◆【産経抄】 (産経 06・4・22)
めぐみさんを撮影した父、滋さんの写真展の開催を予定していた札幌市の丸井今井札幌本店が、脅迫状を受けて会場の提供を辞退した。「客に危害が加えられる恐れがある」と、警察と相談してやめた。苦渋の決断だろうが残念だ。支援グループあさがおの会はやむを得ず別の会場で開催する。
脅迫は鎌倉市を中心に活動する「劇団てんびん座」にもあった。劇団は父、滋さんと母、早紀江さんらを題材に、五月三日から「この手に…横田めぐみを想う」を上演する予定だ。代表の森木エリ子さん(55)が、子をもつ親として「何かで声を上げなければ」と決意した。
台本は数日で書き上げた。事件を風化させてはならないと、世論を喚起する内容である。それがこの一カ月前から、「上演したらどうなるか分からんぞ」と、匿名の電話やメールが入るようになった。すでに二十件あまり。犯人らは国民が一致して拉致事件の解決にあたるのがよほど気に食わないらしい。
陰険でいやな根性だ。気に食わない表現や言論を封じる“暴力”は、以前にもあった。ジャーナリストの櫻井よしこさんの講演会に横ヤリがはいったり、上坂冬子さんの憲法講演が突然キャンセルされたりした。こちらは「平和」だの「人権」だのを唱えるグループによるものだ。
森木さんらは圧力をはね返して何とか上演する考えだ。改めて、横田さん夫妻ら拉致被害者家族が歩んできた長く孤独な闘いの日々の壮絶さ、一途さを想(おも)う。