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◆日豪関係の憂鬱 (産経 2008/4/6)





     シンガポール支局長・藤本欣也


 ◆日本素通りの衝撃

 日本とオーストラリアの今後を悲観する声が巷(ちまた)にあふれている。

 問題になっているのは、先月27日から始まったラッド豪首相の外遊だ。同盟国・米国を真っ先に訪れたのは当然として、次に欧州諸国、そして中国を歴訪する。が、日本は素通りである。別に早足の歴訪というわけではない。18日間に及ぶ長期外遊であり、中国には4日間滞在するのだ。

 伏線はあった。

 昨年12月に発足したラッド労働党政権は日本の調査捕鯨に対し、「科学的調査の名の下で美しい動物が大量に殺されている。気分が悪くなる」(ギャレット環境相)と激しく非難。日本に配慮して捕鯨批判を抑えていたハワード前政権との違いが際立っていた。

 しかも、ラッド首相は自他ともに認める中国通である。名門、オーストラリア国立大で中国語を学び、現在の外務貿易省に入省後、北京の大使館で勤務した経験をもつ。日本流に言えば、「チャイナ・スクール」出身の首相なのだ。

 今回の外遊日程をもって「日本外しだ」「中国重視だ」という豪州失望論が日本でわき起こったのには、こうした背景がある。

 ◆中国主席の贈り物

 ラッド首相の中国訪問は9日から始まる。ハイライトは胡錦濤国家主席との会談だが、実は両者が会うのは初めてではない。

 昨年9月、アジア太平洋経済協力会議(APEC)出席のために豪州を訪れた胡主席は、野党党首時代のラッド氏と会談している。

 その初会談前日にシドニーで行われた、あるレセプションでのことだ。ラッド氏が胡主席を前に演説する機会があった。喜色満面に得意の中国語を披露したのだが、驚かされたのは演説内容だった。

 自分と家族がどれほど中国文化を愛しているか-について滔々(とうとう)と語ったのである。それを見て、「ラッド氏は中国のことが本当に好きなんだな」と実感すると同時に、「次期首相候補として軽率ではないか」と思ったものだ。中国首脳を前に行う演説としてはリップサービスの域を越えていたからである。

 ラッド首相は少年期に父親を交通事故で亡くし、苦学を重ねた。中国との出合いは10歳の時、母親がくれた一冊の中国文明に関する本だった。以後、中国史のロマンにのめり込む。必ずしも恵まれていたわけではない家庭からのし上がれた要因のひとつは、彼の場合、間違いなく「中国」だった。

 「豪州の将来にとって中国が重要だから中国語を志したのではない。心情的に中国にひかれている点が珍しい」。豪州の専門家はラッド首相をこう評する。日本人に多いタイプということだろう。

 もちろん、中国側は百も承知である。野党時代のラッド氏の海外出張費を中国企業が一部負担していた事実が最近明らかになった。

 そして胡主席は初会談の際、まるで褒美を与えるかのように、ラッド氏と家族を北京五輪に招待したのである。

 ◆変容する日中豪

 ラッド首相は今回、日本を素通りする理由について「今後、日本訪問は(洞爺湖サミットなど)2回予定しており、日本軽視ではない。日程調整上の問題にすぎない」と当惑気味に説明している。

 日豪関係は、ラッド首相自身、「第一級の外交関係」にあると認めているように、中豪関係に比べると成熟している。ラッド首相にしてみれば、日本軽視の反応は過剰だということになるのだろう。

 確かに、外遊日程から日本が外れたことだけをもって日豪関係を悲観するのは早計である。豪州にとって「日本か、中国か」という二者択一はあり得ないからだ。中国は最大の貿易相手国だが、輸出だけでみると、依然として日本は最大の地位を占めている。

 ただ、今回の4日間の中国訪問決定は中国の対豪外交の成果といえる。では、“日本外し”の背後に中国の影はないのか。知らず知らずのうちに中国の掌中でラッド首相は踊らされていないのか。昨年9月、ラッド氏の中国語の演説を聞きながら、胡主席が浮かべていた微笑が思い出されるのだ。

 確実なことは、ハワード、安倍晋三両政権が退陣したことで、自由と民主主義という共通の価値観だけで共鳴できる日豪関係は終わりを告げたということである。

 中国にとって豪州が資源エネルギーを確保する上で重要な国家であるという事情は、日本にもそのまま当てはまる。日中両国は豪州において競合関係にあるのだ。

 日本が豪州に対し、政治・安全保障分野を含めた関係強化に動き出したのは小泉純一郎政権からである。ラッド政権への不満を契機に、以前のような“無関心時代”に逆戻りすることがあってはなるまい。
by sakura4987 | 2008-04-09 13:30

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