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◆【産経抄】-地名について

 (産経 06/3/5)

 作家の島尾敏雄が名瀬(なぜ)市に移り住んだ昭和三十年ごろ、街にはその二年前までの米国統治下の雰囲気が漂っていたという。名瀬という名は、奄美諸島の日本への復帰運動とともに全国に知られた。最近では台風が列島に近づくたびに登場する。

 名前の由来については諸説あるようだ。漁業にちなんだ魚瀬(なせ)や町に多かった空地(なーじ)、あるいは奄美大島の中地(なーじ)説などだ。「なぜ」か「なせ」かをめぐって、市議会で「なぜ名瀬をナゼというのか」と、笑いをかみ殺したくなる議論もあったという。

 その名瀬市の名前が間もなく消える。今月二十日に周辺の町村と合併、鹿児島県奄美市を名乗るからだ。むろん「奄美」も立派な名前である。だが日本の近代史がしみこんだような「名瀬」がなくなるのは何とも惜しい。地区や町の名としてでも残してほしいものだ。

 今、最後のかけこみとして「平成の大合併」が続いている。行革推進という意味では大賛成だ。しかし、それによって、歴史的な市町村名がどんどんと姿を消している。とりわけ古い地名を伝えてきた「郡」が消滅しつつあるのには胸が痛む思いだ。

 例えば、万葉集の時代にその名の原形があるといわれる富山県の婦負(ねい)郡は、昨年四月になくなった。郡内の四町村すべてが富山市と合併したからである。志賀直哉の名作『城の崎にて』で知られる兵庫県城崎郡も、城崎町などが他の市町と一緒になり、自然消滅した。

 言うまでもなく地名も文化である。少々難読でも由来をたどればその町や村の歴史にたどりつく。合併の大義名分のためとはいえ、何の工夫もせずそれを捨て去る。そうだとすれば、伝統をほとんど無視する皇室典範改正案に通じる怖さがある。
by sakura4987 | 2006-03-05 10:25

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