★★★ 日本再生ネットワーク 厳選ニュース ★★★

sakura4987.exblog.jp
ブログトップ

◆【すごいぞ日本】最終ファイル 危機の中から(1)世界が取材した町工場



 (産経 2009/3/12)


 黒く機械油が染みこんだ工具類も、材料の鋳物を入れたプラスチックの箱も、同じ場所に、同じように置かれていた。春まだ遠しを思わせる冷たい雨さえもまた、1年前と同じように降っている。

 日本の町工場の砲丸がアトランタ、シドニー、アテネと3大会連続で五輪のメダルを独占していることを知り、埼玉県富士見市の辻谷工業を訪れたのは1年前の冬だった。

 北京五輪でも当然、といったストーリーを頭に描いて辻谷政久さん(76)に取材を始めたとたん、あっさり「北京はやめました」と言われた。

 「たった1人の五輪ボイコット」の大見出しで連載の第1回が掲載されたのは昨年3月31日だが、取材を始めた時点ではまだ、毒入りギョーザ事件も中国政府のチベット弾圧もほとんど話題になっていない。ボイコットなんて、いくらなんでも…と思ったが、辻谷さんの意志は固かった。

 ≪優勝候補「記録なし」≫

 1年ぶりに訪れた町工場で、辻谷さんが灯油ストーブにボッと火をつけながら名刺の束を見せてくれた。記事が載ると真っ先に米テレビ局が「本当に出さないのですか」と取材にきた。以来、次々に訪れた海外メディアの取材関係者の名刺である。米、英、韓国の新聞、スイスとフランスのテレビ、ドイツのラジオ…。2012年にロンドン五輪を開く英国のメディアからは「ロンドンには出してくださいよ」と言われた。

 北京五輪ボイコットは、4年前のサッカーの試合で中国サポーターが見せたむき出しの反日感情がやりきれなかったからだ。「あんなところに私の砲丸は出せない」という職人の意地を大切にした。

 北京で男子砲丸投げ決勝が行われた8月15日夜、自宅で競技結果を見た辻谷さんは顔を曇らせた。シドニー、アテネ両五輪で銀メダルを獲得し、優勝候補の筆頭とされていた米国のアダム・ネルソン選手がファウルを繰り返し、記録なしに終わったからだ。

 「ネルソン選手には気の毒なことをした。でも、職人の意地もあります」

 練習で辻谷さんの砲丸を愛用し、北京にも絶好調で乗り込んだ。それなのにまたも「金」から見放されたのは、本番で辻谷さんの砲丸が使えず、調子を崩してしまったからだという。

 ≪輝きを放つ現場≫

 小さな町工場は去年のままだが、世界も、日本も、この1年で大きく変わっている。昨年9月のリーマン・ブラザーズの破綻(はたん)に端を発した金融危機は、日本の実体経済にも大きな打撃を与え、政治の混迷がそれに拍車をかけた。日本はこの先どうなるのかという重苦しい不安が社会を覆い始めている。

 この危機の時代の最中にあって、「魔法の砲丸」の秘密を何とか再生の契機にしたいと考える人も多いのか、辻谷さんのもとにはいま、全国から講演の依頼が相次いでいる。この連載もまた、辻谷さんの砲丸から出発し、日本のどこがすごいのかを探ってきた。

 ものづくりの技術はもちろん、食の伝統やアニメのような新たな表現の領域に至るまで、輝きを放つ現場や人材はさまざまな分野に存在する。世界に誇り、そして大きな貢献を果たしうる人的、技術的資源をこれほど抱えている国も珍しいのではないか。

 それなのに!と取材班が突き当たる壁はいつも変わらない。この日本の窮状はどうしたことか。大いなる危機の中からもう一度、日本を生かす道を探っていこう。
[PR]
by sakura4987 | 2009-03-14 12:06

毎日の様々なニュースの中から「これは!」というものを保存していきます。


by sakura4987