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◆≪正論≫中国を非難できぬロシアの環境対策

産経新聞 12・8

いずれ劣らぬ「汚染」への鈍感さ  東京大学名誉教授・辻村明

≪事態の公表遅らせた中国≫

 旧満州の吉林市で、十一月十三日に石油化学工場が爆発し、人体に有害
な化学物質のベンゼンなどが中国東北部を流れる松花江に大量流出し、深
刻な環境汚染を引き起こしている。中国当局がこの事態を公式に発表した
のは二十三日になってからであった。

 産経新聞十一月二十六日付朝刊は、見出しに「中国隠蔽(いんぺい)ま
た露呈」「アムール川許容濃度の十倍の可能性」と掲げ、この間の経過を
詳しく報じている。そして岸辺に打ち上げられた死んだ魚の写真と、松花
江は吉林からハルビンを経てアムール川に合流し、日本人も多く訪問する
ロシア・ハバロフスク(人口六十万)に至ることを示す地図とが掲載され
ていた。

 私はこれらの記事を読んだ途端、約四十年前にソ連のマンガ雑誌『クロ
コジール』(ワニの意味)を分析していたときのことを思いだした。一九
六九年から七三年にかけて、公害問題を題材としたものが急増しているこ
とを発見し、その中には既に河川汚染のマンガも多く目にしていたからで
ある。

 たとえば、工場の配水管から真っ黒な廃液が川に流れ込み、そこを魚が
通ると骨だけになってしまうマンガや、真っ黒な川にきれいな水をビーカ
ーから流すと、それだけで魚が寄ってきて絶好の餌になるとか…。また、
絵にはならない一口話として、二人の太公望が、至る所の川が真っ黒なの
で、「どこで釣ってもキャビアがとれる」と皮肉ったりしていた。

≪多少の汚染は国土が吸収≫

 日本でも、高度経済成長期には水俣病をはじめ多くの公害問題が発生し、
一九七〇年前後は大学紛争とも重なって資本主義を弾劾する論文や行動が
強化されていった。しかし、資本主義社会と社会主義社会とを問わず、ほ
ぼ同時に問題が顕在化していることを考えると、これは大規模な、そして
急激な近代化や工業化の結果とみなさなければならないであろう。

 日本の場合には国土が狭いことと企業努力とによって、海洋や河川の汚
染問題も比較的容易に克服され、今では多くの河川がきれいになり、魚も
多く戻ってきている。

 ところが、ロシアや中国といった広大な領土を持った国では大変なこと
であろう。わずかの公害であれば自然が吸収してくれていたが、急激な工
業化が進むと、その限界も容易に超してしまう。たとえばシベリアのバイ
カル湖は、ひところは世界一透明な湖であったが、周辺に製紙工場が林立
した結果、湖の透明度は一挙に低下していった。

 また一般民衆も、車のオイルの廃液は自分で穴を掘って流し込むありさ
まであった。近代技術の利器ばかりが普及しても、その後始末の技術がな
く、自然の中に垂れ流すだけであった。利器と民度のギャップがひどいの
である。

 それに一層の輪をかけているのが中国であろう。読売新聞十一月三十日
付朝刊が中国の政府系ネット『中国環境資源網』の情報をもとに報じたと
ころによると、「中国では工業排水の3分の1、生活汚水の9割以上が未
処理で直接河川に流れている」という。同紙は同時に、「ロシア非常事態
省は29日、汚染された水が12月6~7日にも国境を越えてロシア極東
部のアムール川へ流れ込む、との予測を明らかにした」ことも伝えている。
予測が確かなら、現在は既にハバロフスクまで到達しているかもしれない。

≪ガス抜きで体制批判回避≫

 ところで、私が約四十年前に、ソ連の『クロコジール』をなぜ分析した
かといえば、内容が面白いばかりか、一党独裁体制の下でも、社会批判は
許されていることに興味をもったからである。

 同誌は一九二二年創刊で、共産党機関紙『プラウダ』の出版局から刊行
されている。しかし、トップの政治家や基本的な政策に対する批判は皆無
で、ほとんどは基本政策を実施する段階の官僚の怠慢を批判するものであ
る。頂点と底辺(大衆)との中間層を批判の対象にしておけば、底辺の不
満が頂点にはね返っていくことを予防し、一種のガス抜き効果がある。

 中国ではどうなのか。専門家に聞いたところ、やはり同じように、人民
日報社から『風刺与幽黙』(風刺とユーモア)という週刊誌が出されてい
るそうである。いつか、中露のマンガ雑誌の比較をしてみたいと思ってい
るが、今回の吉林事故では既にロシア側で反中感情を抑えるために、「非
難サイト」を一時閉鎖したという(産経新聞十二月二日付朝刊)。情報技
術の発達は、非難の応酬を激化させ、両国ともに国運を賭することになる
かもしれない。
by sakura4987 | 2006-03-18 11:45

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