◆核爆弾4~13個分 北、プルトニウムを抽出 米研究所報告 (産経 06/6/28)
米シンクタンク「科学・国際安全保障研究所」(ISIS)は26日、北朝鮮がこれまでに核爆弾4個から13個分のプルトニウムを抽出したとの報告書を発表した。
報告書によると、北朝鮮は、2008年半ばまでに8~17個の核爆弾を製造するのに十分なプルトニウムの抽出を終える可能性があるという。
報告書は、北朝鮮北西部の寧辺に建設されている5万キロワット原子炉について、最近数カ月間で目立った建設作業はみられないものの、この施設が完成すると、プルトニウム生産能力は現在の10倍になると指摘。
数年のうちに北朝鮮が余剰分を輸出にまわすことも可能になると警告している。
一方、報告書では核爆弾をミサイルに搭載する技術について、中距離弾道ミサイル「ノドン」に搭載する初歩的な技術は取得したようだと分析。
ただ、長距離弾道ミサイル「テポドン2号」に関しては、核爆弾の軽量化技術を北朝鮮が保有していることを示す証拠はほとんどないとしている。
国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は昨年5月、北朝鮮が5個から6個の核爆弾を保有している可能性があるとの見方を示していた。
同研究所は元IAEA査察官のデビッド・オルブライト氏が主宰。報告書は、寧辺にある原子炉の衛星写真や北朝鮮当局者の発言などをもとにまとめられた。
◆中韓こそ北発射準備に焦り (産経 06/6/28)
北朝鮮の長距離弾道ミサイル「テポドン2」の発射準備は「ペイ・アテンション(こちらにご注目を)戦術」だろう。アテンションには、配慮してくれという意味もあるから実は哀願に近い。ただし、金正日流のそれは白刃の上を渡る危険きわまりないものだ。
米国が北朝鮮よりもイラン対策に「配慮」していることに嫉妬(しっと)し、米朝交渉に持ち込んで金融制裁の解除を狙う。偽札づくりが発覚して米国から北朝鮮口座を凍結され、とたんに財源が干上がったからだ。
それならわびればよさそうなものだが、居丈高な口ぶりを弄(ろう)するばかりだった。口先による威嚇もダメとみたか、今度は危機をつくり出して、無理に米国を振り向かせようとする。
だが、北朝鮮はことあるごとに国際社会をだましてきたから、米国は「6カ国協議に戻れ」としか言わない。それどころか、ミサイルが米国本土や日本に着弾する前にたたく先制攻撃論まで飛び出して、逆効果を生んでいるのが実情だ。
ブッシュ米政権も真っ青な先制攻撃論は、元来が穏健な民主党系の論客から飛び出した。ペリー元国防長官とカーター元国防次官補が、北朝鮮のミサイル発射基地をピンポイントで先制攻撃するようブッシュ政権に求めているのだ。
「北朝鮮がテポドンを発射する前にそれを爆撃、破壊するつもりであることを明確にすべきだ」「テポドン発射が成功すれば、北朝鮮はますますつけあがる。その結果は、さらに多くのミサイルに搭載された多くの核弾頭がつくられる」(22日付ワシントン・ポスト紙)
ペリー氏らによると、実際にクリントン前政権は1994年に寧辺の核施設を精密誘導兵器で攻撃する計画を立てたという。仮に北朝鮮が南下して米韓両軍に犠牲者が出ようとも北朝鮮の核計画の方が深刻だとし、「阻止のためには戦争も覚悟した」と述べる。
北朝鮮はこれまでも、軍事危機をつくりだしては米国世論を分断し、譲歩を引き出してきた。だが、ペリー氏にまで「先制攻撃」論を展開されては、とても譲歩を獲得できる情勢にない。
ペリー論文を引き金に、朝鮮半島和平担当大使を務めたプリチャード氏らが「ノー、暴発すべきでない」(23日付同紙)などとこれを批判し、米国内の論争は激しさを増してきた。
日本の外務省内には、ブッシュ政権からの働きかけにペリー氏らが応じたとの見方がある。北朝鮮が米民主党に望みを託しても、穏健派のペリー氏らが政権以上に強硬な立場を表明し、北朝鮮に妥協は難しいと判断させる。米国の世論を分断できなければ、さすがの北朝鮮も揺さぶりようがない。
米世論の大勢は、領海や領土に飛来してくるミサイルを陸海空から「層状」で複数回迎撃するとの抑止戦術を支持する。北朝鮮の第一撃に対してミサイル防衛でこれを撃墜し、場合によっては米軍が北朝鮮のミサイル基地をたたくとの考えだ。
こうして北朝鮮にとっての発射実験は、実入りよりもリスクの方が大きくなってきた。発射実験は米軍による完膚なき反撃のリスクがあり、かつ日本の防衛態勢の強化を誘ってしまう。
実はそれを最も嫌っているのは、中国とそれに追随する韓国である。小泉純一郎首相が訪米した27日、中韓両国の外相が北京で、「テポドン実験回避で合意」を表明したのもその焦りを象徴している。軍事攻撃で北朝鮮に影響力が出てしまう米国と、強い日本の出現は困るからである。
実験の回避はまともな国家のまともな選択である。しかし、無法国家に合理的な判断ができるかが分からない以上、日本は最悪の事態を想定した備えが必要である。

