◆明星大教授・高橋史朗 基本法に愛国心明記を
教育基本法改正案の今国会提出に向けての与党協議が大詰めを迎え、小泉純一郎首相は会期内に成立させるよう指示したと報じられている。
一方、三百七十八人の超党派の国会議員連盟の教育基本法改正促進委員会も民間教育臨調などと協議を重ねて独自の「新教育基本法案」を作成し、総会の審議を経て近く同法案を正式に決定する。
問題はその中身だ。与党協議の今後の最大の論点は(1)「愛国心」をめぐる表現(2)「宗教教育」の位置づけ(3)現行法の前文にある「日本国憲法の精神に則り」を憲法改正論議と並行してどう規定するか-の三点にあるようだ。
教育基本法改正にあたって最も重要なことは、前文と第一条(教育の目的)に「第三の教育改革」の教育理念を明示することだ。
近代化を理念とする明治の「第一の教育改革」、民主化を理念とする戦後の「第二の教育改革」は、欧米にモデルを求め、わが国の過去の歴史、文化、伝統などの「否定による進歩」を目指したところに限界があったといえる。
二十一世紀の「第三の教育改革」は欧米にモデルを求めることはできない。グローバリゼーションの進む二十一世紀においては、国家としてのアイデンティティーを明確にしなければ国際社会で高い評価を受けることはできない。
それ故に、前文には「第三の教育改革」の基盤となる日本文化の歴史的使命を文明論的視点から明示する必要があろう。また、第一条は、個人の内在価値の開発という人間教育の視点と日本人の育成という国民教育の視点が、「共同体とのかかわりの中で人格を陶冶(とうや)し」という形で統合されることが望ましい。
「第三の教育改革」の教育理念に求められるのは、私と公、個人と国家のバランスであり、愛国心の土台となるものは、自己、家族、郷土、文化、伝統などへの愛情である。この自然な愛情をはぐくむ愛国心教育は人類愛に通じる。
「国を愛する」という場合の国家とは、社会契約説に基づく人工的装置としての統治機構ではなく、歴史、文化、伝統を共有する国民の有機的共同体としての国家である。
内閣府の世論調査でも「国を愛するという気持ちをもっと育てる必要がある」と答えた人が二年連続して八割を超えており、この世論調査を踏まえる必要があろう。
論点(2)の宗教教育については、公教育において特定の宗派教育を行うことは憲法の政教分離原則に反するが、宗教に関する知識教育、情操教育を行うことは憲法違反ではない。ノーベル平和賞を受賞したケニアのワンガリ・マータイさんが唱道している「もったいない」に代表される日本独自の「宗教的情操」は特定の宗派宗教によってはぐくまれるものではない。それ故に、公教育から宗教教育を排除する結果をもたらした現行の規定は「宗教的情操の涵養(かんよう)」を推奨する積極的な規定に改めるべきだ。
論点(3)については、この文言は制定時に経緯を示す必要があったために盛り込まれたものであるから、新しい法律に盛り込む必要はない。
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【プロフィル】高橋史朗
たかはし・しろう 埼玉県教育委員、師範塾理事長・塾長、親学会副会長、PHP親学研究会主査。主な編著に『親学のすすめ』『ホリスティックな学校教育相談』。

