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◆危険極まる義務教育費の地方移管


平成16年11月22日(月) 産経新聞

東京大学名誉教授 小堀桂一郎  教訓としたいイギリスでの事例

≪改善が改悪となることも≫

 平成十年六月、残念ながら本欄ではないが、「神社新報」(二四六四号)の論説欄に筆者は「教育権の所在」といふ論を掲げてゐる。一文の主旨は、国家主権の一部としての国民の教育権は国家がこれを堅持すべきだ、との主張である。行政の地方分権化といふ大勢はもう決つてゐて、今更舵の切替は不可能であらうが、その中で義務教育といふ制度についてのみは国家が管掌の最終責任を手放してはならない、との所見を〈既に手遅れかもしれないが〉と憂へつつ力説したものだ。

 それから六年が経過してゐる。以後の事態の進展が迅速だつたか緩慢だつたかは今は問はない。とにかく本年の八月と十一月の経済財政諮問会議に於いて義務教育費国庫負担制度の「改革」が火急の議題となつてゐる。この「改革」といふ決り文句が曲者なのだ。総理は何しろ三位一体改革とやらに政治生命を賭けてゐる人であるが、どうやらこの人には財政改革しか見えてゐない。総理の主導下に総論としての改革を推進する流れが強く出てくれば、文科省や一部議員の抵抗にも拘らず、義務教育財源の地方への大幅移譲が実現する恐れはある。

 この勢を促進する要因は幾つかある。一には、「改革」は必ず「改善」であつて即ち善である、との一般的思ひ込みで、これは近代社会のどの局面にも生ずる迷信の如きものなのだが、この迷信の持つ力が案外恐しい。四十年余り大学社会で過して幾多の「改革」を目撃してきた筆者は、目指した「改善」が結果として「改悪」であつたといふ事例を少からず経験してゐる。これは改革といふ事態の流動性(推進する側は決つてこれを「弾力化」「活性化」などの美称で呼ぶのだが)に乗じて、必ずそこに集団的エゴイズムに発する自己の勢力拡張を目論む党派が暗躍するからである。「ゆとり教育」といふ美名にかくれて教育破壊を企む勢力が謀略を逞(たくま)しくしたのはつい先年のことである。

≪地方分権化で偏向が進む≫

 又一には、政治家や官僚の中に往々見かける例だが、改善だらうと改悪だらうとその意義はどうでもよく、ただ然々(しかじか)の制度改革は自分の為した仕事である、との功績を誇りたがる、業績の点数稼ぎの心理がそこに働くことである。

 又一には、これは大衆に阿(おもね)る大手のジャーナリズムによく見られる現象だが、予測効果をどう評価するかの判断力抔(など)ないにも拘らず、これが時代の大勢だ、時流といふものだ、とて流れに棹差して上潮(あげしほ)に乗らうとする心理である。

 地方分権が時代の趨勢であるとて、国民の義務教育の責任までその流れに取り入れて改革促進を唱へる人々に対しては、但し次の如き事実も認識する様に要望しておく。

 十月上旬に数人の国会議員氏がイギリスに於けるここ数年来の教育改革の効果を視察に出かけ、短時日の間になかなか周到な調査を果し、報告書を提出してゐる。その内容を要約していふと、イギリスでは初等中等教育の地方分権化により、一九八〇年代にはまるで我が日本の話かと聞き紛(まが)ふ様な「偏向教育」の弊害が生じてゐた。そこでサッチャー政権以降、教育財政の負担率を段階的に地方から国へ移し、「金を出せば口も出す」の通則に従つて国の教育監督権限を強化した。具体的には「教育水準局」なる国家機関が「学校監査」について廃校措置もあり得る強力な権限を行使できることになつた。歴史教育には国定カリキュラムの導入すらも実行した。これによつて初等中等教育の水準は著しく向上した。

≪基本法の改正とも不可分≫

 この成功に自信を得た現ブレア政権は二〇〇六年度を期して義務教育予算の全額を国庫負担にすると策定した由である。謂はば教育権を全面的に国家に回収することとした。この様な「趨勢」も世界には存するのである。

 筆者は今闇雲にイギリスの経験に見倣(なら)へと聲を揚げてゐるのではない。冒頭に記した如く、義務教育の責任は全的に国が負担すべきものと考へての意見である。現在、教育基本法の改正が国政に占める教育問題中の最大の課題となつてゐるが、改正の二つの眼目と見做されてゐる愛国心の育成と宗教的情操の涵養といつた目標にしても、教育が地方分権の原則の下に運営された場合、夫々の地方の個性が掲げる教育原理よりも下位の次元に貶(おとし)められ、結果として有名無実になつてしまふ恐れが多分にある。更に恐しいのはそこに破壊主義勢力が潜入してくる危険である。教育基本法の改正と義務教育費国庫負担分の(限りなく十割に近い)拡充とを切離して考へることはできない。




※地方分権については、下記に書いた。教育にしろ、他の事にしろ、なぜ我が国はいつも他国の一周遅れの事をするのだろうか。なぜ他国に学ぼうとしないのだろうか。つまらない男女平等の事は、社会主義者の言う事を頭を垂れて拝聴するくせに、本当に良い事になると躊躇し、知らなかったふりをする。結局は官僚にも政治家にもマスコミにも社会主義を信奉する連中が多いという事だろうし、これを粉砕するだけの教養も知識も持っていないからだろう。しかもやった事には全く責任を取らない。本当に始末に終えない愚か者が多くなった。 

 「経験をしてみなければわからない者を愚か者という」と言うそうだし、ギリシャには「愚か者は、事が起きて初めて悟る」という言葉もある。フランスには「愚か者には、必ずその上をいく愚かな賛美者が見つかる」という諺もあるが、この賛美者というのがマスコミだという事は皆さんもお気付きだろう。もう一つあった。中国の諺に「馬鹿者は、馬鹿なまねをした時ほど自画自賛する」という言葉もあった。
by sakura4987 | 2006-06-20 17:11

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