◆【次代への名言】チャーチル
(産経 2008/10/15)
■「戦時において真実は、常に虚偽の塊にボディーガードされねばならぬほど貴重である」(チャーチル『第二次世界大戦』)
第二次世界大戦で、母国と欧州を勝利に導いた英国の名宰相、チャーチルはすぐれた文筆家でもあった。1953年のきょう、大著の回
想録『第二次世界大戦』がノーベル文学賞に選ばれている。冒頭はそのなかの、ソ連との首脳会談でのことばである。「スターリンたちは
この発言に非常に感心し、会談は笑いさざめきあいながら終了した」などと続く。
第二次世界大戦でチャーチルが描いた戦略はこうだ。米国にはまず欧州戦線に軸足を置いてもらい、ナチス・ドイツが屈服したあと、米
英は日本との太平洋戦線に集中する。ルーズベルト米大統領も「欧州戦線に勝利すれば、太平洋戦線も終結する。おそらく、一発の銃声、
一人の戦死者もなしに」という考えだった。
しかし、事態の推移は深刻だった。チャーチルは沖縄戦の経験から、「日本での本土決戦となれば、150万以上の米英兵の命が失われ
る」と直感した。
開発されたばかりの原爆を現状打開に使用する。両国の首脳にためらいはなかった。だが、チャーチルが「(米英間で原爆投下の是非が
議論にもならなかったという)この事実は後世、裁かれねばならない」とこの回想録で記すとき、彼の心には罪悪感が宿っていた-はずである。