2009年 06月 12日
(産経 2009/6/11) 東京都議会議員選挙を前に、麻生太郎首相が自民党系候補者全員を訪ね、激励を始めた。笹川堯党総務会長は、都議選で負けて、本選挙(衆院選)で勝つなどあり得ないと述べ、首相の行脚はまさに総選挙と一体だと述べた。 麻生自民党への支持率は、小沢氏の公設秘書逮捕で民主党支持率を上回ったが、小沢氏辞任でまたもや民主党優位となっている。都議一人一人を励まし、その成果をなんとしても総選挙につなげたい気持ちは分からぬでもない。だが、状況が厳しければ厳しいほど重要なのは、本を正すことだ。 陽明学の泰斗、山田方谷は、「事の外に立つ」重要性を指摘した。政治においても経済においても、指導者は事の外に立たなければならず、「事の内」に屈してはならない。姿勢を正し、心を正して大方針を立てよということだ。 大嵐が襲来するとき、30センチ眼前の壁や50センチ先の穴にばかり気をとられていては、到底、突破できない。手傷を負うのは避けられないにしても、手傷などでは自民党保守は斃(たお)れないことを示すための手を、いま、この苦しいときにこそ打っておかなければならない。そのための大方針だ。 大方針は、国家、国民、国益のための長期展望である。政権政党であり続けた自民党が、長年、この大戦略を示し得なかったために、国際社会における日本の地位は低下し続けた。 日本がどれほど異常な国か、国連安全保障理事会が論じている対北朝鮮制裁決議案をもとに見てみる。周知のように、日本は米国とともに、北朝鮮向けの船の貨物検査と金融制裁を柱とした制裁決議を主張したが、国連安保理が日本の主張に沿った制裁決議を採択した場合、日本は不名誉の渕(ふち)に沈むだろう。このままでは、肝心のわが国自衛隊は、事実上、貨物検査に参加できないからだ。理由は、自衛隊が、一連のばかばかしくも非現実的な法律によってがんじがらめに縛られているからだ。 海上自衛隊の貨物検査実施の法的根拠は「周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律」(船舶検査活動法)である。同法第5条によって、海自に許されている船舶検査活動は7段階に分類される。(1)船舶航行の監視(2)船舶への呼びかけや信号弾によって、自己の存在を知らしめる(3)相手船舶の船籍、目的港、積み荷などの照会(4)相手船舶に停止を求め、船長ら同意の上で相手方に乗り移り積み荷検査をする(5)船長に目的地変更を求める(6)説得する。 以上の措置が効果を発揮しない場合は(7)追尾する-とされた。 どの場面でも自衛隊には強制力がない。武力行使も許されない。許されているのは、ひたすら工作船などにまとわりつくことだ。 万が一、相手船舶が攻撃をしてくれば、自衛隊も武器を使用できるが、その場合も、正当防衛のケースなどを除いて「人に危害を加えてはならない」ために、工作員や海賊であっても、負傷させたり、死なせてはならない。これでは、他国の軍艦と一緒に、臨検などできない。日本はまともな国家かと問われ、他国から批判され、侮られてしまうだろう。 ◇ 中国の北朝鮮擁護ゆえに、国連決議に貨物検査が含まれるかどうかは、予断できない。仮に、中国が態度を変えて加盟国に貨物検査が義務化されたとする。その場合、貨物検査活動の制約以前に、日本は活動に参加できないのだ。なぜなら、先の7段階の活動にしても、現状が日本の平和と安全に重要な影響を与える「周辺事態」であると認定されることが大前提だからだ。 持てる力を行使できない自衛隊は、では、現実にどんな活動をしているのか。PSI(大量破壊兵器拡散防止構想)を見てみよう。 PSIは2003年、米国のブッシュ政権が提案した。北朝鮮船舶への貨物検査活動とも密接につながる大量破壊兵器拡散防止の取り組みである。現在90以上の国々がPSIを支持し、参加、協力中だ。 07年10月には、PSI海上阻止訓練「Pacific Shield 07」を日本が主催した。その際の海自の活動を平成20年度版の防衛白書はこう記した。「自衛隊は統合訓練として、洋上における海・空自による捜索・発見・追尾及び海自による乗船、立入検査並びに陸自による港における容疑物質の除染などに関する展示訓練を行(った)」 軍事評論家でシンクタンク、国家基本問題研究所の潮匡人氏が語る。 「政府説明をよく読んでください。日本の活動はパネル展示にとどまったということです」 なんと驚くべき実態だろうか。 持てる力を決して発揮させない仕組み。日本の国家としての力をシロアリのように食いつぶす仕組み。それが憲法9条であり、集団的自衛権に関する内閣法制局の虚(うつ)ろな解釈、さらには、机上の空論の現行防衛法制である。 こうした事態が見えてくるからこそ、国民は訝(いぶか)るのだ。日本国は大丈夫か、と。そして切望するのだ。個々の都議への異例の応援もよいが、首相には日本の行く末について大戦略を考えてほしいと。 首相が決断すべきことは、ほかでもない。安倍晋三元首相が始めた集団的自衛権の行使を禁じた政府解釈の見直しである。幸いにも「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」がすでに立派な報告書を出している。同報告書を、来る衆院選で自民党の公約として掲げるのがよい。それが日本の新たな大戦略を切望する国民の期待に応える道であり、自民党の危機を救う道でもある。 2009年 06月 12日
(産経 2009/6/9) http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090609/plc0906091948018-n1.htm 自民党は9日、国防関係合同部会を開き、政府が今年末に予定する新「防衛計画の大綱」(2010~14年度)の閣議決定に向けた提言を了承した。北朝鮮の核実験や長距離弾道ミサイル発射を受け巡航ミサイルなどによる「敵ミサイル基地攻撃能力保有」を求めた。 ただ、周辺国の懸念に配慮し、国防部会小委員会での合意内容にはなかった「予防的先制攻撃は行わない」との文言を追加。日本を攻撃する相手国の能力と意図が明白にならない限り敵基地攻撃はしないと、専守防衛の趣旨を強調する意図だ。 集団的自衛権行使を禁じる政府の憲法解釈については、国会の同意を得て見直すべきだとした。 提言は近く麻生太郎首相や浜田靖一防衛相に手渡される予定だが、浜田氏は9日の記者会見で提言について「勇ましい話だが、慎重に取り扱いたい」と述べた。 2009年 06月 11日
(産経 2009/6/5) ≪■就任8カ月見るものなし≫ この8カ月の麻生太郎首相の政治を見ていると、首相の資質、見識を疑うようなことばかりだ。小沢一郎氏の“西松事件”をきっかけに、政党支持率は逆転して自民党が民主党を上回ることになった。麻生首相はひと息ついた趣だったが、この間「次の衆院比例代表はどちらに投票するか」の設問では、常に民主が自民を10ポイントも上回っていた。このことは国民の政治改革願望がずっと続いていたことを物語る。しかし小沢氏の金権体質は許せないとの感情が勝って自民党支持を押し上げた。小沢氏が辞任し、鳩山由紀夫氏が新代表に選出されたとたん、政党支持率は逆転した。 小沢氏は代表代行として依然として選挙を仕切る役割を担っているのに、国民の支持は民主党に戻ってきた。国民は小沢氏の不始末は司直の問題であって政治の本質ではないと見抜いているのだ。麻生氏も含めて自民党は「カネと政治」の問題を衝(つ)くだけで態勢挽回(ばんかい)が図れるとでも思っているのか。実に情けない政党だ。 麻生内閣が8カ月やるならその間に歴史に残る大改革をやる時間はあった。安倍内閣に始まる公務員制度改革だ。この改革を出発点に渡辺喜美前行革担当相がまとめた公務員制度改革基本法は昨年の国会で自民、民主両党の合意の下で成立した。麻生内閣はそれを仕上げる使命があったのだ。 ≪■二転三転した人事局長職≫ 国民の公務員に対する不満は極めて強い。最大の行政犯罪といわれる年金記録問題。3000人に及ぶC型肝炎患者の発生。農水省の事故米処理のインチキ。どれをとっても日本の官僚内閣制の耐用年数が尽きたと思わせるものばかりだ。現行制度の結果、天下り法人は4600、天下り官僚は2万8000人も存在する。 最近も公用車運転業務を談合で天下り法人に入札させていたとして、公正取引委員会が国土交通省に改善要求を出し、法人10社に30億円の課徴金を科した。この種の事件はここ二、三十年枚挙にいとまがない。官僚の肩叩(たた)きシステムを廃止しない限り、未来永劫(えいごう)続くのだ。 このため「基本法」は(1)キャリア制度をやめ、肩叩きもやめて定年まで勤められるようにする。そのためには年功序列の賃金制度を改める。(2)各省の幹部人事を内閣人事局に一元化して、省益至上主義を排除する-と決めた。 明治26年に高等文官試験が導入されて以来、116年ぶりの大改革だ。官僚は大反発したが、法案は衆院480人中450人の賛成で成立したのである。国会は国権の最高機関(憲法41条)であり、これに行政府の官僚が反対することは許されない。 ところが、賃金体系の権限を内閣人事局に移すことについて谷公士人事院総裁は反対し、首相が招集した会議をボイコットした。さらに基本法では「内閣人事局長は官房副長官級のポストを新設する」とあるのに漆間巌官房副長官は麻生首相に「ポストの新設は行革に反する」と進言し、自らが兼務する方針を打ち出させた。官房副長官は各省の政策を調整する大きな権限を持つ。この上に各省の幹部人事を左右する権限を持たせれば、確実に総理大臣を上回る権限を持つことになる。 甘利明行革担当相はさすがにまずいと思ったのだろう。「新設の国家戦略スタッフ(約30人)の一人に内閣人事局長を兼務させる」との妥協案を示した。ところが今度は宮崎礼壹法制局長官が「スタッフがラインの局長職を兼務することはできない」と妥協案をつぶし、漆間官房副長官の兼務に持って行ったのである。スタッフとラインの兼務などは防衛省では堂々と行われている。こうして安倍、福田2代にわたって仕上げてきた基本法は完全に骨抜きにされた。 ≪■「無責任体制」も糺されず≫ 麻生首相はこの官僚制度の改革を「官僚バッシング」と断定しているが、勤務評定や昇給、降格なしに、どうすれば組織が活性化し、無責任体制が糺(ただ)されるのか。 一方で首相は厚生労働省を二分割する案に一旦は乗った。官僚は次官ポストが一つふえて喜ぶ。とすればなぜ内閣人事局長ポストの新設にあれほど反対したのか。2代にわたって進めてきたのは官僚制度(システム)の改革であって、首相が議論しようとしたのは器の話に過ぎない。首相は議論のすり替えをやろうとしたのだ。 政府は2009年度予算に15・4兆円の補正をつけてきた。このうち各省や独立行政法人の「施設整備費」を見ると、当初予算6500億円に対して、何と2兆9000億円も積み増している。この施設整備費というのは官僚の大好きなハコモノだ。職業能力開発協会に7000億円の基金を設けたが、この協会は傘下団体とともに会計検査院から「コンパニオン代など3500万円の不正支出があった」と指摘された団体だ。 鳩山民主党代表は(1)脱官僚(2)地域主権-を打ち出している。統治機構を変えるべき時期に、麻生首相の感度は恐ろしく鈍い。 2009年 06月 11日
テキ屋の寅さんが見たら地団駄(じたんだ)を踏んで悔しがっただろう。なにしろ、おフランスの老舗宝石店が、5千円もするダイヤモンドの原石を5千人の善男善女にタダでばらまきましょうと口上しただけで、たちまち銀座をぐるりと一周する大行列ができたのだから。 もちろん、そこは海千山千の商売人。長い行列を耐え忍んだ末にもらったダイヤをリングに加工してもらうと、あら不思議。5万円也の加工料をとられる。ペンダントだと7万円もするそうな。 こうして新聞やテレビにタダで取り上げられるのも計算のうちだったろう。損して得とれとはまさにこのことだ。最近、えげつなさの足りない関西商人は大いに見習ってほしい。 国道やダムなどを造る費用である国直轄公共事業費の地方負担金の明細もえげつないものだった。なにしろ国交省の出先機関に勤めているお役人の給料だけでなく、退職金や共済年金まで地方自治体につけを回していたのだから恐れ入る。日々の生活費だけでなく、勝手に老後のお土産までつけていたというわけだ。 地方負担金の仕組みを「ぼったくりバーだ」と言い放った橋下徹大阪府知事には座布団2枚差し上げたい。さすがに金子一義国交相は「そういうものは見直す。請求しない」と見直しを表明したが、お役所の無駄は至るところにある。 特に国の出先機関の庁舎建て替えは目に余る。まだまだ使える建物を壊して高層ビルにする必要は毛頭ないし、そのカネを地方に出させるとは悪代官も真っ青だ。国がまずやるべきことは、徹底した出先機関のスリム化のはずだが、麻生太郎首相の覚悟が見えてこない。ダイヤならぬ定額給付金のバラマキより行革断行こそ総選挙の売り物になるはずなのだが…。 2009年 06月 11日
(産経 2009/6/5) http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090605/crm0906051353016-n1.htm お年寄りの女性から財布をひったくったとして、現行犯逮捕された愛媛県警の巡査部長、野村尚史容疑者(29)を取り押さえた岡山市内の私立高校に通う高校生が5日、高校で報道陣の取材に応じ「世も末だと思った」と話した。 取り押さえたのは3年生と1年生の男子生徒。自転車で帰宅途中、女性の悲鳴を聞いて野村容疑者を追い掛け、自転車で挟み込むように取り押さえた。生徒は「捕まえる側の警察官が捕まるなんて信じられない」とあきれた様子だった。 2009年 06月 09日
(聯合-韓国語 2009/6/1) http://www.yonhapnews.co.kr/international/2009/06/01/0602000000AKR20090601072100009.HTML 第二次大戦中に起きた「バターン死の行進」生存者に藤崎一郎駐米日本大使が30日、直接日本政府を代表してお詫びの意思を表明した。 藤崎大使はこの日、アメリカテキサス州のサンアントニオで開かれた「全米バターン・コレヒドール防衛兵の会」に出てお詫びを表明した、とサンアントニオエクスプレスニュースが伝えた。毎年開かれるこの集会は今年、64回目にあたり予定された最後の生存者集会だった。 この日の集会ではバターン死の行進の生存者73人が出席して藤崎大使のお詫びを傾聴した。全員、米陸軍または陸軍航空隊所属だった人々は当時、戦争捕虜で幾多の死傷者を出した死の行進で生き残った人々だ。 藤崎大使のお詫び表明に対して参席者たちは歓迎したが、批判的雰囲気も強かった。彼らは謝罪があまり遅れたうえに、アメリカ人を直接明示して謝ったのでもなく、日本政府全体から出たようでもないという反応だった。 藤崎大使はこの席で「日本の前総理が重ねて言ってきたように、日本国民は過去を返り見て歴史の教訓を学ばなければならないという事実を肝に銘じなければならない」と言った。彼は「我が国がバターン半島とコレヒドール島で悲劇的体験をした戦争捕虜を含む多くの人々におびただしい被害と苦痛を与えたことに心からお詫びを表明します」と言った。 藤崎大使のこの演説には、戦争捕虜の親戚を含んだ400~500人ほどの参席者の中で半分程度が起立拍手を送った。サンアントニオに居住する参戦勇士のジョー・アレキサンダーは「遂に私たちが願った謝罪を引き出した」と満足した。しかし、一部の参席者が藤崎大使と握手して一緒に写真を撮るうちに、他の人々はぴりぴりした発言を忘れなかった。 戦争捕虜だったハーシェル・バウシーは藤崎大使に「あなたの謝罪」を受け入れない、と言ってあの時多くの人々が経験した苦難と虐待は本当にひどいものだったと明らかにした。戦争捕虜で生き残ったトニー・モントーヤも藤崎大使の演説に真正性があったように見えなかったと言った。彼は「この若い人は(当時の)惨状についてまともに知らない」と言った。9年間の軍隊生活のうち3年を戦争捕虜として過ごしたアビー・エイブラハム(95)はしかし、今はここから進まなければならない時だと言った。彼は日本はもうアメリカの友邦だと強調した。 バターン死の行進は1942年にあった。当時フィリピンを占領していた日本軍は7万8千人の捕虜をルソン島バターン半島で6日間捕虜たちを徒歩行進させて収容所に移動させた。捕虜たちは大部分、食物と水を飲むことができずに医療措置も受けられなかったし、一部は刀にさされたり斬首にあったりした。アメリカ空軍は当時、この行進で1万1千名の捕虜が死んだと明らかにしている。死の行進を行った7万8千名の捕虜の中で米軍が1万2千名、フィリピン軍が6万6千名だった。 2009年 06月 09日
(産経 2009/6/5) ≪■就任8カ月見るものなし≫ この8カ月の麻生太郎首相の政治を見ていると、首相の資質、見識を疑うようなことばかりだ。小沢一郎氏の“西松事件”をきっかけに、政党支持率は逆転して自民党が民主党を上回ることになった。麻生首相はひと息ついた趣だったが、この間「次の衆院比例代表はどちらに投票するか」の設問では、常に民主が自民を10ポイントも上回っていた。このことは国民の政治改革願望がずっと続いていたことを物語る。しかし小沢氏の金権体質は許せないとの感情が勝って自民党支持を押し上げた。小沢氏が辞任し、鳩山由紀夫氏が新代表に選出されたとたん、政党支持率は逆転した。 小沢氏は代表代行として依然として選挙を仕切る役割を担っているのに、国民の支持は民主党に戻ってきた。国民は小沢氏の不始末は司直の問題であって政治の本質ではないと見抜いているのだ。麻生氏も含めて自民党は「カネと政治」の問題を衝(つ)くだけで態勢挽回(ばんかい)が図れるとでも思っているのか。実に情けない政党だ。 麻生内閣が8カ月やるならその間に歴史に残る大改革をやる時間はあった。安倍内閣に始まる公務員制度改革だ。この改革を出発点に渡辺喜美前行革担当相がまとめた公務員制度改革基本法は昨年の国会で自民、民主両党の合意の下で成立した。麻生内閣はそれを仕上げる使命があったのだ。 ≪■二転三転した人事局長職≫ 国民の公務員に対する不満は極めて強い。最大の行政犯罪といわれる年金記録問題。3000人に及ぶC型肝炎患者の発生。農水省の事故米処理のインチキ。どれをとっても日本の官僚内閣制の耐用年数が尽きたと思わせるものばかりだ。現行制度の結果、天下り法人は4600、天下り官僚は2万8000人も存在する。 最近も公用車運転業務を談合で天下り法人に入札させていたとして、公正取引委員会が国土交通省に改善要求を出し、法人10社に30億円の課徴金を科した。この種の事件はここ二、三十年枚挙にいとまがない。官僚の肩叩(たた)きシステムを廃止しない限り、未来永劫(えいごう)続くのだ。 このため「基本法」は(1)キャリア制度をやめ、肩叩きもやめて定年まで勤められるようにする。そのためには年功序列の賃金制度を改める。(2)各省の幹部人事を内閣人事局に一元化して、省益至上主義を排除する-と決めた。 明治26年に高等文官試験が導入されて以来、116年ぶりの大改革だ。官僚は大反発したが、法案は衆院480人中450人の賛成で成立したのである。国会は国権の最高機関(憲法41条)であり、これに行政府の官僚が反対することは許されない。 ところが、賃金体系の権限を内閣人事局に移すことについて谷公士人事院総裁は反対し、首相が招集した会議をボイコットした。さらに基本法では「内閣人事局長は官房副長官級のポストを新設する」とあるのに漆間巌官房副長官は麻生首相に「ポストの新設は行革に反する」と進言し、自らが兼務する方針を打ち出させた。官房副長官は各省の政策を調整する大きな権限を持つ。この上に各省の幹部人事を左右する権限を持たせれば、確実に総理大臣を上回る権限を持つことになる。 甘利明行革担当相はさすがにまずいと思ったのだろう。「新設の国家戦略スタッフ(約30人)の一人に内閣人事局長を兼務させる」との妥協案を示した。ところが今度は宮崎礼壹法制局長官が「スタッフがラインの局長職を兼務することはできない」と妥協案をつぶし、漆間官房副長官の兼務に持って行ったのである。スタッフとラインの兼務などは防衛省では堂々と行われている。こうして安倍、福田2代にわたって仕上げてきた基本法は完全に骨抜きにされた。 ≪■「無責任体制」も糺されず≫ 麻生首相はこの官僚制度の改革を「官僚バッシング」と断定しているが、勤務評定や昇給、降格なしに、どうすれば組織が活性化し、無責任体制が糺(ただ)されるのか。 一方で首相は厚生労働省を二分割する案に一旦は乗った。官僚は次官ポストが一つふえて喜ぶ。とすればなぜ内閣人事局長ポストの新設にあれほど反対したのか。2代にわたって進めてきたのは官僚制度(システム)の改革であって、首相が議論しようとしたのは器の話に過ぎない。首相は議論のすり替えをやろうとしたのだ。 政府は2009年度予算に15・4兆円の補正をつけてきた。このうち各省や独立行政法人の「施設整備費」を見ると、当初予算6500億円に対して、何と2兆9000億円も積み増している。この施設整備費というのは官僚の大好きなハコモノだ。職業能力開発協会に7000億円の基金を設けたが、この協会は傘下団体とともに会計検査院から「コンパニオン代など3500万円の不正支出があった」と指摘された団体だ。 鳩山民主党代表は(1)脱官僚(2)地域主権-を打ち出している。統治機構を変えるべき時期に、麻生首相の感度は恐ろしく鈍い。 2009年 06月 09日
テキ屋の寅さんが見たら地団駄(じたんだ)を踏んで悔しがっただろう。なにしろ、おフランスの老舗宝石店が、5千円もするダイヤモンドの原石を5千人の善男善女にタダでばらまきましょうと口上しただけで、たちまち銀座をぐるりと一周する大行列ができたのだから。 もちろん、そこは海千山千の商売人。長い行列を耐え忍んだ末にもらったダイヤをリングに加工してもらうと、あら不思議。5万円也の加工料をとられる。ペンダントだと7万円もするそうな。 こうして新聞やテレビにタダで取り上げられるのも計算のうちだったろう。損して得とれとはまさにこのことだ。最近、えげつなさの足りない関西商人は大いに見習ってほしい。 国道やダムなどを造る費用である国直轄公共事業費の地方負担金の明細もえげつないものだった。なにしろ国交省の出先機関に勤めているお役人の給料だけでなく、退職金や共済年金まで地方自治体につけを回していたのだから恐れ入る。日々の生活費だけでなく、勝手に老後のお土産までつけていたというわけだ。 地方負担金の仕組みを「ぼったくりバーだ」と言い放った橋下徹大阪府知事には座布団2枚差し上げたい。さすがに金子一義国交相は「そういうものは見直す。請求しない」と見直しを表明したが、お役所の無駄は至るところにある。 特に国の出先機関の庁舎建て替えは目に余る。まだまだ使える建物を壊して高層ビルにする必要は毛頭ないし、そのカネを地方に出させるとは悪代官も真っ青だ。国がまずやるべきことは、徹底した出先機関のスリム化のはずだが、麻生太郎首相の覚悟が見えてこない。ダイヤならぬ定額給付金のバラマキより行革断行こそ総選挙の売り物になるはずなのだが…。 2009年 06月 09日
(東洋経済 2009/5/31) http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/9a58338325adaf768339178267173962/page/1/ 藤末健三 民主党参議院議員 5月の上旬にアメリカの国会議員招聘制度で米国首都ワシントンDCに行き、15名の米下院議員と議論をしてきた。景気対策から北朝鮮問題、核廃絶など論点は多岐にわたったが、議論の中で最も印象に残ったのが、ある西海岸選出の下院議員が述べた 「中国は仲間である」という言葉だった。 筆者は4年前にワシントンDCのCSISという外交問題の研究機関に1週間ほど滞在したが、そのとき中国はある意味仮想敵国のような扱いであった。 それがまったく雰囲気が変わっていた。 筆者は、そこで中国の軍備拡大のスピードや国際ルールから外れた資源確保への取り組み、そしていまだ民主主義国家ではないことなどを説明したが、あまりにも中国のリスク情報が入っていないことに驚いた。 逆に中国との経済的な相互依存の拡大、中国政府の柔軟性の向上など中国のよい面の情報だけが入っている感じだった。 なぜそのようなことになっているのか? ワシントン駐在の外交官や民間人、そして米連邦議会議員に話を聴いたが、その理由は「中国は戦略的にアメリカとのパイプを作っている」ということだった。 ■北京での共産党幹部との会話 ここで思い出したのが今から数年前になるが、北京の共産党本部を訪問したときである。 共産党の国際局が対応をしてくれたが、歓談をする中で対米関係の話になり、アメリカとのコネクションの重要性を議論した。そこで先方は「毎年40人の米連邦議会議員を北京に招聘している」という話をしていた。 その言葉が非常に印象に残っていたので、早速帰国し外務省に実態がどうなっているかを尋ねた。外務省からは「アメリカの議員は訪中を規制されており、訪中できないはずである」との回答だった。その回答に「中国共産党がこちらをけん制するために話を大きくしていたのか」と当時は納得したものの、結局は中国共産党幹部の話が正しかったことが、ワシントンDCで判明したのだった。 ついでではあるが、他国の外国政治家の招聘制度を調べたが、オーストラリアも日本の政治家を毎年数人招聘しており、シンガポールは「招聘された政治家は好きなときにシンガポールをフルサポート付きで訪問できる」招聘制度を持っている。 ひるがえって、日本の米連邦議会議員の招聘制度はどんどん予算を削られており年間5,6人の政治家しか日本に招待できていない(日米摩擦の時は20人近くの米恋歩議会議員を招聘していたと聞く)。このような招聘制度をもっと充実させることも日本に必要ではないかとつくづく考えさせられた。 ■ケント・カルダー教授と朝河貫一教授の指摘 さて、『日米同盟の静かなる危機』(邦訳 ウェッジ刊)を書いたジョンホプキンス大学のケント・E・カルダー教授は、同書において、「中国が草の根レベルでアメリカ議会に入っている」ことを指摘している。 332ページには「中国の最近の政治戦略は、ホワイトハウスの方ばかりを見ている日本と正反対でグラスルーツ重視である」とあり、胡錦濤・共産党総書記が訪米したときにワシントン滞在が1日半でその他はマイクロソフトやボーイングに行くなど財界と民間との交流に力点を置いていることを紹介している。 また、100年前に『日本の禍機』を記した朝河貫一(歴史学者 1873-1948)も、その中で、 「支那の政治家は常に米国との関係をもっとも重視せしが」(講談社学術文庫178ページ) と中国のアメリカ重視を説き、 一方で日本がアメリカを誤解している以下のような点を紹介している(同156~161ページ) 1.「米国政治の腐敗」 2.「貧富の隔絶」 3.「民衆の趣味の低きこと」 4.「米国の教育は全く実利的にして児童に倫理すら教えず」 5.「米国の学問にいたるまでもまたひとえに処世のためにして、真理の探究に切ならず」 本書を読んだとき筆者は驚愕した。100年前と日本はなにも変わっていないのではないかと。特にアメリカに対する誤解は今でもそのまま当てはめることができる。 ■草の根の選挙応援 また、ひとつ重要なことが「選挙の応援」だ。 昼食時に話をした議員は「年間活動に100万ドル(約1億円)、選挙には400万ドル(4億円)かかる(※テレビのCM費が大きいとのこと)。ボランティアの支援が重要だ。」と言っていた。 その議員はアジア系移民であったため、アジア系のボランティアの応援が非常に多いと言っていた。当然のことながらアジア系移民でいちばん数が多いのが中国系の移民であり、おそらく相当の影響力を持っているのではないかと推察している。 たとえば、2007年に米下院が「従軍慰安婦問題で日本政府に謝罪を求める決議」を行ったが、その決議案を提出したのはマイク・ホンダ議員というカリフォルニア州選出の日系議員だった。産経新聞(2007年3月15日)によると中国系組織など2006年の下院選挙では献金の約3割が中国系からだったと指摘されている。 筆者自身、政治家であるが、やはり選挙を助けてくれる方々は本当にありがたいもので、利権などを離れ、なにか支援者の希望があれば応えたくなるものだと思う。 現地の駐在員に「日系企業はアメリカ国内に工場を数多く建設している。そこで働かれているアメリカ人に対して、日本への理解を深めてもらえるよう働き掛けることはできないか?」ということを聞いた。しかしながら、彼は「日本企業は政治的なものに関与することを基本的に避ける。それはアメリカでも同じである」という回答だった。それが日系企業の対応なのかもしれない。 古いデータになるが経済産業省「2001年海外事業活動調査」によれば,2000年度末に日系企業は北米で78万人の雇用を作っている。 ■総合的な日米のリンクを 今回、感じたのが「外交のチャネル(回線)を外務省だけに頼ることのリスク」だ。 「核軍縮の議論をしたくて」個別にいろいろな議員と会いたいと外務省を通じて申し出をしたが、私が無名であることもあり、目的とする議員にはまったく会うことができなかった。後で、自分で開拓すべきだったと悔やんだが、後の祭りだ。 やはり議員が自らアメリカの議員と付き合いをしなければならない。とくに参議院議員は6年間という長期で、解散がないという安定した身分を保証されている。議員外交を行うには最適な身分だ。参議院で独自の外国議員の招聘制度を持ったり、議員派遣制度を整備するなど外交機能を強化する必要があろう。特に米中に対しては。 また、政治外交は外務省、通商は経済産業省・JETRO(貿易振興機構)と分かれているのも大きなマイナスになっていると感じる。政治と経済の一体化は経済のグローバル化とともにどんどん進展している。今のようなセクショナリズムで分断された体制ではより効果的な活動はできないだろう。 ドイツは、政府と政党がワシントンDCに事務所を設置することを支援している。 日本も総合的に日米政治のリンクを強化する取り組む時期に来ている。 2009年 05月 29日
(NHK 2009/5/28) http://www3.nhk.or.jp/news/k10013268181000.html# 中央省庁が所管する法人などに天下りした国家公務員は、平成19年度で2万5000人余りに上り、これらの法人には補助金などとして、国から12兆円余りが交付されていたことが民主党の調査でわかりました。 それによりますと、平成19年度に特殊法人や独立行政法人、公益法人などに再就職した中央省庁の国家公務員は2万5245人で、このうち1万614人が取締役などの役職に就いていたことがわかったということです。 さらに、国家公務員が再就職した4504の法人に対し、補助金や事業の発注・委託費などの形で、国から12兆1334億円余りが交付されていたことが明らかになったということです。 これを各省庁別に見てみますと、▽財務省が2兆8134億円、▽文部科学省が2兆7894億円などとなっており、▽経済産業省、▽防衛省、▽国土交通省がそれぞれ1兆円を超えています。 これについて直嶋政策調査会長は記者会見で、「民主党が政権を取った際には天下りを禁止し、国から法人に交付する税金は減らしていく」と述べており、民主党は今後、天下り先への補助金などの内容を精査し、政府・与党を追及していく考えです。 < 前のページ次のページ >
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