◆機能不全の人権理事会 (世界日報 2009/4/16)
▼米紙ニューヨーク・タイムズ
外交努力を一生懸命重ねることを軽蔑し、さらに、それよりほんのわずかだが余計に国連を軽蔑したブッシュ前政権は、大いなる機能不全に陥っている国連人権理事会について、かかわりを拒否する選択をした。
これに対しオバマ政権は、人権理事会の理事国に立候補することを決定している。そのことは、国際社会が持て余すこの組織を健全にするために絶好の機会となるかもしれないが、健全にするのは易しいことではない。
人権理事会はたびたび、しかも容赦なくイスラエルを非難している。しかしスーダン西部ダルフールでの大量虐殺や、ジンバブエでのムガベ大統領による残忍な犯罪に関しては手加減をしており、それは皮肉であり恥ずべきことである。
人権理事会は先月、パキスタンが提案した、宗教の冒涜に反対する分別のない決議を承認した。この決議は、検閲や、宗教を信じない者への当局による迫害を正当化するのに安易に利用される恐れがある。
人権理事会の弱点は、国連が抱えるより大きな問題の不可分の要素になっている。理事国は、自国の政策が批判されるリスクを避けるため、「国家主権の尊重」を盾に、互いの行き過ぎた政策にお墨付きを与えることに躍起になっている。そして人権理事会は、あまりにも多くの他の国連機関と同様に、理事国の割り当てを、長所や実績ではなく、地域ブロックごとの政治に基づいて行っている。
その結果、いずれも現在の理事国であるサウジアラビア、エジプト、キューバといった国々が、日常的に自国民の権利を侵害しながら、一方で他国の人権状況を裁いているのだ。
米国は来月の人権理事会の理事国選挙で、間違いなく理事国に選ばれるだろう。米国が立候補している欧米ブロックには、ほかに立候補している国がないからだ。しかし理事国になれば、それで十分というわけではない。
外交の成否は、妥協点を見いだし、意見の一致を得ることに懸かっている。しかし「静かな外交」は、しばしば奏功しないことがある。その場合には、米国は、意見が言えない抑圧の犠牲者に成り代わって、自ら声を大にして、はっきりと発言しなければならない。