2008年 05月 30日
(産経 2008/5/17) ◆立憲君主による「聖断」 先月29日の「昭和の日」から今月3日の「憲法記念日」まで、昭和の日本について考える機会が多かった。例えば先の大戦で日本がポツダム宣言を受諾、つまり「終戦」の決定をした昭和天皇の「ご聖断」である。 昭和20年8月9日深夜、「御前会議」として開かれた最高戦争指導会議で、ポツダム宣言受け入れ論と戦争続行論とが3対3と、真っ二つに割れた。 それなら、受け入れ派で「議長役」だった鈴木貫太郎首相が決断すべきところである。だがこの老宰相はそうはせず、天皇の前に進み出た。「まことに異例で畏(おそ)れ多いことでございますが、ご聖断を拝しまして…」と訴える。 昭和天皇は「それなら言おう」と口を開き「(東郷茂徳)外務大臣の意見に同意である」と述べられた。受諾すべしだった。 それでもなお「国体護持」に関する連合国側の回答の受け止め方で政府内の意見はまとまらない。14日に再度開かれた「御前会議」で天皇が「私自身はいかになろうとも」と受諾を表明されたのを受けようやく閣議決定した。 多数決では「戦争続行」の軍を納得させることはできないという鈴木らの「作戦」だった。しかしあくまで「異例」であった。 当時の大日本帝国憲法によれば天皇は国家の統治者であった。だが一方、第55条で「国務各大臣は天皇を補弼(ほひつ)し其(そ)の責に任す」とあり、実際の政治決定は政府が行い、責任もとるということになっていた。昭和天皇ご自身も、周囲に対し「政府が決めたことを天皇が勝手に容喙(ようかい)し干渉し、これを掣肘(せいちゅう)することは許されぬ」と述べられている。天皇は政府に対し意見は述べても、命令はできないというのがそのお考えだった。 その意味で、「ご聖断」は立憲君主の道をはずれていたとも言える。昭和天皇も戦後になって、この時と二・二六事件の時の2回だけ「立憲君主」の枠をはみ出していたことを認められている。 ◆国益優先という常識 しかし「御前会議」で戦争続行派も「憲法違反だ」と異を唱えることはなかった。戦後においても「違憲だからあの決定は無効だ」などという声は皆無だろう。 決定し責任をとるべき首相がそれを放棄し、いわばゲタを預けたためだから、もとより「違憲」とはいえないとの説もある。 だが何よりも「憲法は国民の命や財産など国益を守るためにあり国益の方が優先する」という「常識」がまだ共有されていたからと見るべきだ。日本が壊滅状態となるのを防ぐためには憲法の枠をはみ出しても仕方ない。それが鈴木らの「決断」だった。 それから63年近くがたった今、大日本帝国憲法に代わる日本国憲法と日本の国益との間の相克や矛盾は深まる一方だ。昭和22年の施行以来61年もたち、当時は想定しなかった事態が次々と起きてきているのだから当然である。 直近の例でみても、日本の船が公海上で海賊に襲われても、海上自衛隊の護衛艦がこれを撃退することはできない。国会の衆参ねじれで、ガソリン代が上がったり下がったりし、日銀総裁が決まらずに国際的信用を失墜させても二院制という憲法の枠がある以上、やむを得ないのだ。 だが、国益を守る上での憲法の不備がこれほど明らかになっているのに「憲法違反でも国民を守ることを優先していい」とか「憲法を改正すべきだ」といった声は国会にも国民の間に起きてこない。まことに不思議な話だ。 ◆「笑ふべし」との冷徹さ 根底にあるのは、憲法を国益以上に大事なものとしてきた戦後の「唯憲思想」とでも言うべきものだろう。「国は滅んでも憲法を守れたらいい」という倒錯した論理にもなりかねない考えだ。 あの戦争で心身ともに深く傷ついた日本人は、米国の素人の手になる新憲法を「これで永遠に平和に生きることができる」と思いこみ受け入れた。世界でも例をみない「憲法記念日」という祝日が制定され、まるで「聖典」のようになっていった。国民に重いものとしてのしかかり、「憲法は国益のためにある」という常識が忘れ去られてしまったのだ。 しかしそんな中で、ひとりだけこの憲法を突き放していたのが作家の永井荷風だった。新憲法施行の昭和22年5月3日の日記に、こう書いている。 「米人の作りし日本国憲法今日より実施の由。笑ふべし」 恐らく、この憲法が日本のキバを抜き、二度と立ち上がらせないという米国の国益に沿ったものであると見抜いていたのだろう。今の憲法論議に必要なのも、荷風のように憲法を突き放して見る冷徹さのような気がする。 2008年 05月 07日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-04-26/2008042601_02_0.html 運動への不当な干渉に抗議 記者会見で発表 憲法九条の改定に反対し、九条を守り生かす活動をすすめている「九条の会」は二十五日、国会内で記者会見し、同会アピールに賛同する地域・職場・分野別などの「会」が七千を突破したことを明らかにしました。会見では運動への不当な規制・干渉に抗議する事務局見解も発表しました。 「会」結成数は、昨年十一月段階の六千八百一から二百三十八増加し七千三十九になりました。 会見した事務局長の小森陽一・東大教授は、小学校区単位の会づくりを提起した第二回全国交流集会(昨年十一月)以降、地域住民の身近なところで会を広げていくとりくみがすすめられていると指摘。「こうした草の根からの運動を四年近く続けてきたことが、『読売』調査でも改憲反対が多数派になった世論の形成に大きな役割を果たしている。この草の根の活動をいっそう広げたい」と述べました。 また、六月二十一日(岐阜市)と七月十二日(宮崎市)に開く「憲法セミナー」の詳細な内容を紹介しました。 この間、神奈川県箱根町では、地域の「会」が公民館を借りる際、町教育委員会が「九条堅持に偏って主張することは避ける」と条件をつけるなどの事態が起きています。事務局見解では、この事態について「教育委員会による検閲にほかならず、表現の自由、集会の自由に対する明らかな侵害」と批判。 映画「靖国」への助成をめぐる自民党議員の攻撃を含め、見解は「9条改憲をもくろむ勢力のあせりが、権力の側から言論・表現・集会の自由の侵害という形で現れている」と指摘。「憲法をめぐる議論は最も手厚く保障されるべき言論だ」とし、不当な規制や干渉に抗議しました。 2008年 05月 07日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/chiba/news/20080504-OYT8T00628.htm 憲法9条と、武力によらない世界平和について考える「9条世界会議」が4日、千葉市美浜区の幕張メッセで開幕。北アイルランド問題の平和的解決に取り組み、1976年にノーベル平和賞を受賞したマイリード・マグワイア氏らの基調講演が行われた。夜には、趣旨に賛同する加藤登紀子さんやUA(ウーア)さんらのコンサートも行われた。 幕張メッセ前には1万人を超える来場者が殺到し、会場内に入りきれない人が続出。当日券の販売は中止となり、前売り券の払い戻しも行われた。このため、近くにある野外のメッセモールで入場待ちをしていた約1000人を前に、急きょ、マグワイア氏らが追加講演を行う一幕もあった。 マグワイア氏は「9条は全世界にとって重要なもの。紛争などは話し合うことで解決できる」と訴え、「会場に人が入りきらなかったのは、世界中の人が平和を求めているからだ」と熱弁を振るった。会議は5日にシンポジウムなどが行われ、6日に閉幕する。 2008年 03月 27日
(世界日報 2008/3/20) ■国民運動を本格化せよ 国会では、与野党が来年度予算案やガソリン税あるいは日銀総裁人事などをめぐり大もめの状態にある中で、憲法改正問題も浮上してきたようだ。昨年の国民投票法の成立後、いまだに衆参両院で憲法審査会が始動しないのは異常事態だが、ここにきて注目される動きが出てきたからだ。 三月四日、中曽根康弘元首相を会長とする「新憲法制定議員同盟」(改憲同盟)に、民主党から鳩山由紀夫幹事長が顧問、前原誠司、田名部匡省、渡辺秀央の各氏が副会長、松原仁氏が常任幹事に就任した。 与野党が激突する中での民主党幹部の“合流”だけに、政治的な意味合いは大きいといえる。なかでもこれに危機感をあらわにしたのが、日本共産党だ。機関紙「しんぶん赤旗」四日付に、「憲法審査会始動ねらう―議員同盟きょう総会」と題する囲みの警戒記事を載せ、翌五日付の一面トップで、「改憲同盟―自・民で新体制―役員に両党幹事長ら」とのニュース記事を掲載するとともに、四面で「九条の会に対抗―地方拠点作り狙う」との解説記事を載せている。 同紙が特に警戒しているのは、改憲同盟の総会で「拠点となる地方組織づくり」を方針として確認したことのようだ。愛知和男同幹事長が「われわれと正反対の勢力、『九条の会』と称する勢力が、全国に細かく組織作りができておりまして、それに対抗していくにはよほどこちらも地方に拠点を作っていかねばなりません。そこが今後の活動の大きな焦点となる」と述べたことなどを紹介し、「九条の会」を名指しして「対抗」意識をむき出しにした発言は、「焦りの表れ」だと述べている。 だが、この発言こそ、逆に同党の「焦り」を表したものといえよう。何故なら、同党は二〇〇四年一月の第二十三回党大会で採択した「全面改定」綱領で「憲法の全条項の擁護」を打ち出し、以来、「九条の会」の全面支援を通じて、党勢拡大と結び付けた地方の組織化を図ってきたからだ。現在、六千八百前後の多彩な組織が結成されている。その対抗組織(反革命団体)が初めて眼前に表れようとしているのだから、ただごとではないのだろう。 「九条の会」は〇四年六月の発足以来、全国規模での「地域別の会」の結成を呼び掛けるのと併行して、各分野の著名人や活動家らに呼び掛ける「分野別の会」の賛同メンバーを募っている。特徴は、会の中核を党員や同調者が務めて裏方に徹し、表舞台で著名人を立てて賛同者を増やす方法を採っている点だ。 例えば、「映画人九条の会」では山田洋次監督や吉永小百合さんらが賛同・呼び掛け人になっている。「九条科学者の会」では、伏見康治・元日本学術会議会長ら、「音楽九条の会」では、作曲家の池辺晋一郎氏ら、「マスコミ九条の会」では鳥越俊太郎、ジェームズ三木の両氏ら――などだ。 同紙は改憲同盟の総会で、「各党支部や青年会議所などに頼んで拠点になってもらう」(愛知衆院議員)、「各党の府県支部に憲法改正の委員会をつくり、全国的な網を張っていくことが私たちの次の目標。そしてできれば超党派の全国的な国会議員、地方議員の連合の会をできるだけ早期につくりたい」(中曽根元首相)などの発言が相次いだことを問題視している。 憲法改正の実現には、国民の支持が不可欠だ。全国的な国民運動の展開へと発展させるためにも、国会では衆参両院で早く憲法審査会を始動させるべきである。 2008年 03月 12日
(カナロコ 2008/3/3) http://www.kanaloco.jp/localnews/entry/entryxiiifeb0802895/ 平和憲法を守ろうと結成された箱根町の住民団体「箱根九条の会」が町施設を借りる際、グループ名を名乗らずに活動せざるを得なくなっていることが、二日までに分かった。イベント開催で町教育委員会に「九条堅持に偏って主張することは避けること」などと条件を付けられたためで、会の主張を前面に打ち出しにくい状況が生まれている。 メンバーらは、七年ほど前から活動する「核兵器をなくし平和を進める箱根の会」を母体に、二〇〇五年十月に箱根九条の会を立ち上げた。結成時に記念集会を開くため町仙石原文化センターの使用を町教委に申請。チラシにカンパ要請の記述があり、町教委は「営利目的」と判断。カンパの文言削除を条件とした。 さらに、町教委によると、一方的に九条堅持に偏っての主張は避けるという条件も付けた。その理由を「不特定多数を招く催しなので公平・平等の立場で使ってほしいため」と説明している。 同会によると、町教委は護憲を訴えるチラシを配ることも禁止し、チラシの点検を求め、「九条を守るというのは偏った考え。九条の会は政党に類する。一切、九条について参加者に訴えないで」と言ったという。 これに対し、町教委は「事前チェックはしていない」と否定。「一方的な考えを強く主張するのはやめてほしいと伝えたまで」と説明した。 同会は条件をのみ、集会にはプログラムなどだけを持ち込み、九条について語らないことを参加者に説明した。以来、同会名では活動が制限されるとして、箱根の会名で施設を借り続けている。 だが、箱根の会名での催しでも問題が起きた。同会によると、〇六年夏ごろ町社会教育センターに掲示した催しを告知するポスターの「憲法九条が危ない情勢」との記載部分を、同センター側が紙で覆い隠した。当時のセンター所長は「内容が中立ではなかったため」と話している。 隣接する小田原九条の会の場合、〇五年十一月、小田原市の施設で結成集会を開いたが、物品販売をしないことだけが条件で、その後も活動を制限されずに同会名で使用している。市側は「学習の場としての使用ならば問題ない」という。 全国レベルでの九条の会呼び掛け人の一人で作家の澤地久枝さんは「市民を中心に平和を守るのは常識で、色をつけたり閉め出したら民主主義も平和主義もなく、今世紀を生きていく国ではない」と憂えた。九条の会を名乗らないことには「市民運動は緩やかでいい。後ろに下がったのもその団体の判断。ただ、少しずつ勇気を持つことは大事」と話した。 ◆九条の会 2004年6月に井上ひさし、梅原猛、大江健三郎、澤地久枝さんら9人の知識人や文化人を呼び掛け人として結成された護憲団体。同会事務局(東京都千代田区)によると、賛同した各地の「九条の会」は07年11月現在で全国6801団体、県内302団体。 2007年 10月 10日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27794-storytopic-1.html 平和省地球会議沖縄シンポジウムで発言するパネリストら=2日夜、琉球大学 あらゆる紛争を非暴力で解決するために「平和省」設置を目指している市民団体のメンバーらが平和について語る「平和省地球会議・沖縄シンポジウム」(同実行委員会、平和省プロジェクトJUMP主催)が2日夜、西原町の琉球大学で開催された。パネリストらは「世界中に憲法九条があればいい」「活動が違っても平和の会話はつくっていける」などと話し、平和への思いを共有した。 シンポジウムには、ドット・メイヴァー「ピースアライアンス」事務局長=アメリカ、きくちゆみ平和省プロジェクトJUMP代表=千葉県、平良夏芽沖縄平和市民連絡会共同代表=沖縄、荒木汰久治ホクレア号日本人クルー=同=がパネリストで参加した。 きくちさんは身近な平和について説明、平和省設置の目的について「軍事予算はものすごく高い一方で、平和構築予算はゼロ。平和構築こそ予算が必要で、これこそ日本の国際貢献」と訴えた。 平良さんは「今、嘉手納基地は世界中の子供たちを殺すためにある。沖縄は恐怖だと思っている子供たちも多い」と指摘し「私の夢は嘉手納基地をサンダーバード(国際救助隊)基地にすること。夢として持ち続けたい」と平和を望んだ。 ドットさんは、アメリカで草の根運動から始まった平和省設立の活動が活発になっていることを説明し「一人一人ができることは、周囲に平和を作り上げること。二度と戦争が起こらないように」と話した。 2007年 08月 14日
(PJニュース 07/8/11) http://news.livedoor.com/article/detail/3265511/ 扶桑社版「新しい歴史教科書」に「十七条憲法」の要旨が掲載されている。これを引用する。 ①和を尊び、人にさからいそむくことのないようにせよ。 ②仏教をおおいに尊重せよ。 ③天皇のお言葉には、必ずつつしんで従いなさい。 ④役人は人の守るべき道をすべての根本とせよ。 ⑤私利私欲をすて、公平な裁判をせよ。 ⑥悪をこらしめ、善をすすめよ。 ⑦人は各自の任務を果たしなさい。 ⑧役人は朝早く仕事に出て、遅く帰りなさい。 ⑨すべてのことにウソいつわりのない真心を根本とせよ。 ⑩考え方のちがいで人を怒ってはいけない。 ⑪功績があれば賞を、罪をおかしたら罰を、正しくあたえよ。 ⑫地方官は人民から税をむさぼり取ってはいけない。 ⑬役人は各自の職務の内容をよく心得なさい。 ⑭役人は他人をうらやみねたんではならない。 ⑮私心をすてて公の立場に立つのが、君主に仕える者のつとめだ。 ⑯人民を使って物事をさせるのは、いそがしくないときを選べ。 ⑰大切なことはみんなとよく議論して決めなさい。 日本国憲法の改正を考えるのならば、この「十七条憲法」も真剣に検討するべきであろう。重要な6条・9条・14条の原文をあげておこう。 「六に曰く、悪を懲し善を歓むるは、古の良き典なり。ここをもって、人の善を匿すことなく、悪を見てはかならず匡せ。それ諂い詐き者は、国家を覆す利器なり。人民を絶つ鋒剣なり。また佞み媚ぶる者は、上に対しては好みて下の過を説き、下に逢いては上の失を誹謗る。それ、これらの人は、みな君に忠なく、民に仁なし。これ大乱の本なり」 「九に曰く、信はこれ義の本なり。事ごとに信あるべし。それ善悪成敗はかならず信にあり。群臣ともに信あるときは、何事か成らざらん。群臣信なきときは、万事ことごとくに敗れん」 「十四に曰く、群臣百寮、嫉妬あることなかれ。われすでに人を嫉むときは、人またわれを嫉む。嫉妬の患え、その極を知らず。このゆえに、智おのれに勝るときは悦ばず。才おのれに優るときは嫉妬む。ここをもって、五百歳にしていまし今賢に遭うとも、千載にしてひとりの聖を持つこと難し。それ賢聖を得ずば、何をもってか国を治めん」(いずれも引用は、日本の名著「聖徳太子」より) 聖徳太子の十七条憲法は、「和をもって貴しとなし」だけではないのだ。この「新しい歴史教科書」の「考えてみよう」には、十七条の憲法の内容で、現代の日本にも通じると考えられる条文をあげてみよう、という課題がある。憲法改正のためだけでなく、その職務の根本を検討するためにも、大臣各位、国会議員の諸先生、上級公務員と多くの公務員は必ず、そして、日本国民すべてが、一度はこの課題をやってみる必要があるようだ。 2007年 06月 30日
(産経 07/6/30) 日本の国政の場での論議は、年金問題、朝鮮総連問題、慰安婦問題など、皮膚感覚としてはきつく迫る課題に追われているようだ。だが、その余波で国民が選ぶ国家のあり方の骨幹を決める憲法の問題が、ないがしろにされ始めた観がある。 現代の国民の意識や価値観、日本を取り囲む国際情勢、そして主権国家としての本来の均衡などのいずれからみても、少なくとも再考が不可欠となってきた現憲法への前向きな取り組みが、こうした状況下で後退してしまうことは、将来に禍根を残すだろう。 そんな思いから、わが内なる憲法再考の軌跡を改めてたどってみた。 私が日本の憲法への基本的な疑念を感じるようになったのは、その憲法草案を書いたチャールズ・L・ケイディス氏に1981年4月に長時間、インタビューしたときからだった。 同氏は日本を占領したGHQ(連合軍総司令部)の民政局次長だった米陸軍大佐で、法律家でもあり、1946年2月に日本の憲法を起草する実務責任者となった。 基本方針こそ米統合参謀本部やマッカーサー総司令官から与えられたものの、ケイディス氏はかなりの自由裁量権をも得て、二十数人のスタッフを率い、わずか10日足らずのうちに、一気に日本国憲法草案を書き上げた。 とくに第9条は自分自身で書いたという。 憲法起草当時に39歳だった同氏は私が会ったときは75歳だったが、まだ元気にウォール街の法律事務所で働いていた。彼は、憲法をどのように書いたかについての私の数え切れないほどの質問に、びっくりするほどの率直さで答えた。 こちらの印象を総括すれば、日本の憲法はこれほど大ざっぱに、これほど一方的に、これほどあっさりと書かれたのか、というショックだった。 この会見当時、日本側では「憲法を見直す」というような言葉を口にしただけで、「軍国主義者」とか「保守反動」というレッテルを貼られる時代環境だった。 だが、神聖なはずの日本憲法が実は若き米人幕僚たちによってあわただしく作られ、しかも日本人が作ったとして発表されていた、というのだ。だから、そのへんのからくりを正直そうに話してくれたケイディス氏の言葉は、ことさら衝撃的だったのである。 同氏はまず第9条の核心ともされる「交戦権」の禁止について「日本側が削除を提案するよう私はずっと望んでいたのです。なぜなら『交戦権』というのが一体、なにを意味するのか私にはわからなかったからです」と述べて笑うのだった。 彼は交戦権という概念が、単に戦争をする権利というよりも、交戦状態にあるときに生じるさまざまな権利ではないかというふうにいぶかっていたというのだ。 第9条の目的についてはケイディス氏は「日本を永久に武装解除されたままにおくことです」とあっさり答えた。 ところが、上司から渡された黄色い用紙には憲法の簡単な基本点として「日本は自国の安全を維持する手段としての戦争をも放棄する」と記されていた。 だが、同氏は「この点については私は道理に合わないと思い、あえて削除しました」と語った。すべての国は自己保存の固有の自衛権利を有しており、その権利を否定すれば、国家ではなくなると判断したからだという。 ケイディス氏はその自主的な削除を上司のコートニー・ホイットニー民政局長からは当初、反対されたが、最終的には通してしまった。 もしケイディス氏の「一存」がなかったら、自衛隊はできなかっただろう。 第9条第2項の冒頭にある「前項の目的を達するため」という「芦田修正」も、ケイディス氏は「芦田氏に反対はないと告げたら、上官に協議しなくてよいのかと問われたので、その必要はないと答えました」と明かすのだった。 この修正は、後に首相となる芦田均氏らが、第1項の戦争や武力の放棄は国際紛争解決の手段としてのみで、自衛は別だとするための挿入だった。 ケイディス氏はさらに米側が憲法案を日本側首脳に受け入れさせる際、ホイットニー准将が原爆を連想させる「われわれは原子力エネルギーの起こす暖を取っている」との、原爆を連想させる表現で圧力をかけたことにも触れた。 そして、ちょうど頭上をB29爆撃機が飛んでいたため、その言が日本側への威嚇の効果を発揮したことも、淡々と認めたのだった。 いままたすっかり遠くなった日本国憲法の生い立ちだが、現在の憲法問題の持つ重みを考えると、あれこれまた想起されてきたのだった。 2007年 05月 23日
(国を憂い、われとわが身を甘やかすの記) http://abirur.iza.ne.jp/blog/ 本日、憲法改正手続きを定めた国民投票法が成立しました。中身についてはいろいろと不備な点も言われていますが、まずは一歩進みました。 私は平成12年に、衆参両院に憲法調査会が設置されたときの、産経の初代担当記者だったこともあり、感慨深いものがあります。 国民投票法が整備されていなかった点については、当時から多くの人が「国会の怠慢」だと指摘していましたが、率直に言って「まあ、なかなか簡単にはできないだろうなあ」と悲観していました。 やはり一時期、記者としてかかわっていた「昭和の日」も今年、施行されました。世の中の歩みは遅々としているようで、少しずつ確実に変化しているようです。 安倍首相は2期目の任期内での憲法改正を目指しています。これは現時点では見通しは必ずしも明るくないのですが、実際にあと5年経ってみたらどうなっているか分かりませんね。 憲法改正を口にするだけで「ウヨク」だと白眼視されたり、立場によっては更迭されたりしていた時代を考えると隔世の感がありますね。 私を含め、日教組からいかに日本国憲法がすばらしいかというお題目をすり込まれ来た人々も、今はもう大部分が覚醒しているということでしょう。 さて、本日の国会前には、国民投票法に反対する革マル派や中核派、全学連が集結していたことは前のエントリで書きました。 で、私はいつものようにビラを受け取って読んでみたわけですが、相変わらず「日教組」に期待が寄せられています。 左翼過激派からシンパシーを表明され、共闘を呼びかけられる教職員組合っていったい何なのでしょうか。 ●まずは、中核派のビラから引用します。 《(前略)安倍と与党はさらに5月14日にも、参院本会議で可決・成立させようとしている。自治労、日教組を始めとした労働者を先頭にして、激しい怒りを爆発させ、改憲投票法案粉砕、改憲阻止・日帝打倒に総決起しよう。》 「日帝」って、私のパソコンでは一度に変換できません。何を打倒しようというのかよく分かりませんが、教育公務員が先頭なのだそうです。 このビラは機関紙「前進」の宣伝版だそうで、本紙の方を紹介した「今週の紙面」の欄には、「日教組解体狙う教育4法改悪案」という見出しもありました。 中核派は、よほど日教組と仲がいいのでしょうね。 ●で、革マル派のビラをみると、次のようにありました。 《(前略)教員が授業で憲法改悪の危険性を教えることを禁じることなどを狙った「公務員等、教育者の地位利用による国民投票運動の禁止」条項や、組合としてのビラを作成し配布することを禁じることを狙った「公務員の政治的行為の制限」条項--これらは、「最大の護憲勢力」と見なした自治労・日教組や自治労連・全教などの公務員労組による反対運動を「公の利益」の名の下に弾圧することを眼目としたものだ。》 日教組・全教は革マル派からも高く評価されているようです。また、日教組とは関係ありませんが、 ●全国労組交流センターのビラは、全学連の委員長のスピーチを紹介していました。 《(前略)こんな法案に労働者が従う必要なんかないんだと、安倍にガンガン突きつけていくことが展望を切り開いていく。(中略)しかし我々は終わらせない。もっともっと追いつめて団結を拡大する。追いつめているのは私たちなんだということをはっきりさせてたたかおう。月曜日、本会議採決が狙われている。激しい怒りの声を国会に叩きつけることが決定的だ》 …全学連は別に、労働者ではないでしょうに。それに、労働者は超法規的存在だとでも考えているのでしょうか。もっともっと追いつめているって、かなり妄想が入っているようです。 こういうのを読むと、この人たちは通行人にビラを配っているけれども、本当は内部に向けて「やってます」というポーズをつけているだけなんだろうなと感じます。国会前に座り込んでいる教職労働者たちも同じですが。 そんなことを思いながら国会議員会館をうろうろしていると、また彼らによる手紙、ファクス攻撃の跡を目の当たりにしました。 全教は衆院議員に対する「学校教育法、教免法等および地教行法の教育関連3法案の廃案を求める要請」という文書で「この教育関連3法案は、憲法の原則にそむく」「いまでも過労死ラインぎりぎりで働いている教職員は、いっそう長時間・過密労働の状況に」と批判していました。 また、桧山教職員組合は「憲法改悪の策動をやめ、改悪手続き法案の強行を行わないこと」「憲法原則に反して『教育破壊』をもたらす教育改悪三法案の強行を行わないこと」などを求めた決議文を送りつけていました。 いや、まあ個々の教員が本当にこう信じているのならば、宗教と一緒でもう仕方ないと思いますが、こういう文書も、本気で受け取る側の心に響かせようとしているようには感じ取れないのです。なんか組合上部の方針とノルマに従ってやっているだけのような・・・。 2007年 03月 11日
日本大学教授・百地章(撮影・早坂洋祐) ■メディア規制削除など大丈夫か ≪譲歩しすぎの自民党≫ 「憲法改正国民投票法」について、安倍晋三総理は憲法記念日までに成立させるよう自民党に指示したという。 気になるのは法案の内容である。昨年12月14日の与党修正案を見ると、問題点が非常に目につく。というのは、成立を急ぐあまり、自民党が公明党や民主党の要求に対して、次々と譲歩を繰り返してきたためで、特に国民投票運動など、本当にこれで大丈夫なのかと思う。 護憲派は、本音では国会での改憲阻止をあきらめ、国民投票で決着をつけようとしているという。とすれば、彼らが少しでも有利な国民投票運動をと考えるのは自然であろう。 この点、与党修正案では裁判官、検察官、警察官などの国民投票運動まで自由とされ、国家公務員法や地方公務員法の定める「公務員の政治的行為の制限」も適用除外になった。このため、国民投票運動という名の政治活動は自由となり、自治労などの主導のもと、全国で公務員による大々的な憲法改正反対運動が繰り広げられる可能性も出てきた。また、日教組あたりの反対運動を考えれば、公務員や教育者の地位利用なども気になるところだが、これも禁止規定のみで罰則は削除されてしまった。ちなみに、公職選挙法には罰則も存在する。果たしてこれで国民投票の「公正性」は担保されるであろうか。 ≪公正なルール作りを≫ 「全体の奉仕者」たる公務員には、地位の特殊性と職務の公共性から「政治的中立性」が要請される。にもかかわらず、なぜ「政治的行為の制限」が適用除外とされてしまったのか。その理由としては選挙運動と違い、国民投票運動は原則として自由であるべきだなどといったことがあげられる。 確かに国民投票は国民自身が直接「主権」を行使する極めて重要な機会である。しかし「主権の行使」とはいっても、それはむき出しの権力つまり法的な規制を一切受けない「憲法制定権力」の行使とは異なる。あくまで「憲法改正権」という憲法上認められた権限・権利の行使であるから、法的安定性や公正性を確保するために種々の法的制約が課せられる。それゆえ、主権の行使だから無制約な運動を認めよ、などということにはならない。 また、人物を選ぶ選挙と違い、国民投票運動では国の将来を見据えた国民の自由な議論が必要だから制約などすべきでないといった乱暴な意見もある。しかし、自由な議論を保障することと、真の自由を確保するために「公正なルール」を設定することとは別に矛盾しない。もし政治的に中立・公正であるべき公務員が「自由」の名の下に積極的に政治運動にかかわれば、行政の中立性は失われ、国民投票運動の公正性も著しく損なわれよう。それでも良いのか。 ≪テレビの規制は必要≫ もう一点、非常に危険に思われるのは、民主党の主張に押され、メディア規制が完全に削除されてしまったことである。もし、新聞やテレビが連日にわたって、「9条改正は戦争への道」などといった宣伝を繰り返したら、どうなるであろうか。 最高裁のいうとおり、「事実の報道の自由」は憲法で保障されており、その侵害は絶対に許されない。しかし報道の自由も、あくまで国民の「知る権利」に奉仕するために認められたものであって、報道機関に特権を与えたわけではない。となれば、報道各社が社説等で自らの意見を主張するのは自由でも、報道機関としては当然、公平・中立な報道が要請される。それゆえ報道のあり方については何らかの規制が必要である。公職選挙法では虚偽報道や歪曲(わいきょく)報道が禁止され、罰則まで存在するではないか。 それにかつてのTBSのオウム報道、テレビ朝日のダイオキシン報道、さらにNHKの「女性国際戦犯法廷」番組、最近の関西テレビによる「捏造(ねつぞう)」番組等、マスメディアの実態を直視するならば、「報道の自由の尊重」などといったきれい事だけでメディア規制を完全に削除してしまうのは危険である。それどころか最近では捏造番組の再発防止のため、放送法改正の動きさえある。それゆえ、少なくとも影響力のきわめて大きなテレビについては「公平・中立な報道」に努めるよう一定の規制を課すべきである。ちなみにフランスやスイスでも、テレビ・ラジオについては規制をしている。 このままでは、この法案は「憲法改正阻止法」となりかねない。千載に悔いを残さぬよう、自民党内で是非とも再検討を加えていただきたいと思う。 < 前のページ次のページ >
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