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◆シェルがガス田開発から退いた理由  平成16年10月23日(土)  産経新聞



杏林大学教授・平松茂雄  中国との利益配分方式に嫌気か

≪突然のメジャー撤退報道≫

 五月以来、わが国と中国との間で政治問題となっている東シナ海・春暁石油ガス田の開発事業から、英蘭系メジャーのシェルと米国独立系のユノカルが撤退することが九月末、突然報道された。

 「商業上の理由」が公の理由だが、日本側にすぐ近い海域での開発だけに日本政府が強く抗議し、メジャー側が配慮したとの見方もある。

 両社の撤退について香港の『文匯報』が興味ある記事を掲載したので、それを紹介しながらこの問題について考えてみたい。シェルの中国担当スポークスマンは、天然ガス市場、コスト、販売収益などの要素を考慮し撤退を決めたと述べ、それ以上の事情は明らかにしなかったが、背景には次のような厳しい現実があるようだ。

 まず国内外の原材料高騰により当初の事業計画に大幅な修正が加えられ、このため外資が事業継続に難色を示した可能性がある。また上海、江蘇、浙江からなる長江デルタ地帯は、GDP(国内総生産)の五分の一を占める中国最大の経済圏で、この大市場を目指して西気東輸、LNG(液化天然ガス)プロジェクト、東シナ海ガス田の三つのプロジェクトが競合している厳しい現実がある。契約は一年後に事業の評価や分析を行った上で最終判断することになっていた。

≪白髪三千丈の中国的説明≫

 他方、中国海洋石油総公司の邱子磊・高級副総裁は、主要な原因は利益率の問題であると指摘した。外資が参加するコストは中国海洋石油総公司よりも割高であるから、より高いリスクを負わなければならない。しかも外資が参加したとき、春暁プロジェクトはすでに着工しており、開発・建設計画に直接参加することがなかった。彼らには内部利益率一五%は魅力がなく、最終的に双方は合意に至らなかった。

 「具体的に述べるならば、わが方では一元投資すればすむところを、外資では百元を投資しなければならないが、それでも最後には百五元にはなる。わが方は非常に満足しているが、相手方は利益に魅力がないと認識している」と邱副総裁は説明した。

 わが国の石油関連企業によれば、利益率は一般に一五%、最低でも一〇%という。「わが方は一元投資すればすむのに、外資では百元を投資しなければならない」とは、中国特有の「白髪三千丈」的説明であろうが、百元を投資して百五元(五%の利益)ではとてももうけるどころではない。だが「中国がやれば一元ですむ」という説明には中国の恩着せがましい態度がうかがわれる。シェルが撤退する理由がよく分かろう。

 条件が厳しいことは承知で契約したのだから、商業上の理由ではなく、日本政府に対する政治的配慮が最も重要な理由であるとの見方について邱副総裁は、外資は参加する時点でそのことを承知しており、無関係と説明した。

≪過去にもあった合併解約≫

 日本が権利を持っているといっても、先願権を得て鉱区を設定した企業が鉱業権を申請して三十年以上もなるのに放置し、何ら積極的なデータも持っていないのであるから、配慮するほどの理由になるのであろうか。これを口実に撤退したと見るのは、勘繰り過ぎであろうか。

 シェルとユノカルは春暁ばかりでなく、同時に春暁の北側に続く宝雲亭石油ガス田の開発、および三つの鉱区の探査に関しても合弁契約を締結している。これらの鉱区も日中中間線に近い位置にあるが、開発は将来の問題である。摩擦が起きないうちから撤退するような問題ではなかろう。さらにシェルは、中国石油ガス総公司などとの合弁で進めている新疆ウイグル自治区から上海までのパイプラインを輸送する「西気東輸」プロジェクトでもこの八月、合弁事業から撤退している。

 実を言えば同じ東シナ海で春暁よりも前に開発を行った平湖で、米国系メジャー・テキサコが合弁を解約した前例がある。石油ガスの取り分が少ないことに原因があったようで、テキサコの撤退で平湖の開発は二年程度遅れ、中国は自力で開発を進めた。

 春暁の開発でも同様の影響が出ると考えられるが、全面的な遅れより、今夏の頻繁な台風の来襲でプラットホームの建設が計画通り完成していないことであり、そこからの遅れの方が当面影響するであろう。中国は東シナ海の石油ガス資源開発で、わが国に共同開発を提案している。紛争地点での共同開発は一つの解決策ではあるが、シェルの撤退は中国との共同開発に安易に参加することの危険性を示している。



※この杏林大学教授・平松茂雄先生の中国分析には定評があり、読み飛ばせない。考えてみれば、メジャーがすんなり米国政府の言う事を聞くとも考えにくい。結局、中国は甘くないぞというメッセージであり、日本の外交にも安心するなということだろう。我々素人でもこの地域に重大な関心があるが、外務省などは、厳しいことには関わらず、すぐにほったらかしにしてきた過去があるので、油断は大敵だろう。嫌なことは避けるという、最近の若者気質に似ているが、これも武士道精神、騎士道精神がなくなったことによる。 
by sakura4987 | 2006-05-26 14:28

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