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◆【年金のすがた】欧州からの報告


(1)個人への情報通知

信頼取り戻す必須条件

 「いくら払っていて、いくら受け取れるのかさえ分からない」「保険料を払っても損をするだけ」。今、日本の年金制度は実態がよく見えず、国民の間で不信感、不安感が高まっている。なぜ、信頼されなくなったのか? 手厚い公的年金を誇る高負担高福祉の国・スウェーデンと、公的年金の給付額を切り詰めて国民に自助努力を促すイギリスのケースを通して、日本の公的年金の行き先を探った。

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 A4サイズのオレンジ色封筒に入った六ページの年次報告書。これは、スウェーデン政府が、五年前から、国民年金に加入している五百五十万人全員に届けている“ラブレター”だ。報告書の表紙には、一人一人の将来の年金予想額が明記されている。

 ストックホルムの2LDKのアパートに家族三人で暮らす、看護師のビルギッタ・エリクソンさん(五一)は、この報告書を大切に保管している。

 「この報告書に数字が書いてあるから、国の年金は安心できるの。平均余命が長くなっているから、実際にはこの額より減るかな、と思うけど仕方ないわ。夫と二人の年金で十分に暮らしていけると思う」

 年次報告書は、新しい公的年金制度を導入した一九九九年の春から、社会保険庁が届け始めた。個人の老後生活の不安を少しでも取り除き、若いうちに準備を進めるための参考にしてもらうのが目的で、国民の信頼が厚いスウェーデンの年金制度の象徴となっている。

 まず、目に飛び込んでくるのが、自分自身の将来の年金予想額。独自の方法で計算したものだ。例えば、六十一歳から受け取り始めると、月額八千八百クローナ(約十三万二千円)。六十五歳から受け取ると一万千六百クローナ(約十七万四千円)に、七十歳からなら一万六千七百クローナ(約二十五万五百円)になる、といったふうに。

 加えて、今秋からは、インターネットのホームページで、公的年金、企業年金、個人年金すべてをあわせた年金予想額が、見られるようになる。社会保険庁の法律アドバイザー、ニクラス・ヤールベリさんは「年金は保険料を払ったらもらう権利がある。個人に、誠意を持って情報を伝えるのは、一番重要なことだ」と言い切る。

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 一方、「年金制度が複雑すぎる」と年金を所管する労働年金省の担当者も認めるイギリス。公的年金に個人年金、企業年金、税金を財源とした年金手当などが複雑に組み合わさっており、国民への説明は困難を極めるが、国民の理解を求めるために最重要課題として昨年春から始めたことは、スウェーデンと同様、個人情報の本人への通知の徹底だ。

 目標は、公的年金、企業年金、個人年金を一括して、三千六百五十万人にのぼる会社員、自営業者、失業者それぞれに、毎年、通知すること。すでに、会社員百七十万人、自営業者百六十万人に個人情報を報告した。

 企業向けプログラム担当者のヘレン・ディアンさんは「年金を自助努力で増やすためには、国による積極的な情報開示が必要だ」と意気込む。

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 年金制度を作り管理する国が、国民一人一人に向けた誠実なメッセージを送り続けることは、信頼を得るための必須条件だ。

 しかし日本はこれまで、情報開示をほとんど行ってこなかった。ようやく五十五歳以上の人については、聞いてきた場合だけ、個人情報に基づいた年金見込み額を報告することにしたが、その時に「あなたは年金を受け取れないでしょう」などといわれても、人生設計を組み直すには手遅れだ。

 日本の年金制度を不透明にしている深い霧は、情報開示への消極的な態度が大きな一因だ。

 一橋大学経済研究所教授の高山憲之氏は「日本でも、スウェーデンのように、保険料の納付額の実績と、将来の年金見込み額を、本人あてに通知するか、インターネットでパスワードを入れれば見られるようにすればいい。しかし、社会保険庁がいま保有しているデータは、『実際に勤務していた期間が入っていない』などの問題が少なくない」と指摘。「加入者全員への通知には膨大な費用と手間がかかるし、今の社会保険庁では問い合わせに対応しきれずパンクしてしまう。まず、今、見込み額を通知している人に対しては納付総額も加え、通知する年齢を徐々に拡大していくべきだ」と提案する。

 (武部由香里)


◆【年金のすがた】欧州からの報告(2)未加入・滞納対策
所得把握など特効薬必要

 日本では、会社員、公務員を除くと半数以上の若者が国民年金の保険料を支払っていない-。

 「日本の若者は勇気があるね。僕が国民保険料を滞納していたら、きっと毎日、帰宅するのが怖いよ。だって、財産を差し押さえられるからね。今にも何か持っていかれるかもしれない」

 イギリスの民間調査機関、年金政策研究所(PPI)調査部長のクリス・カリーさんは、日本の国民年金の未加入、滞納状況を聞いて驚いた。

 イギリスの公的年金は、週七十九ポンド(約一万五千八百円)以上の所得がある会社員と公務員、自営業者が強制加入し、保険料は日本と同じく、会社員と公務員の場合、給料から天引き、自営業者は所得を自己申告して支払う。ただ、徴収業務は税金と同じ内国歳入庁が担っており、社会には保険料逃れと脱税は同じという意識が強い。「未納など普通の人は考えない」(カリーさん)のだ。

 また、スウェーデンでは、「国民番号」が半世紀も前から全国民に付けられ、国が所得、資産を把握しているため未加入や未納はありえない。

 日本は、というと、強制加入のはずの国民年金への未加入や未納は珍しくない。給料から天引きされない自営業者や無職などの人の未納率は平成十五年度には36・6%、二十歳代では50・6%にも達している。若い世代ほど未納率が高いのは、年金制度への不満、無関心が大きい証拠だ。

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 若者が数十年先に受け取る年金になかなか関心を示さないのは、日本に限ったことではない。

 スウェーデンでフェスティバルの企画などを行っている自営業のトミー・マツソンさん(三二)も「僕が年を取ったときに、今の年金システムが機能しているかどうかは分からないな。まだ現実的ではなく年金にはあまり関心はない」と話す。

 そこで若者の関心を高め、年金制度の必要性を認識してもらおうと、スウェーデンでは、さまざまな工夫をしている。その一つが、一九九九年の年金制度改革で公的年金制度に盛り込まれた“隠し玉”だ。

 スウェーデンの公的年金の保険料は所得の18・5%(労使折半、老齢年金のみ)。このうち16%部分は国が運用し、今の年金受給者の給付にあてられる賦課(ふか)式だが、残りの2・5%部分は、自分で選んだファンドに投資して運用する「確定拠出年金」で、自分の老後まで蓄えられていく。

 この2・5%部分が“隠し玉”。自分自身の年金に使われるのだが、運用次第で受け取る年金額は変わってくるため、一人ひとりが年金のことを真剣に考えざるをえない仕組みだ。運用結果は、毎年、個人に届くオレンジ色封筒の報告書でも見られるし、雑誌、インターネットなどでも状況は分かる。

 実際、「年金といわれて一番気になるのは、2・5%の部分なの。雑誌も買って勉強しているわ」と五十代の公務員。若い人だけでなく、これまで投資などしたこともなかった中高年世代までもひきつけている。

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 年金に対する不信感がここまで強まってしまった日本では、「年金制度の信頼回復をはかり、若者も関心を持つようになれば、未納率は下がる」といった厚生労働省の説明もむなしく聞こえる。

 保険料の徴収と、年金制度の信頼回復は、並行して進めながらも、それぞれ、切り離した対策が必要な段階に来ているといえる。

 年金未納の解消策として、一橋大学大学院経済学研究科教授の斉藤誠氏は「納税者番号制」の導入をあげる。会社員、自営業者などすべての納税者に番号をつけて、所得を把握できるようにするのだ。

 「所得捕捉(ほそく)すれば、スウェーデンのように、保険料と年金給付のきめ細かい対応ができる。国がこうした情報基盤を持つことがまず必要。番号制導入は、年金だけでなく、財政、金融などの諸問題を解決する切り札だ」

 番号制導入は国家統制につながる、として強い拒否感を示す意見もある。しかし、未納問題が日本の年金制度を空洞化させかねない状況になっている現状では、年金改革論議の大きな焦点に浮上する可能性が高い。(武部由香里)
by sakura4987 | 2006-06-12 16:40

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