◆【主張】農業改革 タブーを恐れてはならぬ (産経 06/6/7)
日本の農業の再生を見据えた提言や報告が相次いで出された。主要経済団体でつくるシンクタンク、日本経済調査協議会の「農政改革を実現する」と、農林水産省の「農業白書」である。
とりわけ日経調の提言が現行農地法の見直しに言及し、農地の流動化を求めている点に注目したい。
農業白書によると、農業従事者の高齢化は年ごとに進み、65歳以上が32%を占めている。さらに、農産物の価格低迷が輪をかけたこともあり、耕作放棄地が38万ヘクタールと、東京都の面積の1・8倍に達した。こうした悪循環が農業を縮小させる要因になっている。
ならば、農業の規模拡大や新規参入を希望する企業や個人に、放棄地での所有権移転や賃借を促進する仕組みができないものか-と誰しもが思うが、ことはそう簡単ではない。
戦後の農地解放に伴って制定され、統制的な傾向の強い現在の農地法が障害となっているからだ。
農地法では農地を所有する権利を農家に限定するとともに、所有権の移転を厳しく制限している。これが農地流動化のネックとなっている。
昨年改正された農業経営基盤強化促進法で、リース方式で法人などの農業参入が認められはした。しかし、地域を越えた賃借が制限されるなど、農地を1カ所に集約することは困難で、参入者からはコスト削減につながらないという不満も出ている。
日経調の提言は、農地法を見直して「所有と利用の分離」を図るとともに、安定利用の観点から長期で場所を問わない賃借の実現を求めている。
農地を市場化することによって、経営資源として利用するとの考え方だ。農地の流動化にもつながろう。
農業への参入機会が容易となれば、経営感覚に優れた人材も集まり、農業再生の道も広がる。
それには農地法で定められているさまざまな制限の撤廃が不可欠だ。政府はこれまで、農家や関係団体の反発を見据えて、農地法の抜本改正には踏み込まなかったが、すでに法制度が形骸(けいがい)化しているとの指摘さえある。
このため、法改正も視野に入れた幅広い論議が必要といえる。農業改革へ目を向けた日経調の提言は参考になる。タブーを恐れてはいけない。

