◆チャイナマネー武器に外交強化 世界で資源確保へ狂奔
http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200605080008a.nwc
■原油消費3倍/ユノカル逃し
海外からのエネルギー調達ルート拡大を狙う中国が資源外交を強化している。
胡錦濤国家主席が四月の訪米後にサウジアラビアやアフリカを歴訪したのも、それに先立って温家宝首相がオーストラリアを訪れたのも、石油資源や原子力発電用のウラン燃料の供給源の確保が最大の目的だ。
石油消費量の急増や原油の高騰が背景にある。外貨準備高で日本を抜いて世界一となった中国。「チャイナマネー」が世界中のエネルギー供給国をターゲットにしはじめた。
四月二十六日にアフリカ西部の産油国、ナイジェリアを訪問した胡主席は、中国が四十億ドル(約四千六百億円)を超える製油所などインフラ整備資金を供給する見返りとして、四鉱区の油田開発権を得た。
サウジアラビアでも石油や天然ガスの採掘で合意している。サウジは二〇一〇年まで日量百万バレルを供給する長期契約も中国と結んだ。
このほかに、中央アジアのトルクメニスタンなどカスピ海周辺の天然ガス田の権益確保とパイプライン敷設で、トルクメニスタンのほか通過国となるカザフスタン、ウズベキスタンとも相次ぎ合意した。
トルクメニスタンと〇九年から三十年間にわたり天然ガス供給を受ける契約も締結。パイプライン建設には百億ドルを投じる計画という。
中国のエネルギー戦略が原油をスポット的に輸入する初歩段階から、油田や天然ガス田の開発から調達ルート確保までを総合的に手がける、中長期的な供給源確保の戦略に急ピッチにシフトしていることを裏付ける。
中国はさらにモロッコやイラン、インドネシアなどの油田権益の確保にも触手を伸ばしているほか、まだ商業油田が開発されていないケニアにおいてすら、その可能性を探るありさま。
また、中東からの輸入原油をタンカーがマラッカ海峡や南シナ海を経由せずに、インド洋で荷揚げして中国まで輸送できるようミャンマーから中国の国境までパイプラインを敷く計画なども進めている。
日本総合研究所の調べによると、急速な経済成長が続く中国の原油消費量は一日当たり、一九九〇年の二百四十万バレル(一バレルは約百五十九リットル)から〇五年には七百五十万バレルと三倍になった。
中国は国内にも油田を抱えるが、世界二位の消費国となった結果、〇四年に年間の原油輸入量が一億トンを超え、原油の輸入依存度は、〇〇年の30%から42%まで膨らんだ。
今年に入って海外での油田権益の獲得に躍起になっている背景には、国有の中国海洋石油総公司による米石油大手、ユノカルの昨年の買収失敗劇がある。
株式譲渡で合意しかかったM&A(企業の合併・買収)案件だったが、米議会が安全保障上の理由から猛烈に反発し、中国側が撤退を余儀なくされた。
買収が成功していれば、ユノカルが権益を抱える中東などの油田から原油の安定供給が図れたはずだった。
そのもくろみが外れた中国は、エネルギー調達でライバルとなる米国の強硬な姿勢にどう対抗するか、必死にチエを絞っているようにみえる。
中国は豊富な「チャイナマネー」の力で海外における独自の油田開発や油田権益を得て、米国の影響外の供給ルートを手にすることを狙った。
その一方で、サウジやベネズエラなど、米国企業によるエネルギー支配構造からの脱却を狙う国に接近した。
ベネズエラでは最大の原油の輸出相手国を米国から中国に切り替える動きも出始めた。
トップ外交による戦略で、中国は原油や天然ガス確保のさらにその先まで読み、オーストラリアからウラン燃料の長期的調達でも合意した。
エネルギーがぶ飲み中国の飽くなき欲望には、歯止めがかかりそうもない。