◆性体験の低年齢化 10代・大人はどう見る (06/7/10)朝日
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200607100091.html
≪(写真)-若い世代を対象にしたカラフルな避妊具も店頭に並んでいる=東京・原宿で≫
性行為を経験する年齢が早まり、10代の妊娠中絶や性感染症も少なくない。10代の意識と、大人の見方は。
◇多い「自分は妊娠しない」
1歳半の息子を抱きながら、横浜市内の少女(18)は「好きだったから」と、元同級生との性体験を話す。
16歳で妊娠、17歳で出産。普段つけていたコンドームはその時手元になかった。彼は「おろして」と言ったが、産んだ。2人とも高校を中退。自分の両親と息子の4人で住み、夜ピザ屋で働く。
彼も土木作業をし、将来一緒に住む資金をためている。「『1年コンドーム使っていないけど、妊娠しないよ』と言っていた友達も、結局妊娠した。『自分は妊娠しない』と思い込み、エイズも関係ないと思う子が多い」
自分の出産後、同じ年の友達3人も子どもを産んだ。その一人が書く子育て日記を毎日インターネットで読む。「同世代のママが何しているか気になる。不安だからかな」
「うちの子に限って、と思った」と母(52)は打ち明ける。孫の世話のため、週5日働いていたのを2日にした。「早すぎる妊娠は、親も含め、周りに大きな影響を与える」と話す。
横浜市内のある産婦人科医院。10代で中絶に来る子には、相手とその親計4人が朝7時に集まるよう求める。院長は「親の前で説教する。言わないと繰り返すから」と語る。10年ほど前に比べると、13~16歳の中絶、出産は多くなったという。
「東京都幼・小・中・高・心障性教育研究会」の調査では、高校3年生の性経験率は、男子は84年に22%だったのが02年に37.3%、女子は12.2%から45.6%となった。
10代の中絶数は全国平均で、92年に1000人あたり6.8件で、01年には13件と倍増。03年は11.9件とほぼ横ばいになっている。
◇「毎回」、女子は3割
厚生労働省が04年末、全国3000人の男女に実施した調査では、過去1年に性交渉をして毎回避妊したのは、16~19歳男子で54.5%、女子は31.3%にとどまった。
東京都港区の産婦人科「赤枝六本木診療所」には、中絶や性病を何度も繰り返す少女も来る。「彼がコンドームを着けてくれない」という。夏休みや冬休みの後に増える。
赤枝恒雄医師(62)は、7年前からカフェなどで若者に街角相談をし、コンドームの着け方教室も開く。「最初の段階で教えないと、とんでもないことになる」
日本家族計画協会クリニック(北村邦夫所長)は、病院に行かずに妊娠や性感染症などに悩む女子生徒向けにリーフレットを作った。悩みを抱えないためにも産婦人科などの病院に行くことは必要と考え、女子生徒の声を参考に「親に知られないか」「お金は」などわかりやすく案内している。ゲームセンターや、プリクラの中などに置く予定という。
◇「読み解き方教えるべき」
「子どもたちは、ある意味で社会の被害者。自分の身を守ることができるように、性情報を含めた情報の読み解き方も教えるべきだ」。京都大学の木原雅子助教授(52)=社会疫学=は、そう話す。
これまで、20万人以上の中高生らに性行動調査をしてきた。「性行為を前提にするのでなく、丁寧な人間関係を築くことの大切さを伝えることが必要」という。
10代の若者は、漫画やビデオ、ネットなど、あふれる性情報にさらされ、性交渉をせかされていると、感じている。
木原さんらが実施した04年の全国公立高校生1万人調査によると、高校生のうち性交渉に肯定的な生徒は全体の7~8割だった。高1男子以外は、性経験者のうち相手の人数が「4人以上」と答えたのは、約2割もあった。
望まない10代の妊娠・中絶や性感染症の流行を防ぐため、木原さんは5年前から中学高校でエイズ予防プロジェクトを始めた。生徒自らが感染する可能性があることや人間関係をゆっくり結ぶ大切さなどを教えている。
プロジェクト参加校は、授業前に、学校ごとに生徒たちの知識・性意識・行動がどんな状況か調査したうえで、生徒に合わせた授業をする。毎年約100校が参加し、これまで約5万人の生徒を対象に授業をしてきた。その結果、性感染症についての知識や自分にも感染リスクがあるという意識が増え、高校生での性関係を容認する割合は減ったという。