◆ますます接近する韓国と北朝鮮――どうなる? 拉致と核 (文芸春秋PLUS 06/6/1)
5月17日、長年対立を続けてきた「在日本大韓民国民団」(民団)の河丙鈺(ハ・ビョンオク)団長と「在日本朝鮮人総連合会」(総連)の徐萬述(ソ・マンスル)議長が初のトップ会談をおこない、共同声明を発表した。
声明では、韓国の金大中(キム・デジュン)前大統領と北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が2000年6月に調印した「南北共同宣言」の理念にしたがって「反目と対立を和解と和合に転換させる」と謳っている。
この「歴史的和解」が実現するにあたっては、民団中央に対し本国政府の意向が強く働いたといわれる。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の北朝鮮に対する融和政策には批判の声も出てきており、政権終盤を迎えた盧大統領は、改めて自らの正当性を強くアピールしようとしているわけだ。
河丙鈺氏は朝鮮学校で教師をしていた親北派だが、今年2月に同氏が団長に選出された際には、在日韓国大使館関係者が支援に動いていたともいわれている。
民団は和解にあたって、脱北者支援センターの活動をとりあえず保留した。こうした中央の方針に対し、「拉致問題や脱北者問題、人権問題が棚上げになる」と、従わない動きをみせている地方組織もある。
おりしも同じ頃、金大中前大統領が6月下旬に北朝鮮を訪朝することが決まった。
金前大統領が、自らが実現に関わった南北を結ぶ鉄道を使って訪朝を希望しているのに対し、北朝鮮側は、とくに軍が鉄道の利用に強く反対しており、訪朝実現までにはまだ紆余曲折がありそうだが、これがいっそうの北朝鮮支援策、あるいは盧大統領の訪朝につながるのではないかという見方も根強い。
加えて5月19日には、北朝鮮の咸鏡北道にある弾道ミサイル基地で、発射準備の兆候が見られた。このミサイルは、核弾頭が搭載可能で射程が6000kmと米本土にも到達する能力を持つテポドン2号の可能性が高い。
その後、液体燃料の注入などはされていないが、6カ国協議でアメリカの譲歩を引き出そうという狙いがあるのは明らかだ。6カ国協議は2005年9月、北朝鮮の核兵器放棄と経済支援を盛り込んだ共同声明を採択したが、ドル札偽造に対するアメリカの金融制裁に北朝鮮が反発して中断したままだ。
さらに、麻薬や偽ドルに絡む北朝鮮のマネーロンダリングが行われた場所は、香港やマカオ、すなわち北朝鮮の最大の貿易相手国・中国である。
横田早紀江さんら「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」のメンバーが、4月下旬から5月にかけてアメリカ、韓国を訪れ、拉致問題解決への協力を訴えた際には、米韓両政府の対応の違いが目立った。
民団と総連の和解は、横田滋さんが、めぐみさんの夫とされる金英男さんの母親と面会し、韓国と日本の拉致被害者が共闘する動きが出てきた矢先の出来事である。
以上、このところの一連の動きから推測すると、韓国と北朝鮮は「統一朝鮮」に向けて加速している。統一が早まれば、必然的に南北が日米へ対抗姿勢を強めることにつながる。
また、中国が「統一朝鮮」の後ろ盾になることによって、日米に対して強いカードをもつことになる。それだけに韓国の動きは重要だ。日米が経済制裁にたよるばかりでは、拉致問題や人権問題、核開発問題などの解決への道は、ますます遠ざかるといわざるをえない。
(高橋 理 たかはし・さとる=『日本の論点』スタッフライター)

