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◆【土・日曜日に書く】東京特派員・湯浅博 進歩派がそこへやってきた



 (産経 2009/2/14)


 ■ファシズム到来のデマ


 「70年安保」を前にしたあの喧噪(けんそう)の時代。“団塊の世代”がまだ大学生だったころのことである。世は左派の知識人が論壇を跋扈(ばっこ)し、盛んに「革命前夜」のような幻想を振りまいていた。

 大学紛争が激しさを増して、東大の安田講堂をめぐる過激派学生と機動隊の攻防戦が起きた。お茶の水から神保町にかけては、学生たちが「神田カルティエラタン」と称して道路を封鎖した。

 こんな世情不穏の中で、ワイマール共和国のドイツになぞらえる議論がまことしやかに伝えられたものだ。背景にあるのは、雇用不安と政権政党の弱体化であり、この先、ヒトラーのような独裁者がやってくるとあまたの知識人が煽(あお)っていた。

 そんな折に、柔和な語り口のドイツ文学者、西義之が「乱暴を通り越して無責任な議論にすぎない」と切って捨てた。好々爺(こうこうや)のような東大教授であり、はにかむしぐさの裏に鋭利な言論の刃(やいば)を隠していた。

 西はこのとき、『ヒットラーがそこへやってきた』という雑誌連載によって、ナチスという魔物の正体を見事に腑分(ふわ)けしていた。同時に西は、事実に肉薄することによって、ファシズムの到来説が政治的なデマにすぎないことを立証してみせた。懐かしくも頼もしい論考である。

 西義之が昨年10月9日、86歳で死去していたと聞いたのは最近のことだ。すぐに書棚を探してみたが、論考をまとめた本が見あたらない。何度目かの海外転勤のどさくさで失ってしまったらしい。あれを読んで、時代をファシズムと結びつける愚説が心の内で氷解していったことを覚えている。

 うれしいことに、『ヒットラーがそこへやってきた』を古本屋で見つけて38年ぶりに対面した。色あせたページを繰ると、さらに10年さかのぼる60年安保のころにも、「保守政権がファシズム化する」という進歩的文化人からの扇動があったと書かれていた。

 ■西義之が暴いたウソ

 当時、東京教育大の美濃部亮吉教授が「日本はあのころのドイツよりも危険な状態にある」と力説していたと記録されている。その後の歴史は美濃部説と異なって、ヒトラーに匹敵する人物は現れない。めでたいことに当人は東京都知事になってニコニコ顔であると、西は皮肉っている。

 彼は同時代の知識人の言動を克明に積み上げていくうちに、進歩的文化人の中に「事実そのものの発言を封ずる空気」を感じるようになっていく。

 この場合の進歩的文化人とは、岩波書店の雑誌『世界』や『朝日ジャーナル』などを舞台に、容共左派の立場から主張を展開した言論人たちを指す。

 問題は、なぜ彼らが現状をファシズムと結びつけたがるのかであった。西はその根をたぐっていくうちに、進歩的文化人の“教祖”である東大教授、丸山真男のいくつもの論文に行き当たる。

 早くから丸山理論の仮面をはがした人々に、社会思想家の関嘉彦、京大名誉教授の猪木正道らがいる。西の丸山批判には、思想の骨格をなすファシズム論に集約されるところに特徴があった。

 西は昭和50年に『誰がファシストか』を出版して、独伊にファシズムの源流をたどり、日本にファシズムがあったかを解き明かしていく。その結果、西は丸山こそが主著『現代政治の思想と行動』で、「反共=ファシズム」という単純化によって牽強(けんきょう)付会の虚構を築いたと痛烈に批判した。

 ■進歩的文化人の残滓(ざんし)

 知的観念論が好きな日本人に丸山の影響力は絶大である。彼のお墨付きを得て、小利口な言論人や政治家は気に入らない相手の罵倒(ばとう)に「ファッショ」を多用した。いつの間にか、共産主義を批判する“反共”が悪に転化するワナが仕掛けられていたのだ。反論封じにこれほど便利な用語はない。

 レッテル張りが得意なのは『都市の論理』の著者として名高い歴史学者、羽仁五郎であった。彼にかかると、「軍備は軍国主義の復活であり、公安警察は戦前の特高の再来であり、まさにファシズムである」となる。

 世界には軍を持たない国家も、公安警察のない国家も存在しないから、例外なしに世界中がファシズム国家である。それでも、当時の過激派は拍手喝采(かっさい)だ。羽仁の書名は「-論理」とせずに、「-扇動」と名付けるべきであった。

 西義之死しても彼の提起した所論がいまに通じることは、本紙連載の「昭和正論座」の論文を読んで分かる。進歩的文化人の後継者は姿を変えてなお生きながらえている。手前みそながら、それを見分ける目を養うに昭和正論座は最適ではないか。
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by sakura4987 | 2009-02-18 13:26

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