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◆【正論】早稲田大学教授 榊原英資 「この国のかたち」変えるには



 (産経 2008/10/15)


 ≪成功体験を引きずる≫

 麻生内閣が成立し、自民党も選挙のための準備を進めている。そう遠くない時期にいよいよ総選挙である。太郎と一郎(小沢)の対決になる訳だ。2005年9月の小泉選挙以来の衆院選だが、今回は劇場型パフォーマンス選挙ではなく、二大政党のマニフェスト(政権公約)を軸に、政策選択のための選挙にしてほしいものだ。

 今の日本は、実は、歴史の大きな曲がり角にありながら、過去の成功体験に引きずられて大きくシステムを変えることが出来ず、右往左往している状況だ。このままでは、そう遠くない時期に沈没してしまいかねない。あらためて、この国のかたちをどう変えていくかを考えなくてはならないのだろう。これこそが政治の最も重要な課題である。今回の選挙は、是非、この国のかたちをどう変えるかで争うべきだ。

 それでは、この国のかたちを、一体、どう変えていったらいいのだろうか。一言でいえば、近代産業社会からポスト近代社会への移行なのだが、これは制度の大幅な組み替えを含む大作業になる可能性が高い。明治維新以来の日本の近代化システムをどう変えていくかということなのだから。

 ≪「道州制」は不可能だ≫

 明治維新まで、日本は基本的に極めて分権的社会であり、江戸時代の幕藩体制は、分権国家の一つの完成型であったということが出来るのだろう。西欧列強による植民地化を防ぎ、日本を近代化・産業化するために東京を中心とした集権国家をつくったことは決して間違いではなかった。たしかに明治国家は江戸文明の「扼殺(やくさつ)と葬送」の上に成立したのだが(渡辺京二著『逝きし世の面影』)、それは必要であり、いたし方のないことであった。

 しかし、近代化・産業化に成功し、世界第2のGDP(国内総生産)大国となった今、状況は大きく変わっている。再び、江戸時代的、というよりは日本の伝統である分権国家に戻るべき時ではないだろうか。地域格差の拡大、1次産業の衰退など東京一極集中の問題点がさまざまな形で噴出しているからだ。

 それでは、どのようなかたちの地方分権が望ましいのだろうか。政府部内では道州制が検討され、鳩山総務大臣も直ちにではないにしてもその方向を向いているように思われる。しかし、道州制は望ましくもないし、また、実現可能でもないだろう。

 まず、日本を半独立国的な数個の地域に分けることが可能だろうか。ここで考えてほしいのは、いい意味でも、悪い意味でも日本が大変特殊な国だということだ。というのは、日本は建国以来、外国や異民族の侵略を受けたことのない非常に同質性の高い国なのだ。

 英国のように歴史上度重なる侵略を受け、民族的にも宗教的にも多様で異質なものを抱えた国が、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドのような地域に分けられているのはごく自然なことだが、日本は全く事情が異なる。日本の歴史上、いくつかの地域に分裂した時期はほとんどなかった。

 ≪江戸幕藩体制にヒント≫

 日本の地方分権は平安時代からの荘園、そして江戸時代に完成されていった藩という形をとっていった。江戸時代、大は加賀100万石から小は1万石そこそこといった小藩まで260以上の藩が存在していた。

 周知のように、財政権、行政権は藩にあり、幕府では老中たちが藩を監督し、外交・軍事権は強固だったが、財政的にはほぼ400万石の大大名にすぎなかった。この体制で260年もの間、対外戦争も内乱もなく平和な時代を維持できたのだから、大変見事なシステムであったといわなくてはならないだろう。

 現在、地方分権のモデルにしなくてはならないのは明らかに江戸時代的「藩」であろう。筆者は明治4年の廃藩置県になぞらえて、廃県置藩と呼んでいるが、具体的には300前後の基礎的自治体と国の二層構造とするのが望ましいのだろう。平安時代から江戸時代の藩に至る歴史があるということは、地域の文化や伝統もほぼ藩を基準にして残っているということでもある。加賀友禅、丹後縮緬(ちりめん)などなどである。

 国の出先機関や都道府県などを廃止しなくてはならないのだから時間はかかるだろうが、5~10年の行程表をつくって実現すべき課題であろう。当面の世界的金融不安や景気後退にどう対応するかも大切だが、今回の選挙ではこうした息の長い政策についても是非議論すべきであろう。この国のかたちを大きく変えていかないと、日本の未来はないし、今から取り掛からないと手遅れになってしまう。
by sakura4987 | 2008-10-22 10:14

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