◆「おかげさま」の心
平成16年8月29日(日)産経新聞
◆【学習院長・田島義博の子育て改革】
胸に響くメダリストの言葉
アテネ五輪は今日、最終日を迎えましたが、この大会期間中、私が強く印象づけられたことがあります。それはメダルを獲得した日本選手が異口同音に「おかげさま」という気持ちを全身で表現していたことです。
「たくさんの方の応援と、その応援を力に変えることができたことが勝因になりました」と谷亮子選手。同じ女子柔道の谷本歩実選手はストレートに「最高にうれしい。周りの人がサポートしてくれたおかげです」
私たち日本人はもともとすべてのものへの「感謝」を生き方の基本にしてきたように思います。キリスト教でいう「愛」や仏教の「慈悲」にも通じるものですが、日本人はこれを日常的には「おかげさま」という言葉で表現してきました。
その「おかげさま」の心が近ごろの若者のなかで薄れてきているのではないだろうか。そんな気がしていただけに、メダリストたちの「おかげさま」が余計に印象に残ったのです。
私は学習院の教育の基礎理念を、アタマとココロ、ハラ(キモ)、それらを容れるカラダの四つのチカラのバランスがとれた「強靱(きようじん)な人間力」を備えた若者の育成におきたいと考えています。
その背景には、戦後日本の教育がアタマに偏して、カラダとアタマは別ものと考え、ココロやハラの教育をなおざりにしてきたのではないかという思いがあります。
五輪のメダル獲得は体力だけでなく、知力、気力に優れ、かつ厳しい指導や周囲の期待に応えられる強くて大きな心がなくてはかなうことではないでしょう。そして「おかげさま」の気持ち。
私たちも「おかげさま」を忘れてはいないか。胸に手を当てて振り返ってみたいものです。

