2007年 08月 01日
(産経 07/7/20) 2005年2月23日、高野紀元駐韓日本大使がソウル外信記者クラブの昼食会で、竹島(韓国名・独島)問題に関連した質問に答え、「竹島は歴史的にも国際法的にも日本の固有の領土というのが日本の考えである」と述べ、大騒ぎになったことは記憶に新しい。 当時、竹島が所属する島根県の県議会で「竹島の日」条例制定の動きがあり、この話が韓国に伝わって官民挙げて「日本ケシカラン」の雰囲気が高まりつつあった。 高野大使は問われるままに従来の日本の公式立場を説明した。そして、「しかし、この問題では日韓両国の立場が対立しているため、問題が両国関係に悪影響を及ぼさないようお互い冷静に対処すべきだ」と付け加えた。日本大使としては外交的に配慮の行き届いた適切な発言だった。 したがって、この発言はニュースにはならない。ソウル外信クラブを構成する外国メディアのほとんどは当然、聞き流したが、韓国のメディアが飛びついた。「日本大使がソウルのど真ん中で妄言」と非難し、反日感情を煽(あお)った。高野大使の写真が街頭で火あぶりにされ、テロのウワサも流れた。 以後、大使公用車は「日の丸」の国旗をはずして走行し、大使は各種行事への出席中止などの外出を控える事態となった。韓国で繰り返されてきた日本外交”反日受難”の風景である。 この時、高野大使の発言について韓国外務省当局者から「外交官としては洗練されない発言だった。あそこまで具体的に述べる必要はなかったのではないか。日本の方でもそういう反省が出ているようだが」という話を聞いた。 竹島・独島問題について韓国の一部には「韓国が半世紀以上にわたって実効支配しているのだから騒がない方が得策」という考えがある。したがって高野発言にそういう批判が出てもおかしくはない。 しかし日本の方でも高野発言に批判があるとは? 在韓日本大使館筋によるとそれは事実だった。「韓国では反日感情を刺激するような発言は慎むべきだ。質問に対する大使の答えも『従来の日本政府の立場に変わりありません』といった、抽象的な言及で済ませるべきだったとの声が当方でも出ている」というのだった。 あれ以来、大使館では大使以下、竹島発言はタブーになってしまった。”箝口(かんこう)令“に近い。韓国であれだけ話題になったのなら、これを機に日本の主張をさらに伝達すればいいのに、逆に萎縮(いしゅく)してしまった。 ある大使館幹部は「日本大使の発言はできるだけニュースにならないようわれわれは日夜努力している」と苦笑していた。 日本の対韓外交は相変わらず「モノもいわず静かに静かに」というわけだ。(黒田勝弘) ◇ ■竹島を論議する好機だった 一国の大使が自国の公的立場を、任地国で表明できないなどということはあってはならないことだ。外交的配慮とは別問題だ。それを”妄言”として日本非難に動員する韓国マスコミに対しては、日本政府として抗議すべきだろう。 いや、むしろあの機会に、高野発言は国家として当然のことであり、その内容も決して“妄言”ではないことを、竹島領有権問題の歴史的経緯や日本側の主張の根拠とともに、韓国マスコミおよび世論に積極的にアピールすべきだった。 竹島・独島問題で反日感情が盛り上がった2005年以来、筆者(黒田)はタクシーの運転手をはじめ韓国人から「日本が独島を自分のものだという根拠は何か。日本は先進国だからでたらめを言っているはずはない。それなりに理由があるはずだ。韓国政府やマスコミが隠しているかもしれないので、それが知りたい」といった意味の話を何回か聞かされた。 隣国なのに、そして自由な民主主義国なのに、日本の主張が伝わっていないのだ。 歴史教科書や慰安婦問題、靖国神社問題を含め、日韓の懸案について韓国マスコミはいまなお相手の立場や主張を正確に紹介しようとしないが、だからといってあきらめてはいけない。 反日感情を恐れ萎縮していては相互理解など成立しない。 外国では反論し自己主張しないと相手に同意したことになる。 ソウルの日本大使館には公報文化院というのがある。大使館の広報、文化業務を担当し院長は公使だ。本館とはかなり離れたところにあり、スタッフは必要に応じて本館に出かける。 この公報文化院の活動が“歌舞音曲”など文化交流中心で政策広報に弱い。竹島問題をはじめ厳しく微妙な“懸案”で積極的な政策広報をやっている形跡はない。物理的にも担当公使が大使館中枢と離れていては、臨機応変の効果的な政策広報は展開できない。 公報文化院は今、地方都市での日本文化紹介の「ジャパン・ウイーク」が終わり、今度は秋の「日韓交流お祭り」の準備に忙しい。文化への熱中(?)は懸案からの逃避に見える。文化では国際交流基金の「日本文化センター」もある。日本大使館は政策広報に集中してはどうか。 日本外交の事なかれ主義は竹島問題に象徴される。今年2月22日の「竹島の日」に向け、日本政府は問題を島根県に押し込めようとしたフシがある。日本大使館スタッフは韓国側に「あれはローカルの動き」と説明していた。松江での記念式典に出席した地元国会議員たちも、どこからか言い含められたように誰もあいさつに立たなかった。 韓国では日本が竹島問題を「国際司法裁判所の判断に委ねては」と主張(注)してきたことさえほとんど知られていない。韓国はこれを拒否し続けているが、このことなどもっと内外にアピールしていい。 韓国の世論に日本をいかに理解させるか、対立や論争覚悟の“攻めの外交”が求められている。 ◇ (注)日本政府は1954年と1962年に2度、オランダ・ハーグの国際司法裁判所への提訴を韓国に提案したが、韓国は応じていない。日本政府は敗訴の場合、「結果に従う」(小坂善太郎外相答弁)としている。 2006年 09月 17日
http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2006/05/0605j0916-00001.htm 「謝罪、賠償すべき」 米国のレイン・エバンス下院議員(民主党)とクリストファー・スミス下院議員(共和党)が4月に共同で提出した、日本軍「慰安婦」問題に関する決議案が13日、米下院国際関係委員会で審議され、満場一致で可決された。 同決議は、日本政府が ▼日本軍「慰安婦」問題の責任を認め ▼非人間的な犯罪であると教育し ▼再発防止を公式に繰り返し宣言し ▼国連や国際アムネスティの勧告に従うよう求めたもの。 3度目の提出で、専門委員会で審議、可決されたのは初めて。 4月以降、日本政府関係者らのロビー活動によって廃案の危機にあったものの、被害者のハルモニや支援者、在米同胞らの運動により関心が高まっていた。南のメディアでも数多く取り上げられ、日本政府が決議に従うよう求めてきた。 同決議は今後、下院全体の議会で審議される。決議案が共同提出されたこと、専門委員会で満場一致で可決されたことなどから、全体会議でも可決されるだろうと期待が高い。 可決に向け、在米同胞などはインターネットや手紙で議員らに呼びかけを続けている。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆外交当局は直ちに反駁せよ (日本政策研究センター) 9月13日、米議会下院の国際関係委員会(ヘンリー・ハイド委員長)で、いわゆる「慰安婦問題」への対応につき、日本政府を非難する決議案が全会一致で可決された。 それによれば、日本政府は1930年代より第二次世界大戦の間のアジア及び太平洋諸島の占領期間中、政府の公的委嘱と全般にわたる指揮の下、13歳の少女を含む20万人の若い韓国女性を一般家庭から拉致、あるいはかどわかして、集団レイプし、多くを死、あるいは自殺に追いやった、というのである。 その上で、それは20世紀最大の人身売買事件の一つ、とする驚くべき認識が明記されている。 余りの杜撰な事実認識に怒りを通り越して笑ってしまいそうにさえなる決議だが、むろん笑っている場合ではない。彼らはこうした認識の下、日本政府に対し、更に以下のような要求を突きつけているのである。 まず第一は、慰安婦強制連行(原文はsexual enslavement of young woman)の責任を公式に認め、受けいれること。 第二は、現在の及び将来の世代に、この反人道的な恐ろしい罪を教えること。 第三は、慰安婦強制連行はなかったとする主張に、「公式に、強く、繰り返し」反駁すべきこと。 そして第四は、この問題に関する国連、及びアムネスティー・インターナショナルの勧告に従うこと。 島田洋一氏のご教示によれば、この決議案はレイン・エバンス議員(民主党)とクリストファー・スミス議員(共和党)の共同提案になるものだそうだが、このスミス議員と委員長のハイド議員は拉致問題に深い理解を示してきた共和党保守派の代表格であるともいう。 ハイド議員については、その秘書官の韓国シンパぶりがこれまでにも指摘されてきたが、今回もまたそうしたルートでの工作があったということが推測される。 とはいえ、このような保守派の代表格を、敢えてこんな反日的な決議の立て役者にしてしまった日本大使館関係者の無能、不作為責任、あるいは不手際が問われるべきではないか。 これまで、こうした問題に対する大使館関係者の対応は余りにも消極的、かつピント外れだったという。 つまり、この問題に対し、彼らは日本は既にこの問題について責任を認め謝罪しています、というのみで、彼らの主張に関わる事実自体が間違っている、という反論を一切してこなかったというのだ。その結果がこのような決議だというわけだ。 河野談話がある以上、外交当局としてはそれ以上の反論はできない、と彼らはいいたいのかも知れない。 しかし、冒頭に示した決議の誇大妄想ともいうべき認識は、その河野談話さえ驚いて逃げ出してしまうほどのレベルのものなのだ。その杜撰さをどうしてつくことができないのだろうか。 いずれにしても、この決議は下院本会議に上げられ、また上院にも回されることになろう。これに対し、大使館関係者はまさに身体を張ってでも、この動きを阻止するべき義務を負っているのではないか。 というのも、それができなければ、彼らは一体外交の専門家といいつつ何をやっているのだ、との国民の批判から逃れることはできないと思うからだ。 ●在米日本大使館 TEL:0011-202-238-6700 FAX:0011-202-328-2187 ご意見・ご要望用電子メール: ryoji@embjapan.org 領事班FAX:0011-202-328-2184 ●アメリカ合衆国大使館 〒107-8420 東京都港区赤坂1丁目10-5 TEL:03-3224-5000 FAX:03-3589-4235 ●福岡アメリカ領事館 〒810-0052 福岡県福岡市中央区大濠2丁目5―26 TEL:092-751-9331 FAX:092-713-9222 2006年 09月 02日
http://www.business-i.jp/news/sato-page/rasputin/200608310003o.nwc 前回取り上げた、8月16日、北方領土・貝殻島周辺海域においてロシア国境警備艇の銃撃によりカニかご漁船「第31吉進(きっしん)丸」の日本人乗組員1人が死亡した事件を巡る事態は時の経過とともに悪化している。 日本外務省の稚拙な外交技法がロシアから日本がナメられるような状況を作り出している。特にまずいのが武部勤自民党幹事長の訪露だ。 武部幹事長は8月26日午前、モスクワでロシア国境警備庁のムシーヒン副長官と会見したが、このような会見を取り付けたモスクワの日本大使館には戦略的視点が欠如している。 議院内閣制をとる日本において、与党自由民主党の幹事長は非常に重い地位をもつ。小泉総理が元帥ならば、武部幹事長は大将だ。外交の世界では、公的性格の会談でどのレベルの人物と会うかは死活的に重要である。 大将ならば、どのような事情があっても少将以下と会ってはいけない。そのような会見をすると日本国家が格下と相手国にナメられる。武部氏を大将とするならば、国境警備庁の副長官はたかだか大佐だ。 先例も重要だ。2002年1月、モスクワに立ち寄った鈴木宗男衆議院議員はトツキー国境警備庁長官と会見した。当時、国境警備庁長官は閣僚であり、鈴木氏も国務大臣(北海道沖縄開発庁長官)を務めたことがあるので、この会談はバランスがとれていた。 その後、ロシアでは省庁再編があり、05年3月、国境警備庁は連邦保安庁(FSB)傘下の一部局になった。 もし筆者が現在、モスクワの日本大使館に勤務していたならば、武部氏を国境警備庁の副長官に会わせるようなヘマはせず、パトゥルシェフ連邦保安庁長官と会見を取り付け、国境警備庁長官を同席させる。 このようなハイレベルの会見で日本の立場を毅然(きぜん)と伝えることが対露外交のイロハであるが、どうも外務官僚はそのことを忘れてしまったようだ。 モスクワの日本大使館員がクレムリンや連邦保安庁との人脈作りを怠っているからこういうことになるのだ。 外務官僚は「ムシーヒン副長官が実務を取り仕切っているので、幹事長に会っていただくことには大きな意味があります」などと武部氏を言いくるめたと筆者は想像するが、実務家との対応は実務家である外務官僚が行えばよい。 北方領土問題にかかわる案件なのだから駐ロシア日本大使館政務部長の倉井高志公使がきちんと対応すればよい。 武部氏の会見で具体的にどのような成果があったのだろうか。 武部幹事長が「『今回の事件が日露関係全般に悪影響を及ぼさないよう、拘束されている乗組員3人と船体を早く解放してほしい』と伝えた」(読売新聞8月27日)のに対して、「シムーヒン副長官は『乗組員、船体の早期解放に向け、努力したい』と答えた」(同)ということだが、この種の事案では、ロシア側から2週間なり、1カ月なり具体的期限を引き出さなくては意味がない。ロシア的基準では1年でも「早期解放」になる。 ロシア側はモスクワで日本人記者、ロビイストにシグナルを出している。筆者のところにもクレムリン(大統領府)関係者から以下のメッセージが入ってきた。 「『第31吉進丸』は過去に3度も拿捕(だほ)されている。しかも国境警備隊の追跡から高速で何度も逃亡している。吉進丸船長の無遠慮さに国境警備庁がついに堪忍袋の緒を切ったということだ。 通常、警告の銃撃は相応の武器で行われる。また、機関銃ではないし、波の上を走るゴムボートからでもない。通常なら威嚇射撃は違反船の、後ろではなく前から警備船から行われる。だからといって、日本の密漁者たちの行動が正当できるわけはない。 日本の首相が交代するこの時期に、日本漁船拿捕事件を政治目的に利用するために仕組まれた日本側の挑発行為だったという見方も排除されない」 ロシアの諜報(ちょうほう)専門家は今回の漁船拿捕事件についてうがった見方をしている。つまり、日本の謀略専門家が北方領土周辺水域であえて事件を起こし、日本のナショナリズムを刺激する。 総裁候補の政治家がロシアに対して拳を振り上げることで権力基盤の強化を図るというシナリオだ。日本人から見れば荒唐無稽(むけい)だが、ロシア人にはそう見えるのだ。 このような「深読み」が実態に反していることを諜報のプロであるパトゥルシェフ連邦保安庁長官に武部幹事長が伝えれば、日露関係の悪化を防ぐことができた。外務官僚の不作為で日本はまたチャンスを失ってしまった。 2006年 08月 18日
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20060817-OHT1T00017.htm 日ロ外交に精通する新党大地の鈴木宗男衆院議員(58)が16日、今回の拿捕事件について「ロシアとの信頼関係を失った日本外務省の責任は重い」と最近の日本の外交姿勢を痛烈に批判した。 宗男氏の怒りは収まらない。「密漁の非は認めなければならない。だが、ロシアの警備隊が丸腰の民間人に銃撃するのも悪い。ロシアの行為は日本を信用していない証拠だ」とまくし立てた。 信用失墜の原因を「外務省が02年に私も含め、佐藤優氏(外務省元主任分析官=46)などロシアに強い人材を排除したこと」と指摘。 以前は「青年交流」の名目でロシア警備局の幹部を日本に招待し、意見交換に努めたが、現在はほとんど機能していないという。 さらに昨年の国会質問で対決し、この日、ロシア側に抗議した外務省の原田親仁欧州局長の名を挙げ「ロシアに弱みを握られている人物が強く言えるはずがない。局長、課長級の人事を刷新するべき」と批判。 「対ロ外交はこの数年で進歩したか? 私は後退しか知らない」とこき下ろした。 また漁船が密漁したカニを巡り、両国で激しい争いがあることも指摘。宗男氏は「ロシアはカニを日本に売れば大きな利益になるのを知っている。以前から密漁には厳しいが、最近は乱獲による水産資源の枯渇も重なり、その傾向が強くなっているのではないか」と語った。 2006年 08月 12日
日本からの対外的な発信はますます重要となってきた。日本の実情を国際社会に向けて正確に説明し、あわせて意見をも明確に述べることは常に重要である。 中国などから日本の現実とは異なる「軍国主義復活」というような非難が増すこのごろ、日本からの正しい反論はまさに基本的な国益にかかわる不可欠な作業となる。 この点で外務省管轄下の日本国際問題研究所(JIIA)が今春から始めた英文での「JIIAコメンタリー」は時宜を得た発信だと思った。 ワシントン在勤の私のところにも電子メールで送信されるし、同研究所のウェブサイトで読むこともできる。そのコメンタリーは英語の論文の形で定期に発信される。 ところがその論文のいくつかを読んで、びっくり仰天した。日本の政府与党や多数派の考え方を危険として一方的に断罪し、中国などの日本攻撃をそのまま正しいかのように位置づける論旨なのだ。 5月記載分の「日本はいかに中国を想像し、自国を見るか」という題の論文をみよう。冒頭に以下の記述がある。 「(外国の)日本ウオッチャーたちはますます日本の対中政策を愚かで挑発的、独善、不当だとみなし、中日関係の悪化を日本のせいだと非難している。 しかし日本国内では日本がナショナリスティックで軍国主義的でタカ派的だと(諸外国で)認識されていることへの意識がほとんどない」 ワシントンでの中国に詳しい日本ウオッチャーは大多数がいまの日中間の緊迫を「中国の対決的姿勢」や「日中両国の戦略利害の衝突」「中国の反日の国是」に帰する。 しかも同論文が述べる「日本を軍国主義的だとみる国際認識」など捏造(ねつぞう)である。 BBC放送の昨年末の国際世論調査では全世界33カ国のうち31カ国の国民が「世界に最もよい影響を与えている国」として日本を筆頭にあげた。例外は中韓両国だけだった。国際問題研究所の対外発信はまったく事実に反する主張から出発するのだ。 同論文には以下の記述もある。 「『中国は脅威だ。なぜならそれは中国だからだ』というのが日本の国家安全保障識者間の基本的な前提のようだ」 「日本は過去の侵略に長年、沈黙を保ってきたが、小泉首相の靖国への立場にも過去の帝国主義的侵略への反省欠如が指摘される」 いずれも事実に反する暴論といえよう。 この論文はいまの日本で多数派の意見といえる日本の安全保障面での「普通の国」らしい方向への動きを「タカ派的ナショナリスト」の危険な策動と断じ、非難することが主眼となっている。 その英語の文章は靖国神社の参拝支持を「靖国カルト」と評するような偏向言語に満ちている。カルトとはオウム真理教のような狂信的宗教集団を意味する断罪言葉である。 同論文には日本の現実派の思考を「反歴史的想像」と呼び、戦後の日本国民の戦争観を「記憶喪失症」と断ずるなど、全体として米欧の左派系や中国の日本たたきに頻繁に使われる扇情的、情緒的なののしり言葉があまりに多い。この点では「反日」と呼べる論文なのである。 元国連大使の外務官僚だった佐藤行雄氏を理事長とする日本国際問題研究所は日本政府の補助金で運営される公的機関である。その対外発信は日本の政府や与党、さらには国民多数派の公式見解とみなされがちである。 この英文コメンタリーの論文は「筆者自身の見解」とされてはいるが、佐藤理事長は対外発信の意図を「日本自身や国際問題への日本の思考」を広く知らせることだと述べている。 この論文の筆者の名をみて、さらに仰天すると同時に、ある面、納得した。 国際問題研究所の英文編集長の玉本偉氏だというのだ。玉本氏は在住の長い米国のその筋では知る人ぞ知る、日本政府の対外政策をたたいてきた過激な左派学者である。 2003年のワシントンでのセミナーで「北朝鮮の拉致問題というのはすでに解決ずみであり、日本側は対外強攻策の口実にしているだけだ」とか「日本の自衛隊はイラクに派遣されるべきでなく、また派遣は絶対に実現しない」などと断言するのを私もまのあたりに聞いた。 その玉本氏はいま国際問題研究所の対外発信の筆者だけでなく編集責任者だというのだ。 4月分の論文では麻生太郎外相らが中国の民主主義不在を批判することを取り上げ、「日本の民主主義発見」と題し、日本がいま対中外交で民主主義の価値を説くことを「発見」だとちゃかしていた。 現在の日本の外交や安保の根本を否定するような極端な意見の持ち主に日本の対外発信を任せる理由はなんなのか。この一稿の結びを佐藤理事長への公開質問状としたい。 2006年 06月 20日
◆【一筆多論】論説副委員長・矢島誠司 明治二年に創設された外務省は、当時、不平等条約などをかかえ、外交が国益に直結する時代だったため、最重要官庁の地位を与えられた。重要官庁であることはいまも変わっていない。外務省には優秀な人材が集まっている。国益を思う外務官僚も少なくない。しかし、組織となると、なぜか国益を守る気迫が伝わってこない。不思議である。 外務省のことを考えながら、外務省は国や国益を守る務めをする省-という意味で、米国ばりに「国務省」と名前を変えたらどうかと言いたくなった。周知の通り、米国の外務省にあたる官庁は、デパートメント(省)・オブ・ステート(国)で国務省と呼ばれる。別に米国追従を勧めようというのではない。外務省は「外のこと」のみを考える官庁ではなく、あくまで「国のこと」を第一に考える省であってほしいと願うからだ。 中国はいま、東シナ海の日中の中間線付近で、石油・天然ガスなどの海底資源開発を活発に進め、海洋国家・日本の権益を脅かすという深刻な事態をもたらしている。 中国はまた、東シナ海だけでなく太平洋にまで進出し、沖ノ鳥島を含むわが国の排他的経済水域(EEZ)で違法な海洋調査を繰り返している。潜水艦の航路調査などの軍事目的もあるとされ、日米同盟や台湾の安全に重大な脅威を与えている。 さらに、日本の固有の領土である尖閣諸島についても、一九七〇年代になってから突如として領有権を主張し始め、わが国の領土まで脅かし続けている。 政府・外務省は、こうした中国の国際法違反、日中合意違反の行動に対し、これまでも外交ルートを通じ、繰り返し抗議をしてきたとしているが、どこまで効果があっただろうか。実際は、中国に無視され続けたというのが実情ではないか。 中国政府は無視どころか、日本政府が遅まきながら今月七日から中間線の日本側水域で海底構造調査を開始したところ、王毅外務次官(次期駐日大使)が、「日本が一方的な行動に出た」と逆に強く抗議してきた。「一方的」なのは中国の側なのにである。 中国は、一九六〇年代末に国連アジア極東経済開発委員会(ECAFE)が実施した東シナ海の海洋学術調査で、石油・天然ガスの埋蔵の可能性が判明した後になって、尖閣諸島は中国の領土だと主張し始め、日本からの抗議などどこ吹く風とばかり、日中間でEEZの境界線が画定していない東シナ海での資源開発を着々と進めてきた。 それに対し、日本政府は、民間企業から出されていた現地の鉱業権申請を四十年も留保し、本格的調査すらしてこなかった。国連海洋法条約に、海洋の境界が未画定の場合は、当事国間で「合意を危うくし妨げないためのあらゆる努力を払う」という規定があり、外交的配慮が必要だったからだという。 しかし、政府内からも「要は中国と事を荒立てるのは得策ではないという外務省の事なかれ主義に過ぎない。外務省に国益意識があるのだろうか」という批判が聞かれる。 それに比べ、海洋調査に関する中国政府のこの数十年間の長期戦略的「あくどさ」には感銘すら覚える。覇権主義的な姿勢は遺憾だが、これぞ主権国家という観がある。日本政府は学ばなければなるまい。 平成十四年十一月に首相の諮問委員会がまとめた「21世紀日本外交の基本戦略」は、日本は「国益追求より無原則に国際協調を優先させるきらいがあった」と指摘し、今後の外交戦略の基礎を「国益」に置くよう勧告したが、外務省は以って瞑すべしである。 2006年 06月 19日
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060611i101.htm ◆外務省の防諜強化策-佐藤 優 (ビジネスアイ 06/6/15) http://www.business-i.jp/news/sato-page/rasputin/200606150002o.nwc ■疑問残る穴の多いマニュアル 02年5月6日未明、中華人民共和国上海市で日本総領事館員(電信官)が女性問題をネタに秘密情報の提供を求められ自殺した事件を受け、外務省の防諜(ぼうちょう)強化策の全容を11日付読売新聞が報じた。 上海総領事館員自殺事件については、読売新聞が総領事にあてた遺書、夫人にあてた遺書、さらに、外国人死亡証の死亡理由に「仕事の重圧」と記載されていた(外務省はそのような記載はないと否定)などのスクープを連発している。 恐らく、国会が閉会した後に、より衝撃的な情報を読売新聞が掲載することになるだろう。 外務省幹部の特命で、外務官僚が読売新聞のネタ元を調査しているようであるが、つまらないことにエネルギーを消費しない方がよい。「泥棒を捕らえてみればわが子なり」ということになり、ブーメランが外務省幹部に戻ってくる危険性がある。 外務省が国民に行わなくてはならないことは、情報漏洩(ろうえい)の「犯人探し」ではなく、総領事館員自殺事件の真相を明らかにすることと、当時の川口順子外務大臣と竹内行夫事務次官の責任を明確にすることだ。 川口-竹内体制が電信官の自殺を総理官邸に報告しないと決断したことは明らかに誤りで、そのため日本政府が中国に対して毅然(きぜん)たる対応をとることができずに国益を損傷した。 竹内氏は現在も外務省顧問をつとめているが、一刻も早く辞任することが国益に貢献する。 さて、電信官自殺事件を受けて外務省が対策マニュアルを作成したのは良いことだ。だが、このようなマニュアルの内容が表に出ることがあってはならない。 積極諜報と防諜は矛と盾の関係にあり、常に追い駆けっこをする宿命だ。マニュアルの内容が公開されると、日本外交官をスパイ活動で活用しようとする側は、その裏をかく工作を考える。 特に「米政府機関の研修を踏まえ、研修資料を充実させる」という情報漏洩は問題だ。 カウンターインテリジェンス(防諜)で、どの国と協力しているかということは、絶対に表に出してはならない内容である。 インテリジェンスの世界には「サード・パーティー・ルール」という確立されたおきてがある。このおきては、インテリジェンスに関する事項について、第三者に情報を提供する場合、当該情報をもっている機関の了承を事前に明示的に得た上で行うという内容だ。 「サード・パーティー・ルール」を守ることのできない組織はこの世界で相手にされない。日本の外務省はアメリカ政府に対して、アメリカの政府機関で研修を受けることについて、日本のマスコミで報道されると事前に了承を得たのであろうか。 そもそもインテリジェンス研修に関する協力は、この世界で最も秘匿度の高い話だ。それが外部に漏れるなどというのは論外だ。「米政府機関の研修を踏まえ」という情報の漏洩だけをとっても国際情報統括官が引責すべき性格の話だ。 さらに制度面について、「工作を受けた職員で正しく報告した者には人事上の配慮をする。(秘密漏洩がない場合は原則として処分せず、秘密漏洩があった場合でも、報告で漏洩拡大を防いだ点を配慮)」としているが、これは実にとんまな規定だ。 この規定を素直に読めば「秘密漏洩があった場合は処分する」ということだ。これでは潜在敵国の諜報機関から工作をかけられている外交官は処分を恐れて絶対に報告しない。 秘密漏洩があった場合でも「漏洩していない」と言い張る。このような状況を防ぐために、性悪説に基づく防諜体制を組み立てるべきだ。 もし、内部調査で情報漏洩が発覚した場合には、地位、財産、名誉のすべてを失うような仕組みを作ることだ。 「ハニートラップ(異性を用いた甘いわな)」についてもピントがずれている。魅力的な女性が近づいてきたら、誰だって警戒する。セックスを用いた工作は、「ハニートラップ」よりも、男女間のトラブルや本気の恋愛に工作機関が関与した場合の方が大きな成果をあげる。 ここでは紙幅の関係で十分に論じることができないので、興味のある読者は18日発売の『新潮45』7月号に掲載される拙稿「美人スパイのセックス工作」を参照していただきたい。 他にも宗教や正義感・良心に訴えて協力者を獲得する工作もある。外務省のマニュアルは穴だらけで、これでは近未来に電信官自殺事件よりも深刻な事件が生じるのではないかと不安を覚える。 2006年 06月 19日
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060611i101.htm 中国・上海の日本総領事館員が中国情報当局から機密情報の提供を強要されたとの遺書を残して自殺した事件を受け、外務省がまとめた諜報(ちょうほう)工作対応強化策の全容が10日、明らかになった。 甘い対策や、政府内での事件報告のまずさに批判が出ていることを踏まえ、工作を受けた場合、複数ルートで直ちに上司に報告するよう義務付け、機密が漏えいしても正直に報告すれば人事上の配慮をすることを明記した。諜報対策研修の受講者を3倍に増やし、在外公館などでの盗聴防止も徹底する。 外務省はすでに省内の主要幹部と在外公館に強化策を伝達し、諜報工作に揺さぶられない強い組織作りを目指すとしている。 対応強化策は、意識面、制度面、物理面を三本柱として多角的な対策を打ち出し、「特に上海での事案を踏まえ、職員への諜報工作に組織としての対応を強化する」と強調している。 本省や在外公館の職員が諜報工作を受けた場合の対応については、個人でトラブルを抱え込んで事態を悪化させないよう、「必ず組織として対処する」「複数のルートで直ちに上司らに報告、組織として情報を共有する」との基本的な対処ルールを「大臣訓令」で明確にした。 工作を受けた職員が処分を恐れて報告しない事態を避けるため、正直に報告した職員には「人事上の配慮」をするとした。 具体的には、〈1〉情報の漏えいがない場合は処分しない〈2〉情報の漏えいがあっても、報告によって漏えい拡大を防げた点を配慮する ――としている。直属の上司に報告しづらい場合も考慮し、全職員を対象とした電話による相談窓口も設置した。 諜報工作対策に関する研修の強化では、対象者を昨年度の約420人から今年度は約1200人に増やした。これまでは主に在外公館に赴任する直前の職員を対象にしていたが、本省の定期的な研修でも取り上げる。 研修マニュアルの内容も更新し、旧ソ連などで行われていた女性工作員による「ハニートラップ」(甘いわな)対策として、「親しく接近してくる異性に注意する」などと明記した。 首相や外相が海外で宿泊するホテルでは、従業員が工作員である可能性もあるとして、「部屋に鍵をかけていても、書類を置いて長時間部屋を空けない」「セーフティーボックスも安全ではない」などの具体例も挙げている。 また、在外公館の現地採用職員が諜報工作を行う可能性を考慮し、機密情報を扱う部署に近づけないようにする「別室化」を徹底する。 2006年 06月 09日
http://blogs.yahoo.co.jp/karyudo111/MYBLOG/yblog.html 《中国に媚びて「国会質問」に圧力をかけた『外務省』》 (週刊新潮 2006・6/8号 中国に媚びて「国会質問」に圧力をかけた『外務省』より抜粋 ) 外務省チャイナスクールとは一体どこの国の省庁であろうか。日本の国益を無視し、北京政府の顔色ばかり窺うその姿勢は日本の省庁とは思えない。無国籍化した官僚の集まりのようだ。 ~中国の意向に沿った条約~ だが、それでも外務省は泉氏に圧力を掛けていた。「質問した直後に2回、外務省の担当者が来た。"日中友好の架け橋に なる事業ですから、そこはよく御配慮下さい" と言われました」と、泉氏は言う。 「中国のODAに対しては、国民世論はかなり厳しい目を向けている。しかし、ODAをこれだけ精査しているときに、遺棄化学兵器に関してはこれだけドンブリ勘定になっている。 これほど大きな事業なのに、非常に小さな今の担当室に調査を任せている。引継書が発見されたのであれば、その内容について精査するのは当然です。お金を出して、施設もすべて作った後で、実は日本が遺棄した兵器はありませんでした、と言うのでは許されない」 そもそも日本が、遺棄化学兵器処理の義務を負うようになったのは、平成7年9月に批准した化学兵器禁止条約による。 同条約は「遺棄化学兵器」について「1925年1月1日以降に、いずれかの国が、他の国の領域内に当該他の国の同意を得ることなく遺棄した化学兵器」と定義し、他国に遺棄した国は、すべての化学兵器を10年以内に廃棄する義務を負い、その為に必要な資金・技術・施設等をすべて提供しなければならないと定めている。 さらに平成11年7月、日本は中国と覚書を交わし、「両国政府は(中略)中華人民共和国国内に大量の旧日本軍の遺棄化学兵器が存在していることを確認」し「遺棄した化学兵器の廃棄を行う」ことを約束したのである。 「条約を批准する際の、外務省の対応が杜撰だった」と語るのは、条約批准に関わった外務省関係者。 「もともと遺棄化学兵器の項目は、条約案に入ってなかった。しかし、西側諸国は、中国にも条約を批准させるために遺棄兵器の項目を入れる事にした。中国は、平成2年頃から処理費用の負担を日本に求めており中国の意向に沿った形の条約になったのです。 これを当時の村山富市首相と河野洋平外相が承認した。 しかし問題は、中国で確認された化学兵器を、すべて遺棄されたものと認めたことです。兵器引継書の存在が言われていたにも拘わらず全て日本の責任で処理すると決めてしまったのです」 それだけに、水間氏が発掘した引継書は、日本の負担を軽減する上で重要な意味を持つ。何故なら、そこには化学兵器を引き渡した事実が記載されているからだ。 その文章を分析した、旧日本軍に詳しい自衛隊OBはこう語る。「100%断言は出来ませんが、引継書の中身を見る限り、化学兵器と思われるものがいくつか含まれています。たとえば "代用弾" という記述が何ヶ所かありました。 私が過去に見たことのある旧軍の資料の中で、"代用弾" を化学兵器の隠語として使っていたケースがあったので、同じ表記をしていることは十分考えられます。 また、"緑弾" という表記がありましたが、"緑" が催涙弾の旧軍での名称である "みどり剤" を示す可能性がある。 資料収集を行い、ご在命旧軍関係者に確認するなりして、精査する価値は十分にあるます」 ~亡国の徒と化した外務省チャイナスクール~ 水間氏がこの引継書を発見した発端は、全国シベリア抑留者補償協議会(全抑協)の元会長。故・斉藤六郎氏の手記の巻末に書かれた、氏所有の資料一覧に目を留めたことだった。 水間氏は語る。 「そこには『兵器引継目録(鉄砲、弾薬、器材、機甲、燃料)』とありました。そこで何とかこの資料の現物を見たいと考え、未亡人にアピールし続けたところ、漸く3月中旬に閲覧する事が叶ったのです」 こうした資料は、斉藤氏が旧ソ連から持ち帰り、山形県にある全抑協の史料館に保管していたものだった。引継書は今も史料館に眠っている。 水間氏は、コピーを取って持ち帰った。「これらの資料は、北支那方面軍、中支を示す第六方面軍、華南地区の師団、直轄師団と、かなりの部分を網羅するものでした」(水間氏) おそらく、中国にある化学兵器は、旧日本軍から引き渡された当時の、国民党軍か政府軍が、国共内戦に敗れ台湾に潰走した際に遺棄したものと思われる。 先の自衛隊OBは語る。 「防衛庁の調査では、当時、90%の兵器が引き渡されていて、残りの10%は、日本軍が遺棄したものと思われる。そうした点を調査することなしに、外務省は、すべて日本軍が遺棄したという前提で費用を負担しようとしている」 だが、さらに驚くべきことに、外務省は化学兵器禁止条約を拡大解釈して、より傷口を深めているのである。 外務省は、旧日本軍の化学兵器として、びらん剤(マスタード、ルイサイト)、窒息剤(ホスゲン)、血液剤(シアン化水素)、くしゃみ剤(嘔吐剤=ジェフルシアニアルシン、ジェフニルウロロアルシン)、催涙剤(クロロアセトフェノン)、発煙剤(トリクロロアルシン)の6種類を規定し、これらを処理するとしている。 ところが、 「化学兵器禁止条約で規定されているのは、びらん剤、窒息剤、血液剤それにサリンやVXなどの神経剤迄。くしゃみ剤や催涙剤、発煙剤は、条約で化学兵器として規定されていないのです。催涙剤などは、欧米で暴動を鎮圧する際に、警官隊が使用しているくらいですからね。 ところが日本は、すべてを自己負担で処理すると言っている。これは日中の二国間協議で決められたものなのです」(先の外務省関係者) 「これまで外務省が中国で回収した兵器のうち、実に90%が "有毒"と称する発煙筒なのです。これはそもそも、化学兵器禁止条約で処理を義務づけられている化学兵器ではありません。 にも拘わらず、外務省は莫大な資金を負担しようとしている。もはや、反国家的な犯罪といわざるを得ない」 外務省は、「議員に圧力をかけたことはない。引継書については精査することが必要」と回答。 麻生太郎外相の事務所は、間の抜けた反応である。「そういった資料が出たことを大臣は承知しています」 先にも述べたが、化学兵器の処理には気の遠くなるような金がかかる。そこまで中国に出血大サービスして中国に媚びる必要があるのか。 「将来にわたって日本から引き出せる遺棄化学兵器の処理費は、いまや中国にとって有望な金ヅルになっている。ODAの減額など、痛くも、痒くもないでしょう」(外務省関係者) 言うまでもなく、そうした費用は国民の税金で賄われる。外務官僚は、「日中友好」の美名のもと、亡国の徒と化したのだ。 2006年 05月 29日
日本が自らの海洋権益を守る上で重大な法制上の欠陥を抱えていることをご存じだろうか。 海洋権益とは自国の排他的経済水域(EEZ)での漁業や鉱物資源を優先的に利用できる主権的権利を指す。それが侵害されても日本は取り締まる規定をもっていない。この結果、みすみす権益を失いつつあるのが現実の姿だ。 平成十六年七月、海上保安庁の巡視船は竹島の西北西約四二キロの日本のEEZ内で、韓国海洋調査船によるワイヤを曳航(えいこう)しての調査を発見した。 自国のEEZ内での海洋の科学的調査に対し、国連海洋法条約は事前申請などを義務付けている。巡視船は「事前申請のない調査は認められない」と中止要求を行った。 外務省は外交ルートで韓国の調査活動は海洋法条約違反と申し入れた。だが、韓国側は自国EEZであり、事前申請の必要はないと一蹴(いっしゅう)して調査を続行した。 外務省は韓国の調査を把握する都度、抗議したという。 しかし、韓国は日本の抗議にもかかわらず、過去四年間、日本のEEZを含む竹島周辺海域での海洋調査を四回実施した。一方で日本は過去三十年間、この海域の調査を一度も行っていない。 日本がなんらかの対抗措置を取る意思を示していたら、「韓国の海」にするような既成事実を作ることにはならなかっただろう。 だが、外務省は四年連続の海洋調査の事実すら海保に伝えなかった。海保が知ったのは四月十七日谷内正太郎外務事務次官が記者会見で明らかにしたからという。 なぜ、こうした事態になったのか。国連海洋法条約が発効した平成八年七月の前にさかのぼる。このとき、政府内では発効に合わせ、自国のEEZを法制面でいかに守るかという論議を行った。 海保は「日本の主権的権利を侵害する違法行為をどう取り締まるのか」と提起した。国内法で取り締まる権限がなければ、主権的権利は画餅(がべい)に帰すと判断したからだ。 だが、外務省は周辺国を刺激すべきでないと取り締まり規定に難色を示し、押し切った。 「EEZ及び大陸棚に関する法律」の「海洋の調査」には「わが国の法令を適用する」が盛り込まれたが、この問題に関するわが国の法令は存在していない。違法な調査への取り締まりを国は放棄したといえる。 一方、韓国の海洋科学調査法は「(外国が)許可なしに海洋調査を行う嫌疑がある時、関係機関の長は停船、検索、拿捕(だほ)、その他必要な命令や措置を行える」としている。 中国の領海法も、違反した外国船を「排除する権利」行使をうたっている。 ほとんどの国は自らの主権的権利をいかに守るかに腐心している。 ところが日本は自らの権益を国を挙げて守ろうとしていないだけでなく、守るための有効な手だてがないのである。取り締まり規定を持たない海保は中止や退去要請を繰り返すしかない。 力で押せば、無力な日本は譲るとわかったからこそ、韓国は先月、竹島周辺海域での日本の海洋調査を実力で阻止しようとしたのだろう。 実は日本の欠陥はこれにとどまらない。EEZどころか領海内ですら無害でない活動を禁止、処罰する法はない。 領海内の無害でない活動に対して、必要な措置をとることを認める国際法ですら、日本国内では適用されない。主権を守ろうとしない国柄になってしまったのである。 憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義」に自国の安全と生存を委ねたことで、自立心が失われてしまったのだろうか。 < 前のページ次のページ >
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