人気ブログランキング | 話題のタグを見る

★★★ 日本再生ネットワーク 厳選ニュース ★★★

sakura4987.exblog.jp
ブログトップ

◆フルシチョフのスターリン批判から半世紀 「赤い神」復権の潮流

 (産経 06/3/10)

市場経済に落胆大国主義再び

 ソ連の独裁者スターリンを批判して世界に衝撃を与えた、フルシチョフ元ソ連共産党第一書記による一九五六年二月の秘密報告から五十年-。ロシアでは今、血塗られた「赤い神」スターリンの功績をたたえ復権させようという逆向きの動きが急速に進行している。それは民主主義が後退し始めたロシアの現状とも重なる。プーチン大統領のロシアはあれから半世紀を経て、どこに向かおうとしているのか。(モスクワ 内藤泰朗)


≪終わりの始まり≫

 「秘密報告から半世紀がたち、ロシアは個人崇拝の問題を克服できたのか。それが今回の特別展の最大のテーマだった」

 「ソ連共産党第二十回大会・克服…」展のモスクワでの開幕(三日)に当たって、共催したロシア連邦公文書館のアルチゾフ副館長は、こうあいさつした。

 フルシチョフの秘密報告に党最高幹部が修正を加えたことが分かる文書や、ラーゲリ(強制収容所)送りになったスターリンの政敵の名誉回復を検討した手書きの名簿など、今回、機密指定を解除された公文書のほか写真やビデオなどを展示、「当時の衝撃的な雰囲気を伝える努力をした」(同副館長)という。

 開幕式には、フルシチョフの長女、ラーダ・アドジュベイさん(76)の姿もあった。

 大学院生だったラーダさんは「生き神で、国家の偉大な英雄だったスターリンへの批判に多くの人と同様に衝撃を受けた」と振り返る。

 だが、「今思うと父は正しいことをした。スターリンは目的のためには手段を選ばなかった。どれだけ多くの命が犠牲になったか。過ちを繰り返してはならない」と父親の遺影を前に強調した。

 だが、ロシアでは今、スターリンの評価をめぐり大論争が起きている。

 歴史家のユーリー・アクシューチン博士は「第二十回党大会は『ソ連の終わりの始まり』『ロシア革命に次ぐ宮廷クーデター』とも呼ばれる。だが、重要な問題はこの党大会を機に、ソ連(ロシア)社会がスターリンを評価する人と、しない人の二つに割れ、その確執が今も続いていることにある」と指摘した。


≪忘却の大粛清≫

 実際、テレビなどではスターリン特集が多くなっており、国営テレビでは「一言では断言はできない」と評価を避けるか肯定的にとらえるかの、どちらかの番組が目立つ。

 「スターリンは多くの犠牲を払いながらも戦争に勝ち、ソ連を超大国に押し上げた」「スターリン時代には言論の自由は制限されていたが、今と違って秩序があった」といった具合だ。スターリンの人となりを伝え偉大な指導者に祭り上げようとする傾きすらみえる。

 スターリンが戦争を挟み、少なく見積もっても一千万人以上を粛清した事実や恐怖政治、全体主義体制の暗部は意図的に薄められ、一昔前のゴルバチョフ元ソ連大統領やエリツィン大統領の時代の対極のような状況が、そこにはある。

 ロシア世論調査機関、「世論基金」が先月、全土で行った調査でも、スターリンを、評価するとした人が半数を超え、否定的にとらえたのは約三分の一に過ぎなかった。大粛清をロシア近代史最大の事件とした人は八九年に31%いたのに対し、九九年には11%に減った。

 ロシアの“偉人番付”でも八九年に十位だったスターリンは二〇〇〇年一月の調査で首位に躍り出て、「ピョートル大帝やイワン雷帝といった帝政時代の独裁的指導者たちと肩を並べる人気の高い指導者となった」(露紙コメルサント)。

 国民は、ソ連や共産主義時代に郷愁を抱くというより、世界から「恐れられ尊敬もされていた」超大国の再来を願い、スターリンをその象徴と見なしているのだという。同紙は「この新しいスターリン主義の波は社会や個人より国益を最優先させる今の時代を映している」と結論付けている。


≪「裏切り」の行方≫

 スターリン人気の陰には、国益最優先主義や政治・経済の国家統制強化を掲げるプーチン政権の存在が見え隠れする。

 国民が東欧民主化やソ連崩壊に伴う自信喪失から立ち直れないでいる中で、プーチン大統領は昨年、戦勝六十周年祝賀行事を大々的に催し、「(ロシアは)スターリンの下で困難な戦いに勝利し世界を救った偉大な国だ」とうたい上げた。

 やはり一昨年、クレムリン内にある第二次大戦の激戦地ボルゴグラードでの戦没者追悼の碑の地名を旧称の「スターリングラード」に改名させた。

 スターリン像を撤去した時代は去り、像があちこちに建立される時代が再びやってきてもいる。

 「ソ連崩壊後の、自由経済に名を借りた犯罪的な市場経済への国民の落胆は大きい。そんな状況下でロシアが将来、全体主義的傾向の国家資本主義に近づく可能性は十分ある。すべては政治と経済を牛耳るエリート官僚たちの理性あるいは欲望の強さにかかっている」

 ロシアの政治学者、フョードル・ブルラツキー氏は、こう警告する。

 ロシアでは最近、フルシチョフのスターリン批判は「第一の裏切り」と、ゴルバチョフ氏が三十年後に始めたペレストロイカ(再編)は「第二の裏切り」と呼ばれる。

 両者とも反スターリン主義の改革路線を打ち出して十年と持たず、結局、保守派やライバルらの巻き返しに遭って政権を追われる運命をたどった。そして、その後には大国主義の時代が到来した。

 プーチン氏が司法、行政、立法の三権を一手に握り、豊富なエネルギー資源を武器に戦略産業の国営化を進め大国復興をもくろむ今は、その大国主義のサイクルに当たるといえ、この壮大な実験は相当に長引きそうだ。

                   ◇

 【用語解説】フルシチョフの秘密報告

 スターリンの死から3年後、1956年2月14日から開催された第20回ソ連共産党大会の最終日の25日、フルシチョフ党第一書記が非公開で行った演説。

 神聖視されていたスターリンの個人崇拝や権力乱用を断罪し党幹部らの粛清の責任を問う内容で、ソ連とスターリンを礼賛してきた世界各国の社会主義陣営を震撼させた。

 報告は休憩を挟んで6時間ほど続き、強制収容所などで推定2000万人が処刑されたことも告発した。会場は沈黙に包まれ、出席者は青ざめたとされる。

 「弾圧に加担してきたフルシチョフはなぜ、自己批判しないのか」との反発も強く、複雑な雰囲気だったという。当局は混乱を恐れて演説全文を非公開とし、国民は後に、その内容を全国の党組織などを通じてようやく知った。
by sakura4987 | 2006-03-12 16:42

毎日の様々なニュースの中から「これは!」というものを保存していきます。


by sakura4987