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◆【年金のすがた】欧州からの報告(3) 平成16年8月6日(金)産経新聞


全国民の老後保障

つぎはぎ改革に終止符を

 日本では、これから十三年間、国民年金の保険料、厚生年金の保険料率を上げ続けることが年金制度改革法の成立で決まった。しかし、一定の給付額を確保するために保険料を上げていてはきりがない。少子高齢化の進行が予想以上に早く、年金財政が悪化している状況では、「年金は何のためにあるのか」という目的をはっきりとさせ、制度を一から見直す必要がある。

 イギリスで年金を所管する労働年金省の担当者は「公的年金のターゲットは貧困者」と言い切り、給付額を切り詰めることで安定した年金財政を維持している。

 一方、スウェーデンで年金制度を受け持つ社会保険庁のニクラス・ヤールベリさんは「誰もが年金は受け取れる、と安心してもらえる制度にしました」と話す。一九九九年、世界に先駆けて年金制度の大改革をしたのも、少子高齢化に影響されにくく、将来にわたって維持でき、全国民の老後生活を保障できるものにするのが目的だった。

 日本の年金制度の目的もスウェーデンと同じく、全国民の老後の生活保障だ。しかし、公的年金の給付額は減るし、年金を受け取れない無年金者もいる。現在の高い未納率が続けば、将来、無年金者が増えることは目に見えている。今の制度では、国民に老後生活への安心感を与えられないのが現実だ。

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 スウェーデンが導入した年金制度は世界的に注目を集めている。日本の民主党もこの方式を基にした年金改革案を公表している。

 スウェーデンも改革以前は、定額年金と所得比例年金の二階建ての年金制度だったが、少子化、高齢化の進行、女性の社会進出の浸透で、労働力の増加が期待できなくなった。年金給付額を維持するには保険料率を上げればよいが、すでに税金、社会保険料の負担が大きく、さらに年金保険料の負担が増えると、若者が労働意欲を失いかねない。

 そこで「十年間かけて議論を行い、政権が変わっても安定した年金制度を目指し、保革の合意の下で改革を実施した」(社会省のベアリット・アンノール児童・家族担当大臣)。

 新制度の内容は、保険料率を所得の18・5%より上げない▽職業に関係なく、全員が同じ年金制度▽給付額は平均余命によって変わる▽年金額は所得に応じて受け取る所得比例式に一本化▽無職の期間が長い人や低所得の人は年金額が少なくなるため、税金を財源にした「保証年金」でカバーする-などだ。

 保証年金の支給額は、スウェーデンに住んでいた期間と所得比例の老齢年金の額、既婚か未婚かで決まる。四十年間住んでいれば、所得比例と保証年金を合わせて、独身者で月額六千八百五十二クローナ(約十万二千七百円)以上受け取れる。

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 これに対し、イギリスは国民の所得格差が非常に大きく、そのための取り組みが最重要課題だ。「自分で老後の準備ができる人は、そうすればいい。すべての人に多くの年金を支給することは全く考えていない」と労働年金省のジャン・スピラーさんは説明する。

 もともと基礎年金の額が低いうえ、低所得の期間中は任意加入なので入らない人もおり、受け取れる年金額が非常に少なくなるケースもある。

 そこで、公的年金、個人年金、貯蓄などすべてをあわせた収入が一定額以下の人に対しては昨年十月から、生活を保障するために、基礎年金とは別に、税金から「年金クレジット」と呼ばれる年金手当を支給することにした。

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 東洋大学経済学部助教授、駒村康平氏は「日本では、スウェーデンのように、会社員も自営業者も、所得によって年金の給付額が決まる所得比例にして、年金額が少ない人には保証年金で補うという方法を支持する。今後、基礎年金は給付率が下がるので最低保障の価値がなくなる。強制加入の所得比例を補う保証年金に組み替えるべきだ」とし、新制度導入の必要性を強調する。

 問題が浮上した数年後にそのほころびを直していくという、“つぎはぎの改革”では、将来にわたって国民の老後を保障できるかおぼつかない。年金問題が国民的な議論になった今こそ、根本的な改革を検討するチャンスだ。(武部由香里)
by sakura4987 | 2006-06-12 16:41

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