◆【主張】集団的自衛権 首相は行使の決断を下せ
(産経 2009/4/25)
日本の安全を守り、国際平和に名実ともに協力するために麻生太郎首相は、一つの決断を下すべき時である。それは集団的自衛権の行使は憲法上許されないとする政府解釈を見直すことだ。
奇妙な解釈といわれながらも歴代政権は、内閣法制局や野党の抵抗で、見直しを棚上げしてきた。だが、現状のままでは北朝鮮の弾道ミサイルに有効に対処することはおぼつかない。米国向けのミサイルは集団的自衛権の行使に抵触するからといって、迎撃しないという国をどの国が本気になって共同防衛するというのか。
海賊抑止などへの国際共同行動も、憲法解釈から実力行使には参加できないと言い張る国であっていいのかである。こうした歴史的な懸案を一挙に解決することができる立場に麻生首相がいることを強調しておきたい。
首相は23日、安倍晋三首相(当時)の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」で座長を務めた柳井俊二元駐米大使と会談した。
懇談会は昨年6月、現在の解釈では新たな安全保障の重要問題に適切に対処できず、解釈を変更すべきだと明記した報告書を福田康夫首相(当時)に提出した。
具体的には、(1)公海における米軍艦艇の防護(2)米国を狙った弾道ミサイルの迎撃(3)国際的な平和活動における武器使用(4)国連平和維持活動(PKO)での他国部隊の後方支援-の4類型は集団的自衛権を行使することで実施できるとした。だが、福田氏は解釈変更を否定して報告書を封印した。
麻生首相は柳井氏から説明を聞いたあと、「(報告書を)勉強しなければならないと思っている」と述べた。首相は就任直後の昨年9月、「基本的に解釈を変えるべきものだと言ってきた」と語ったことがある。現行解釈の問題点をわかっているのだろう。再議論だけにとどまってはなるまい。決断こそが求められている。
そもそも「わが国は国際法上、集団的自衛権を有するが、憲法上その行使は許されない」とする解釈に無理がある。日米安保条約前文は「(両国は)個別的又は集団的自衛の固有の権利を有している」とうたっている。昭和35年当時、岸信介首相は「一切の集団的自衛権を持たないということは言い過ぎ」と述べた。先例墨守と思考停止では日本の安全と世界の平和を守ることはできない。