◆【靖国参拝の考察】マイケル・グリーン氏 中止要求「悪い間違い」 (産経 06/6/8)
【ワシントン=古森義久】ブッシュ米政権の国家安全保障会議の前アジア上級部長、マイケル・グリーン氏はこのほど産経新聞との会見で、日中関係と米国の立場などについて語り、中国が日本の首相に対し靖国神社参拝の中止を要求していることを「悪い間違い」と批判し、関係改善にはまず中国側の譲歩が必要だと述べた。同氏はブッシュ政権が靖国問題に関与する意図はなく、日中間の紛争では基本的に日本を民主主義の同盟国として支持する姿勢であることをも明らかにした。
グリーン氏は、中国政府が小泉純一郎首相の靖国参拝に反対し、日本側が参拝を中止しない限り、次期首相も含めて首脳会談を拒むとの姿勢を示していることに対し「参拝中止を日本の現在と将来の首相へのリトマス試験として突きつけており、この高圧的な要求は悪い間違い(バッド・ミステーク)だ」と述べるとともに、日中関係の改善のためには「まず中国側がただ一つの争点で関係全体を悪化させるという靖国問題への強硬アプローチを軟化させ、対日リトマス試験をやめねばならない」との見解を表明した。
同氏はその論拠について「中国は従来の軍拡に加え、日本に対し歴史認識の押し付け、国連安保理常任理事国入りへの反対、尖閣諸島付近など東シナ海での一方的活動、潜水艦での日本領海侵入など脅威的、挑発的な行動を続けて、険悪な雰囲気をつくった上で、さらに次期首相にまで靖国に参拝するなと求めており、日本側がその要求に応じないだけでなく中国への反感を増すのは自然だ」と解説した。
グリーン氏は中国側が首相の靖国参拝を攻撃する理由に関しては「参拝は中国側一般の神経にさわる側面も確かにあるが、中国政府は過去には首相の参拝を無視した場合も多く、日本側で防衛を強化しようとする中曽根氏や小泉氏が首相の時に激しく問題にしてくるパターンがあり、屈折した政治利用だといえる」と述べた。
米国の対応についてグリーン氏は、ホワイトハウスをはじめとするブッシュ政権の主体が、日中関係は安定が好ましいとしながらも、日中間の靖国問題などには関与しない方針だが、対立や紛争が激しくなった場合には「日本は民主主義の価値観を共有する同盟国であり、米国は日中間で中立の立場はとらない」としてブッシュ政権の日本支持の基本路線を明確に語った。
同氏は「米国内でもニューヨーク・タイムズの社説に象徴される左派の間には、日本が軍国主義の過去を克服しておらず、首相の靖国参拝にも反対を伝えるべきだという意見があるが、私は絶対にそれに反対だ」として、米側でのそんな動きは「中国の間違ったリトマス試験を承認するという、さらに大きな間違いであり、米国は日本よりも中国の味方をするという不適切な印象を与える」と述べた。
グリーン氏はブッシュ大統領が「日本の首相の靖国参拝が日中関係を悪化させた」という見解を排して「日中関係は単なる神社参拝よりもずっと複雑だ」と、昨年11月に言明したことに触れて「この言明がいまもブッシュ政権の政策だ」として、靖国問題も「日本の民主主義国としての国際貢献、国内での宗教や政治など、多数の次元から多角的に判断されねばならない」と述べた。
同氏は「日本が靖国問題のためにアジアで孤立しているという見解には同意しない」としてインドやベトナムの親日姿勢をあげ、麻生太郎氏や安倍晋三氏が民主主義を前面に出しての新たなアジア政策を語り出したことは対中関係にも有意義だと述べた。
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【プロフィル】マイケル・グリーン
1983年に米国ケニヨン大学卒業、94年、ジョンズホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で博士号取得後、助教授に。その間、日本に留学、研修など。97年から外交評議会上級研究員、2001年に第1次ブッシュ政権の国家安全保障会議(NSC)アジア部長、04年1月から第2次同政権の05年12月まで大統領特別補佐官兼NSCアジア上級部長。現在は戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長、ジョージタウン大学教授。

