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◆重要な子供の居場所


評論家、秀明大学教授・マークス寿子 

 ロンドンを車で走っていると、あちこちの公園で子供たちがサッカーをやっているのが目に映る。これらの公園は、いわゆる日本的な意味の公園ではない。英語で「フィールド」と呼ぶ広い野原のような芝生の公園があって、それは子供や大人がのびのびとスポーツをする場所である。樹々に囲まれた広々とした芝生-ただそれだけの場所である。しかし、都会の子供たちが思いきり体を動かす場所としては最適である。

 東京にこのような場所をみかけることはほとんどない。こぢんまりと、こぎれいな公園や、道具をそろえた子供の遊び場はみかけるが。

 東京は三カ月ごとに様相を変え、次々と高層ビルが建って、人間はその谷間に影のように追いやられている。東京の出生率が「1」以下というのは当然で、子供を産みたがらない女性や、若いカップルを非難できない。子供を育てる環境が今ほど悪いことがかつてあったろうか。

 物理的な環境とともに、家族という、子供たちの「生きる場」も空洞化している。何も“崩壊家庭”の話ではない。祖父母、父母と三代が共同で暮らしている家庭ですら、子供にとって安息の場ではなくなっているようだ。

 長崎・佐世保の小六同級生殺害事件で私がショックを受けたのは、加害女児がネットに書き入れたという言葉、「ヒッマだぁぁぁ…暇暇暇…」。両親、祖母のいる家庭で女児がコンピューターに「ああ退屈」と書く。寒々とした光景ではないか。親も祖母も働いていたというのだから、小六の女児に夕飯の支度を責任もってやらせてもよかったのではないか。家族の一員として、子供にも仕事を分担させることがどんなに大切か、最近の日本では誰も言わない。

 家族が家族であるためには、各メンバーに家族の一員としての自覚が必要であり、子供の場合には、自分がみんなの役に立ち、それを誉めてもらうことで自覚が生まれてくる。テストの点数が上がったことを誉められるより、はるかに大切なことである。

 今、大人は子供を自分たちの欲望の道具としか考えていないようにみえる。ブランド品を買い与えて親が自己満足したり、いい学校へ行かせるために塾通いをさせたり、親の不満やイライラを子供を虐待することで晴らそうとしたり。つい最近では、嫁を困らすために実の孫の首をしめた祖母まで出現した。

 自分が怠けていたいために子供の個性を尊重します、好きなことをやらせますという親も多い。あるいは、子供と一緒に考え、話し合い、行動することが必要なのに、「忙しい」を口実に子供と正面から向き合わない親も多い。かつては父親がそうだったのが、今では母親も同じである。

 育児と仕事の両立が形の上ではなされているようにみえても、母親の心は常に仕事に向いていて、子供には「今忙しいから、ちょっと待って」と言っていないだろうか。子供たちは親の注意を求めて必死のようにみえる。出生率ばかりが論じられているが、もっと重要なのは生まれた後の子供の幸福をどう実現するかではないだろうか。

平成16年8月1日(日)産経新聞
by sakura4987 | 2006-06-21 11:57

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