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◆【中国暗影 成長の大矛盾】(2)農民収奪加速  平成16年8月11日(水)産経新聞


工業発展の“踏み台”に

 昨年三月に温家宝氏が首相に就任し、胡錦濤国家主席(中国共産党総書記)との胡-温体制が発足した直後、新型肺炎(SARS)が首都北京にも襲来して猛威を振るった。両氏は国家的危機と見なし、対応策の中で農村部への感染拡大に強い危機感を表した。「農村に広がれば手に負えない」(温首相)からだった。

 当時、中国のメディアは河北省など北京周辺農村の悲惨な実情をルポしている。多くの村の医療施設は、深刻な経営難で設備、医薬品とも不足し、専門的な医師もほとんどいなかった。経営難の主因は、医療保険がなく、農民がこうした医療施設に行かないことにある。加えて劣悪な生活環境、衛生意識の欠如など、SARS拡大の条件がそろっていた。そのキーワードは「貧困」だ。

 首相就任時の記者会見で、温家宝氏は「中南海(北京の党・政府所在地)に入って以来の十八年間に、全国二千五百余県のうち千八百県を回った」と述べ、副首相として担当した農村問題の専門家の一端を披瀝(ひれき)した。

 「中国の人口十三億中、九億が農民だ。そのうち貧困ライン以下は約三千万人だが、その基準は年収六百二十五元(約八千円)と低い。基準を二百元引き上げると、農村の貧困人口は九千万人に跳ね上がる」

 生計費一日一ドルという国際標準の貧困ラインを人民元に換算すると年三千元余になる。中国農民の八割以上はそれ以下の収入という。人口の七割を占める農民の貧困の主因は、経済成長の踏み台にされてきたことにある。

 新中国発足以来、近代化、つまり都市化と工業化は一貫して農業からの収奪によって図られてきた。農産品買い上げ価格を低水準に維持して、蓄積した資本を重工業や都市建設に投入した毛沢東時代の手法は、今日も引き継がれ、収奪はさらにエスカレートした。

 中国人民大学の劉斌教授らの近著「中国三農(農業、農村、農民)問題報告」(中国発展出版社)は、一九五二-九〇年の間に、工業生産は六十五倍になったが、農業は三倍余にしかならなかったとし、農業と農民からの収奪の結果と断じる。その一つは徴税だ。

 同書は農業税を「明税」、地方政府が徴収するそれ以外の費用負担を「暗税」と分類。五〇-七八年まで二十九年間の暗税は明税のほぼ五倍だったが、七九-九四年の十六年間は明税千七百五十五億元に対し、暗税はその八倍の一兆五千億元余に上った。

 その半面、国家の財政支出に占める農業支援費の割合は年々減少し、七八年の10%が近年3-4%に低迷。基本建設費に占める第一次産業の割合も同様で、〇三年は5%未満だった(第二次産業は34%、第三次産業は61%)。

 その結果、農業の技術革新は遅れ、生産性の低い労働集約型のままに放置された。現在、都市と農村の労働人口は半々に近いが、〇三年の国内総生産(GDP)に占める第一次産業の割合は14・5%で、七八年当時の半分に減った。都市と農村住民の所得格差は統計上は三倍未満だが、都市住民には統計に表れない「灰色収入」があり、実際の開きは四-五倍という。

 改革・開放時代の特徴は、農民の都市への出稼ぎ(中国語で「民工」)が急増したことだ。民工は現在、一億二千万人に上る。毛沢東は五八年に戸籍制度を創設し、農民の移動を禁じたが、八〇年代以降の都市経済の発展で出稼ぎ者が急増し、臨時的な移動が公認されるようになった。

 民工は建設現場や単純労働の主力を担う。極めて低賃金で社会保障なども一切ないが、それでも農村に比べ、数倍の収入が得られる。民工の急増は都市労働者の就業を脅かし、低賃金に甘んじざるを得なくした。それは都市の発展を支え、外国企業を呼び込む。若い労働力の流出によって、農村では労働力が高齢化し、疲弊が進む図式だ。

 胡錦濤政権は昨年来、三農対策に本腰を入れだした。農民の収入増なくして格差が生む社会不安は解消できないし、国内需要の低迷も打破できないからだ。三農を犠牲にした成長路線の切り替えには、巨額の資金と多くの制度改革を要し、政治的抵抗も強い。政権の手腕が問われている。(北京 伊藤正)
by sakura4987 | 2006-06-03 10:08

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