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◆【今日の突破口】ジャーナリスト・東谷暁 ワークシェアの落とし穴



 (産経 2009/2/4)


 今年の正月早々、日本経団連からワークシェアリングが選択肢のひとつとして提案されたことで、いよいよ日本の雇用も危機の様相を深めていることが明らかになった。とはいえ、これまで経団連が真剣にワークシェアリングを構想したことはなく、「唐突な感じがする」「単なる賃金引き下げの口実ではないか」などの批判が生まれたのは当然のことだった。

 いまのところ日本の雇用は、年内に失業率が10%に達すると予測されているアメリカなどに比べれば、まだましであるように見える。しかし、先日の財務局長会議で指摘されたように、地方の製造業の生産が減少し、個人消費も低迷して、ほとんどの地域で雇用情勢が厳しくなっている。ワークシェアリングの選択は、ますます現実味を帯びてきているのだ。

 しかし、ワークシェアリングを単に労働時間と賃金の分配にすぎないと考えているとすれば、思わぬ落とし穴が待っているだろう。これまでワークシェアリングが論じられるさいに挙げられてきたのは1993年、ドイツのフォルクスワーゲン社が3万人の解雇を食い止めた例や、2000年、フランスが法定労働時間を39時間から35時間に引き下げ失業率を12%から8%台に低下させた例だった。

 こうしたワークシェアリングは、労使がひざを交えて長時間の調整を行い、双方がかなりの犠牲を払って合意にこぎつけたものであることを忘れるわけにはいかない。ましてや、最大の成功例とされるオランダのワークシェアリングは82年に政府・労働・使用の三者が「ワッセナーの合意」を行って賃金抑制に踏み切り、それから十数年もの時間をかけてパートタイマーも賃金で差別されない仕組みを作り上げたのである。

 オランダの成功例を、すぐにも日本に移入できるような議論をする人もいる。しかし、オランダのワークシェアリング制度が「ポルダー・モデル」と呼ばれていることからも分かるように、長大な堤防によって維持されている干拓地「ポルダー」のように、雇用を国民全体で守るという価値観に基づく制度であり、オランダは失業に対する国民的堤防として、ワークシェアリングを行ってきたのだ。いまの財界に、こうした制度を国民とともに構築しようという覚悟があるとはとても思えない。

 では、日本の雇用はこのまま崩壊していくしかないのだろうか。私はそうは思わない。労働哲学が専門の甲南大学教授・杉村芳美氏は、近著の『職業を生きる精神 平成日本が失いしもの』(ミネルヴァ書房)のなかで、この20年あまりの間に日本人が失ってきたのは労働観そのものではなく、歴史のなかで培ってきた労働観を良きものとする「価値意識」であると指摘している。そのいっぽうで杉村氏は、かつて日本人が保持していた労働観は、日本人の中にいまも潜在していることを指摘している。

 日本人はワーク(仕事)をシェアする(分け合う)のは、当然のこととしてきた。そうした労働観をもっていたがゆえに、かつて企業組織における目覚ましい成果もあったのだ。思いつきで舶来のワークシェアリングを口にするくらいなら、財界人は杉村氏の著作でも読んで、日本の伝統ともいうべき仕事の分かち合いについて、もう一度、考え直してみてはどうだろうか。
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by sakura4987 | 2009-02-04 11:39

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