎日の様々なニュースの中から「これは!」というものを保存していきます。


by sakura4987