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◆危険水域に入った貯蓄率の低下


◆【正論】聖学院大学教授・真野輝彦 

急がれる公的部門での支出圧縮

 ≪拡大派の2つの事実誤認≫

 経済の二極化が進む状況下の参議院選で自民党が伸び悩んだことを契機に、政策予算拡大を求める声が出る一方、三%を超える成長が実現した今こそ債務縮小に努めるべきだ-との主張があり、ぶつかり合っている。

 拡大派は、日本には一千四百兆円の貯蓄があるのだから、更なる財政支出が可能と主張する。しかし、この主張には二つの事実誤認がある。

 第一は、この貯蓄は民間が保有しているものであり、公的部門が勝手に使えるわけではないということである。民間貯蓄を使うためには、実質的な増税(社会保険料等の引き上げも含め)が必要だが、拡大派はこの部分には触れようとしない。

 となると国債発行が頼りだが、累積残高が七百兆円に達し、先進主要国の中で最悪の状況であり、郵貯改革による国債購入資金の流れの変化を考えると限界に近い。

 第二は、国債の最終購入原資である貯蓄率の急落に対する認識が不足していることである。そこで貯蓄率低下の現状とその原因をここで整理しておきたい。

 貯蓄の主体は、家計、企業、公的部門の三つに大別される。公的部門は借金で首が回らないことは既に述べた。企業部門は現状で貯蓄余剰だが、設備投資の回復とともにいずれ貯蓄不足となろう。そこで頼りは家計部門なのだが、その貯蓄率が急低下しているのである。

 各家庭は、病気・事故などの緊急事態、子供の教育など将来設計を描きつつ貯蓄をしている。年金制度は老後の生活を支えるシステムだが、年金支給減額や支給年齢の引き上げが報道されると、不安心理から、一般に貯蓄率は上昇すると思われがちである。

 しかし、貯蓄率はこの十年で九一年の15・1%から最近の6・4%へと半分以下まで急速に低下している。米国の貯蓄率は約4%で、それよりは高いが、仏の12・2%、独の10・4%と比較すると、かなり低い水準である。

 ≪深刻度増すシルバー世代≫

 貯蓄率低下の原因は、所得の低下と少子高齢化の二つの問題に大別される。

 まず所得の低下から考えると、たしかに九九年に三百十四兆円であった名目可処分所得は、二〇〇二年には二百九十七兆円に減少している。

 ケインズは、貯蓄は金利に連動するとの古典派理論を否定し、所得の従属変数を主張した。景気低迷、失業増加、所得減少とともに貯蓄率は低下している。

 家計の名目消費支出がほぼ横ばいに推移しているのは、その裏で貯蓄が取り崩されているためである。

 次に少子高齢化の影響である。六十歳以下の勤労者年代別の貯蓄率には大きな変化は見られない。よく若者はカードを使って消費をし、貯金をしなくなったといわれるが、必ずしもそうではない。

 ところが無職世帯を含む六十歳以上の貯蓄率はマイナス、すなわち貯金を取り崩している。しかも、取り崩し率は20%近くに達しているのである。最近、生前贈与の税制が変わったことも一因と考えられる。毎年、数が増えるシルバー世代の貯蓄取り崩しが、全体の貯蓄率を大きく引き下げているといえよう。

 ここで注意を喚起したいことは、たとえ名目消費支出が横ばいでも、今までは物価がマイナスであったため実質消費でみれば消費はむしろ増加していたということである。景気回復や原油価格の上昇で、物価上昇に転じる可能性がある。グリーンスパン米連邦準備制度理事会議長が金利の引き上げに踏み切り、G8でも原油価格問題が論議された背景がこれである。

 ≪円安進行は取り崩し加速≫

 日本政府は為替介入で円安に誘導した。しかし円安は原油などの輸入価格上昇を加速させる。物価が上昇すれば、それに見合う所得が上昇しない限り、より多くの貯蓄取り崩しを招く。特に景気がよくなっても所得増加が期待できない老齢世代には深刻な影響を与えることになる。

 もちろん、貯蓄の取り崩しが悪いと言うのでない。そのための貯蓄であり、その結果消費が増加し、成長率が高まることも期待できる。しかし公的部門の巨大な借金を考えると喜んではいられない。

 幸い、今はまだ貯蓄の増加額が減少する段階だが、このような貯蓄の取り崩しが続けば、今後は絶対額での減少も考えられ、公的部門の赤字を埋めることができなくなる可能性もある。

 貯蓄率の低下は、その緊急性をわれわれに警告しているのであり、無駄や能率の悪い公的部門の支出圧縮が急がれるゆえんでもあるのだ。(まの てるひこ)

平成 16年 8月 2日[月] 産経新聞
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by sakura4987 | 2006-06-23 12:16

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