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◆世界経済覇権は、内省の時代、自信喪失の時代に転がりこんでくる



 (2009/2/6) 増田悦佐
 

 アメリカのファンドマネジャー、J・D・デヴィッドソンとイギリスの歴史家、W・リーズ・モッグが、「深刻な世界恐慌のたびに国際経済における覇権国が交代し、しかも恐慌が過ぎ去った時代に覇権国に成り上がっている国は恐慌でいちばん苦しんだ国だ」という法則性を、『世界経済が破綻する時』という本で提唱した。たしかに、1630年代にチューリップバブルの崩壊で辛酸を舐めたオランダが、その後世界経済の派遣を握り、1720年代に南海の泡沫と呼ばれた新規公開株がらみのスキャンダルによる金融市場の崩壊でさんざん苦しんだイギリスに覇権が移り、1929年の大恐慌に始まる30年代大不況ですさまじい国民経済の収縮に見舞われたアメリカが、その次の覇権国となっている。

 そのとき、ふたりが次の不況でもっとも苦しむ国、そしてその後の世界経済の覇権を握る国として白羽の矢を立てたのは日本だった。この本が出版されたのは、まだ日本の不動産バブルがふくらみはじめたばかりの1987年だった。まだ、バブル崩壊以降に10年以上も続く長い長い不況が待っているなどということは、日本人のだれも夢にも思っていなかったころに、深刻な不況ばかりではなくその後の日本経済の力強い回復まで見通していた慧眼には、何度読んでも驚嘆させられる。

 デヴィッドソンとリーズ・モッグは、ほかにもいろいろ貴重な観察をしている。中でも興味深く、今後10~20年の国際政治経済を占う上で参考になるのが、経済覇権は時の覇権国に堂々と挑戦した国にではなく、覇権国の同盟国として頼りなげな「ナンバーツー」の立場にあった国に望みもしないのに転がりこんでくるという指摘だろう。これは、覇権を目指して画策する強大国の政治家連中にはとうてい承服できないであろう、本当に都合の悪い歴史の真実だ。

 たしかに、チューリップバブルを克服して経済覇権を確立したオランダに挑戦して、政治・外交あらゆる手段を弄してヨーロッパ大陸に覇を唱えようとしたのは、フランスだった。だが、世界経済の覇権はそのフランスを素通りして、オランダの地味な同盟国だったイギリスのもとに転がりこんだ。20世紀初頭にイギリスの世界経済覇権に果敢に挑戦していたのは、ドイツだ。だが、1930年代大不況をあいだにはさんだ二度の世界大戦が終わってみると、世界覇権をイギリスから受け継いでいたのは国際政治の権謀術数にはまったくうとく、南北アメリカ大陸ではガキ大将のようにふるまうのに、ヨーロッパに来るとイギリスの後ろにくっついて歩くだけで「田舎もの」とヨーロッパ大陸諸国から蔑まれていたアメリカだった。

 「覇権はつねに、強力なライバルではなく、控えめな二番手国家に移る」という法則と表裏一体をなすもうひとつの法則がある。それは、二番手国家が覇権国に成り上がるのは、誰ひとりそんな展開が予想できないほど二番手国家が自信喪失状態に陥り、内省的になっているときだという法則だ。

 両大戦間のアメリカは、「第一次大戦のような悲惨な戦争に巻きこまれたのは、ヨーロッパ先進諸国のいさかいを移民の流入を通じて紛争の種が自国に紛れこむことを許してしまったからだ」と考えた。そして、このまちがった反省にもとづいて、それまでのアメリカ経済繁栄と成長の源泉であった移民を極端に制限する法律を矢継ぎ早に通すほど、排外主義的、孤立主義的になっていた。あの陽気で快活で外向的なアメリカ人が、「もうヨーロッパ人のように狡猾で堕落した連中とは付き合いたくない。放っておいてくれ」というほど、内向きになっていたのだ。

 ドイツでナチズムが、そしてイタリアでファシズムがあれほど簡単に政権を掌握でき、他国への侵略戦争を仕掛けられたのも、アメリカの極端に内向きな外交政策があったからこそなのだ。結局、アメリカの過度の引きこもりが、世界史上最も悲惨で経済的損失も最大となった大戦争を引き起こしてしまった。だが、国際経済がこの第二次世界大戦の瓦礫の中からよみがえったとき、覇権はイギリスの覇権に挑戦したドイツではなく、孤立主義によって問題を大きくしたアメリカに移っていた。

 1990年代から21世紀初頭にかけての日本もまた、1920~30年代のアメリカ同様、長い内省の時代、自信喪失の時代を過ごしている。ようやく内因性のバブル崩壊不況から立ち直ったと思ったら、今度は外因性のサブプライムローン・バブルの崩壊で完全に打ちのめされてグーの音(ね)もでないという心理状態にある。

 現在の日本経済は、あきらかにありとあらゆるマイナスのニュースに過剰反応している。たとえば、電気機器、電子機器の最終製品の出荷台数は前年同期比5~15%の落ちこみにとどまっているのに、最終財メーカーから部品メーカーへの発注は30~50%の大激減となっている。別に景気が回復しなくても、足元で最終財の消費がそこまでひどく減っているわけではなかったと気づいただけで、部品メーカーへの発注が殺到するほど行き過ぎた悲観論に支配されているのだ。

 労働市場も同様だ。2009年2月5日付の日本経済新聞によれば、「2009年度に正社員の賃金改善を予定している企業は、全体の27.9%」となっていた。これだけ厳しい経済環境の中で全体の三割近い企業が賃金改善を予定しているのだ。大量解雇と大幅な賃金引下げのニュースしか出てこないアメリカや西欧諸国に比べれば、ずっとましな状態だ。

 ところが、こうしたニュースさえも、「2008年度の賃金改善予定企業の比率であった45.0%に比べて17.1%も低下した」とか、「2008年度中に賃金改善を実施した企業が55.1%だったのに比べると、ほぼ半減だ」として暗いニュースのように報道される。すでに景気が下降局面に入ったことが明らかだった2008年度に45%もの企業が賃金改善を予定していたのもすごいが、その2008年度に実際に賃金改善を行った企業は予定を上回る55%になったというのは、本当に日本経済の懐の深さを象徴する事実だ。

 世界経済の覇権は、好むと好まざるとにかかわらず、自信喪失状態で自己評価が極端に低下した二番手国家に転がりこんでくる。それが歴史の教訓だ。「そんな責任の重い立場はいやだ」と言っても、向こうから転がりこんでくるものは受け入れざるをえない。

 日本国民の皆さん、心の準備はできているだろうか。
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by sakura4987 | 2009-02-08 12:07

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