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◆【湯浅博の世界読解】清徳丸はなぜ衝突したか (産経 2008/3/5)






 シンガポール駐在の特派員だったころ、海はいつも目の前にあった。支局も住まいもシンガポール・マラッカ海峡を望む海岸にあったから、何隻もの大型船がゆっくりと航行する雄姿を眺めて暮らした。

 狭い航路を大型船が最大15ノットで緩やかに進むから、止まっているように見える。その間を、船脚の速い小型ボートや漁船が小回りよくすり抜けていく。

 素早く旋回する小型船に比べると巨艦の舵取りはいかにも鈍い。28万トンのタンカーや9万トンの空母が小舟に気づいて転舵しても機敏な回避は難しい。

 ある深夜、取材のためにインドネシアの木造小舟で海峡を横断せざるを得なくなって肝を冷やしたことがあった。過密航路を一列にやってくるタンカーやコンテナ船の間を、無灯火の小舟が突っ切るのだ。

 当然、大型船からは肉眼でもレーダーであっても、無灯火の木造小舟など確認できるはずもない。インドネシアの漁師たちは海に投げ出されたときの救命胴衣も持ち合わせない。現地に駐在する日本の海上保安官に「それは無謀だ」とたしなめられてしまった。

 だから、千葉県・野島崎沖で起きたイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故には、正直、目を丸くしたのだ。

 7750トンのイージス艦はいやしくも「動くミサイル基地」であり、最新鋭の機器を備える。他方、漁船は7トンと小ぶりながら、インドネシアの無灯火木造小舟とは明らかに違う。灯火高速船のうえに機器類を装備している。

 海上衝突予防法では船が交差する際に、他船を右方向に見る船が右に避ける義務がある。今回の場合は、明らかに「あたご」に回避義務があるから、衝突事故を起こせば非難のマトになる。海陸を問わず、死亡事故にいたれば加害者の結果責任が問われるのだ。

 それにしても、小型漁船は小回りを利かしてなぜ素早く回避できなかったのか。イージス艦はマラッカ海峡の大型船より遅い約10ノット(18キロ)だ。これに突っ込んでは命が幾つあっても足らない。イザとなれば、どちらに回避義務があるなんていってはいられない。

 漁船の2人が行方不明なので、彼らに何があったかは分からない。直前にイージス艦を横切った仲間の漁船につられたのか否か。少なくとも救命胴衣をつけていれば、救出される可能性は高かった。

 米海軍筋に聞いてみても、やはり「第一報を聞いたとき、なんで日本漁民はライフジャケットを着ていないのか」との疑問だったという。一方で、漁民の家族が石破茂防衛相の辞任を望まず、再発防止に邁進(まいしん)するよう求めていたことを評価した。

 イラク戦争を指揮したラムズフェルド前国防長官など、戦死者続出だから何度、辞めても追っつかない。それよりも、原因の究明と再発防止策を確立することが何より優先される。

 韓国海軍はどうか。元韓国海軍少佐だった在京の軍事評論家、高永●氏は在職時に小型の高速警備艇の艇長をつとめたことがある。

 彼は大型船を発見すると、自ら回避行動を起こすから一度もヒヤリとしたことはなかったという。「双方にミスがあっても、機動性のある小型船が回避するのが筋だ」との見解だ。軍艦の場合は、急に転舵しようとしても回転幅が広いため、「やむを得ず真っすぐに向かわざるを得ない」と現実論を述べる。

 ミスを重ねた「あたご」は、なぜ衝突を避けられなかったのかの究明は不可欠だ。しかし、「清徳丸はなぜ衝突が避けられなかったか」もやはり問われる。(東京特派員)

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by sakura4987 | 2008-03-12 15:43

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